治療費打ち切り労災不支給あるも後遺障害14級認定裁判和解で解決

交通事故後の治療には困難が伴うこともあります

交通事故でケガをした被害者の過失がゼロであったとしても、相手方保険会社が早期に治療費を打ち切ってくるケースがあります。

そうすると、以降の治療費がどうなるのだろうかと被害者が心配になり、本来通院を継続するべきケースでも通院をストップしてしまうということも少なくないと思われます。

このように、交通事故後の治療には困難が伴うこともあります。次の手を打ってもうまくいかないこともあります。

しかし、そのようなケースでも、被害者にとって、このケースにおいて妥当な解決は何か、医学的に通院を継続する必要があるのかどうかなどを見誤らないことが大切になってきます。

そして、被害者もあきらめずにさらなるがんばりが求められるケースもあります。

以下はそのような事例を紹介します。

    • 交通事故状況

    • 被害者(40代女性 有職の家事従事者)は、通勤で自転車に乗って青信号で横断歩道を通行していたところ、交差道路から赤信号で進入してきたバイクに衝突され、自転車もろとも転倒し、病院へ救急搬送されるという交通事故にあいました。
    •  ※ 本件では、被害者の過失はゼロになります
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  • 受傷状況

    幸い、被害者には頭部外傷や骨折、脱臼などはありませんでしたが、ひじ、くび、腰などを打撲し、痛めました。

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  • 当法律事務所弁護士がご依頼を受けるまでの経過

    その後、被害者は、相手方任意保険会社から治療費の支払をすることで通院を継続していましたが、物損(自転車の損害)の金額などで相手方任意保険会社との見解に大きな開きがあり、つまらず、その後、相手方は、弁護士対応になりました。

    物損問題が解決しないまま、交通事故から4ヶ月で治療費の打ち切りを通告されました。

    被害者は、自分の過失がゼロであるにもかかわらず、自転車の損害すら解決せず、おまけにまだ医師から通院継続の必要があることを言われていたのに早期に治療費が打ち切られたことで、とてもショックを受けた状態で、当法律事務所の無料相談にお越しになりました。

    さらに、ついていると思っていた弁護士費用特約もついていなかったという状況が追い打ちをかけました。しかし、このままの状態が続くのはおかしいという気持ちはゆるがず、被害者は当法律事務所の無料相談におこしになりました。

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  •  当法律事務所弁護士受任後

    ご依頼をお受けした弁護士は、まず、治療の必要性がまだあり、打ち切りは早いと相手方に話しましたが、相手方は考えを変えませんでした。

    ご相談時、被害者にはくび、腰、ひじの痛みや手のしびれがありましたが、MRI検査を全く受けていなかったので、弁護士は被害者に対し、主治医の先生にすぐに相談するようお伝えしました。治療の打ち切り最終日は迫っていたのですが、頚椎と腰椎のMRI検査についてはそれまでに実施されることになりました。通院先の病院にはMRI機器がなく、紹介状により外部のクリニックで実施されました。

    被害者はまだ症状があるので病院への通院を継続されることになりました。
    本件は、通勤中の事故でしたので、打ち切り以降の治療費については、労災へ請求することになりました。しかし、労災は打ち切り後の治療費は支給しない決定をしました。
       

    • ● 相手方任意保険会社が治療費の支払いをした後に、労災への治療費(療養費)を請求しても、労災は治療費(療養費)の不支給決定をする可能性がありますので、ご注意ください。

      本件では、労災の審査請求(治療費の不支給決定に対する不服申し立てのことです。)をしましたが、不支給決定の変更はありませんでした。

      それでも、さらに再審査請求(さらなる不服申し立てのことです。)までしました。結局は、後述のとおり裁判で和解が成立したので、再審査請求は取り下げることになりました。

      • 自賠責保険に対する請求(被害者請求)

        任意保険会社からも治療費を打ち切られ、労災からも治療費の支給を受けられないことになり、なおかつ、通院先からは治療費の請求をされ、被害者はさらに大きな被害を受けたに等しい状態になりました。

        被害者は、打ち切り後の治療を自由診療で支払い、ひじのMRI検査まで治療費を支払うことになりました。

        結局、被害者は通院を続けてもくび、腰、ひじの痛みや手のしびれといった症状が残ったため、後遺障害診断をすることになりました。後遺障害診断の際、弁護士が同行をお願いしたのですが、通院先の病院から承諾をいただけませんでした。
        ただし、後遺障害診断書には、必要最小限の記載はありました。

        そして、後遺障害、治療費、傷害慰謝料に関しては、自賠責保険に対し請求することにしました。
        捻挫、打撲の受傷とはいえ、バイクに衝突され、自転車もろとも被害者が転倒したという事故状況ですので、自賠責保険では認められるべきだという思いで弁護士が代理して自賠責保険に請求しました。

        自賠責保険の認定結果は以下のとおりです。

        ・傷害部分は120万円の限度額いっぱいまで支払が認められました 
        ・後遺障害については、くび、こし、ひじの部位に関し、それぞれ14級9号が認定されました(いたみやしびれが残った後遺障害として認められました。) 

      • ※3部位に後遺障害14級が認定されても、トータルの等級は併合14級になります。
      • ・傷害部分は相手方から56万円の既払いがありましたので、120万円から56万円を引いた63万円(金額は千円以下省略しておりますので1万円の誤差がでます。以下の金額も千円以下省略しております。)の支払を受けることができました。
      • ・後遺障害については14級が認定されたことで75万円の支払を受けることができました。

        被害者は今まで何重もの苦しみを受けましたが、この自賠責の認定結果により、やっと一安心できました。

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    • 示談交渉→裁判へ

      その後、被害者側からは、相手方に対し、追加請求を求めて示談交渉を開始しました。
      しかし、症状固定日がいつになるのかについて、双方の主張に食い違いがでました。

      治療費、交通費、休業損害、傷害慰謝料といった損害費目が賠償の対象となるのは、原則として症状固定日までです。ですので、症状固定日がいつになるかによって賠償金額が変わってきます。
      また症状固定日はいついなるのかについて、当事者で合意ができなければ最終的には裁判所(交通事故紛争処理センターでの解決もあり得ますが)が症状固定日を判断することになります。

      本件では、この症状固定日に関する主張の食い違いの差が大きかったので、被害者のご意向をお聞きし、裁判(訴訟)に進むことになりました。

      物損については、裁判に至らず、7万円の支払いを受ける旨の合意ができました。

      その後、裁判に進み、裁判所からそれまで支払済みの金額を除き、被害者が、260万円 の支払を受ける和解案が出て、この金額で合意ができ、和解で終了しました。 

    • 症状固定日について、裁判所は、事故の衝撃の大きさ等を考慮して、当方の主張どおりの案を出しました。 
      後遺障害逸失利益は家事労働分につき81万円
    • (377万8200円を年収とし、これを5年間5%失ったという金額です)
    • 後遺障害慰謝料は110万円  
      という提案でした。

    • 自賠責保険から支払を受けた138万円をあわせると、弁護士がご依頼をお受けした後 398万円 の支払いを受けたことになります。
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    • 本件は、困難がいくつもあり、本当にくじけそうになる場面がいくつもありましたが、被害者側はあきらめずに最後までがんばって上記解決に至りました。                                                     
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