骨盤骨折 股関節の可動域制限 後遺障害12級7号認定ケース

被害者、交通事故状況

被害者は30代男性会社員の方でした。
幹線道路の交差点をバイクに乗り直進していたところ、対向から右折していきた四輪車に衝突されました。
被害者はバイクもろとも転倒し、病院に救急搬送されました。

 

受傷・入通院治療の経過

被害者は、肋骨の多発骨折、骨盤骨折(こつばんこっせつ)などを受傷しました。

 

外傷性気胸、肺挫傷の受傷もありました。

※肋骨の骨折、外傷性気胸、肺挫傷などの受傷では、呼吸困難のような呼吸障害にも気をつけないといけません。
ただ、本件の被害者は呼吸障害はありませんでした。

 

幸い、手術は実施されませんでしたが、被害者は40日間入院することになりました。

退院後もその病院でリハビリをすることになり、事故発生から5か月弱でリハビリは終了になりました。
リハビリが終了してすぐに被害者は職場復帰されました。

その後、事故発生日からちょうど6か月目の診察で終了と言われました。

 

当法律事務所の無料相談

最終の診察後、被害者は、治療としては終了したものの、この後どうしたらいいかわかりませんでした。

このまま時が過ぎていきましたが、被害者がお知り合いの方と会うことになり、そのお知り合いの方も交通事故で受傷し、当法律事務所にご依頼を頂いたことがあり、当法律事務所のことをご紹介いただき、当法律事務所の無料相談にお越しになりました。

 

弁護士金田が被害者からお話をお聞きしました。

事故状況からお聞きし、右股関節の痛みなどの症状がずっと続いていること、股関節の運動が十分でなさそうであることがわかりました。

入通院状況もお聞きしました。

半年間の治療が終了しても症状が残っておられることから、弁護士金田からは、今後、後遺障害等級の申請をしてから相手任意保険会社と示談交渉に入ることになるという流れをご説明しました。

 

被害者の方は、このとき、後遺障害等級のことを初めてお知りになりました。示談交渉のこともあまりよくおわかりではありませんでした。

弁護士費用特約のない事案でしたが、当法律事務所がご依頼をお受けすることになりました。

 

当法律事務所受任後 ~ 後遺障害等級認定申請へ

まずは、後遺障害等級の申請の準備をしていかなければなりません。
入通院先の病院の主治医の先生に後遺障害診断書をご作成いただく必要があります。

 

主治医の先生には弁護士の同行についてご了解をいただけました(これは平成29年のことです。)。
あらかじめお聞きしたいことをまとめて被害者の方と同行することにしました。
こうすると、余計な時間がかからず、スムーズに行くことが多いです。

 

●本件被害者のポイント~弁護士金田が考えたこと

肋骨の多発骨折もあったのですが、胸部や呼吸の状態については問題ないとのことでしたし、骨盤骨折以外の受傷は捻挫や打撲でした。
被害者がおっしゃる自覚症状や股関節の運動状態もふまえると、本件のポイントは、 骨盤骨折 であると考えました。

 

骨盤とは、腸骨(ちょうこつ)、恥骨(ちこつ)、座骨(ざこつ)、仙骨(せんこつ)から成り立っています。
腸骨、恥骨、座骨をあわせて寛骨(かんこつ)と言います。
股関節部分の大腿骨の骨頭をソケットのようにはめている部分を寛骨臼(かんこつきゅう)と言います。

骨盤骨折とひとことで言っても、どの部分がどの程度骨折しているのか、骨折後の状態がどうなっているのかによって、残存するおそれのある後遺障害の見通しの立て方が変わってきます。

 

この時点ではてもとに画像もなく(どのような画像がとられていたのかもわかりませんでした。)、骨折の細かい部位や状態など何もわかりませんでしたので、ここからお尋ねする必要がありました。

骨盤骨の変形は一応気になったのですが、外見上、明らかな変形はなさそうだったので、この点についてはあまり重視しませんでした。

骨盤骨折により、左右のずれが生じて一方の下肢長(あしの長さのことです)が短縮するおそれがあります。この点については測定をしていなければ測定のお願いをする必要があります(もちろん、骨の状態がどうなのかが重要ですが。)。

骨盤骨折の程度がひどいと、内臓(排尿障害、勃起障害、分娩障害など)に影響が及ぶおそれがあります。ただ、被害者は内臓に大きな影響はなさそうでした。

骨盤骨折後に股関節の可動域が制限されるおそれがあります。これについても、基本的には股関節付近の骨折であるかどうかが大きなポイントになってくると考えてはいます。

股関節の可動域については、最終で測定をされていないようでしたので、測定をお願いする必要がありました。

 

 

主治医の先生は後日に骨盤のCTを撮り、下肢長や股関節可動域の測定し、後遺障害診断書を作成するとのことでした。

後日、被害者から画像のCD-Rと、主治医の先生にご作成いただいた後遺障害診断書をお預かりしました。

骨盤の骨折の程度を見るにはレントゲンではなくCTが確認する必要があるケースも少なくありません。
弁護士金田が取り寄せた診断書・レセプトを確認すると、骨盤のCTは受傷直後しか撮影されていませんでした。
ですので、後遺障害診断時にCTを実施していただくことは意味があることです。

実際、弁護士金田がお預かりしたCD-Rを確認すると、受傷直後の骨盤のCTでは、右の寛骨臼が骨折していることがわかり、右股関節付近の骨折であることがわかりましたし、最後に撮っていただいたCTを見ると、左右の寛骨臼の形が一見して違うことがわかりました。ただ、これが後遺障害診断の際にどのように評価されるかはわかりません。

 

後遺障害診断書の記載内容

下肢長は、左右の長さは同じでした。

股関節の可動域の測定値は以下のとおりでした。以下の記載は他動値です。
     
屈曲 右100度 左125度
伸展 右 20度 左 25度
外転 右 25度 左 30度
内転 右  5度 左 10度
外旋 右 40度 左 35度
内旋 右 25度 左 30度

 

股関節可動域の測定値の見方(関節機能障害である後遺障害12級7号が認定されるための測定値上の条件)
患側(受傷した側)の屈曲と伸展の合計値又は外転と内転の合計値のうちどちらかが、健側(受傷していない側)の4分の3以下に制限されていれば、数字上の条件を満たすことになります。
ただ、もし、4分の3より超えていても、その超えている値が10度以内なら、外旋と内旋の合計値が4分の3以下に制限されていればやはり数字上の条件を満たすことになります。

本件では、左の屈曲と伸展の合計値(150度)の4分の3が112.5度になります。右の屈曲と伸展の合計値(120度)は左の値の4分の3よりは超えていますが超過が10度以内におさまっています。
しかし、外旋と内旋の合計値は右も左も65度と変わらないので、屈曲と伸展の関係では関節機能障害12級7号は認定されないことになります。

もっとも、右の外転と内転の合計値(30度)は、左の外転と内転の合計値(40度)の4分の3以下の値になっていますので、外転と内転の可動域制限で後遺障害12級7号の数値条件は満たすことになります。

あとは、このような可動域制限が生じるほど右股関節部分に器質的損傷があると認められるかどうかのハードルがあります。

 

 

当法律事務所は、資料を収集・整理して自賠責保険会社に後遺障害等級の申請をしました。

 

後遺障害等級認定結果 … 後遺障害12級7号が認定されました!

股関節の可動域制限により後遺障害12級7号が認定されました

骨盤骨折後の右股関節機能障害につき、提出の画像上、右腸骨骨折が認められ、後遺障害診断書の右股関節の可動域測定値が左の4分の3以下に制限されていることから股関節機能障害として後遺障害12級7号が認定されました。
右股関節痛については、関節機能障害と通常派生する関係にある障害ととらえられ、後遺障害12級に含めての評価となりました。

弁護士金田の個人的な意見ですが、最終で実施された骨盤のCT画像も、後遺障害12級の認定に役立ったと思っています。

 

交通事故紛争処理センターで最終解決しました

後遺障害12級が認定された後、相手任意保険会社と示談交渉を行いましたが、まとまりませんでした。
被害者とご相談をした結果、交通事故紛争処理センターに申し立てをすることになりました。

 

交通事故紛争処理センターでは、最初にあっせん手続というものがあり、センター担当の弁護士からあっせん案が示されるのですが、このあっせん手続でもまとまりませんでした。
そこで、次のステージ、つまり、審査のステージに移ることになりました。

審査のステージでは、最後にセンターから最終の金額を出す裁定告知期日というものがあります。ここで出された金額については、被害者側は応じるか、拒否して一から裁判を申し立てるかの二択になり、被害者側が応じると、相手任意保険会社は応じることになります。

ここで 1082万円 (1万円未満省略いたします。)の数字が出て、こちらは応じ、損害賠償問題は終了しました。
内訳は以下のとおりです。

治療費             2120000円
入院付添看護費用         180000円
入院雑費              60000円
通院交通費             20000円
休業損害            1400000円
入通院慰謝料(傷害慰謝料)   1900000円
後遺障害逸失利益        7500000円
後遺障害慰謝料         2800000円

            合計 15980000円

本件の過失割合が被害者5%、相手方95% であり、示談交渉前の支払い済み金額が4370000円(相手任意保険会社からの支払額が2130000円、後遺障害12級が認定されたことにより自賠責保険会社からの支払額2240000円)ありました。ですので、以下の計算式になります。

15980000円×(1-0.05)―4370000円という計算で10811000円になりますが、上記損害費目の数字も1万円未満省略していますので(誤差が生じています)、実際には10820000円になります。

 

当法律事務所受任後、この10820000円と自賠責保険から2240000円を回収しました(合計13060000円を獲得したことになります。)。

 

本件はいわゆるバイクと四輪車の「右直事故」ですので、基本的は過失割合は、バイク15%、四輪車85%になります。しかし、本件では、被害者バイクの過失割合を減らすべき事情があり、被害者の過失を5%にとどめることができました。

 

もし、被害者が当法律事務所にご相談にお越しにならなければ、後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料の損害はゼロで進んでいた可能性が高かったケースです。
弁護士に相談をしていても、交通事故の後遺障害問題にくわしく、かつ、そつなく進められる弁護士に依頼していなければ、後遺障害12級の認定までたどりつかない可能性も十分にあったケースですし、1300万円あまりの賠償金を獲得できなかった可能性が高いといえるケースです。

 

弁護士金田は、交通事故の骨折に関し、たくさんの部位の骨折案件を数多く取り扱ってきています。交通事故で骨折を受傷された被害者の方は、まずは、当法律事務所の無料相談をご利用ください。