裁判で男性家事休業が97万円、右直事故で被害者の過失が5%と認定された事例

弁護士交代事案(前任弁護士解任後、当法律事務所弁護士が受任)

このケースは、交通事故直後から他事務所の弁護士が受任していたのですが、弁護士からの連絡が全くなく、(事務とは連絡がついたそうですが)弁護士と全く連絡がとれなくなりました。被害者はこの弁護士との契約を解消され、交通事故から3ヶ月弱後に当法律事務所の無料相談におこしになり、当法律事務所弁護士が受任した事案です。

●依頼をした弁護士の対応に心配がある…
弁護士に依頼をしたが電話をしても事務員対応どまりでなかなか弁護士につないでもらえない、弁護士が直接対応してくれることになっていても、弁護士から何の進行の報告もない、弁護士が動いてくれないということはないでしょうか。

他の法律事務所に依頼したが、上記のような状況だという問い合わせを当法律事務所は最近よくいただきます。

このような場合、当法律事務所では、セカンドオピニオンとしてご相談を受けております。

言うまでもありませんが、当法律事務所では、上記のようなことは絶対にありません。

事故状況

1000ccのバイクに乗った被害者(40代男性)が国道の交差点手前停止線付近で赤信号停車した後、しばらく経ち、青信号になりすぐ発進したところ、対向から来た四輪車が、対向車線の交差点停止線付近で赤信号停止した瞬間、信号が青になり、すぐ右折のため発信し、被害者のバイクに衝突しました。

夜の事故でしたが、もちろん、被害者バイクはヘッドライトを点灯していました(自動点灯です。)。

両停止線の間は結構距離がありました。

●ドライブレコーダーの重要性
あとで述べますが、この事件は被害者がバイクにドライブレコーダーをつけており、この映像が決めてとなって、裁判で被害者の過失割合が5%にとどまる判決が出されました。

盗難にあうおそれなどのため、バイクにドライブレコーダーをつけるケースはほとんどありません。
しかし、バイクの四輪者の交通事故では過失割合が争いとなるケースはとても多いです。
事故状況がドライブレコーダーに映像化されていれば、過失割合が解決できるケースが多いのも事実です。

被害者の受傷、通院

衝突で被害者はバイクもろとも転倒し、くびの捻挫のほか、腰椎の横突起(おうとっき)というところを4か所骨折しました。

当初、腰椎の1か所が圧迫骨折しているという診断をされていましたが、自賠責保険は後遺障害として認めませんでした。
また、腰椎の横突起の骨折も、腰の本体部分の骨折ではないことから、後遺障害等級が認定されにくい骨折です。

被害者は整形外科医院に通院し、リハビリを継続されました。

物損の交渉が決裂…

当法律事務所は、ご依頼をお受けし、まず、相手方任意保険会社と物損の話を
することにしましたが、相手方任意保険会社は、相手方85%、被害者15%の過失をゆずらず、交渉は決裂しました。

過失割合の主張が平行線ですと、交渉はすすみません。
弁護士金田は被害者と相談のうえ、けがの治療が終了した後、損害額や過失割合を裁判で主張していく方針になりました。

●過失割合
交通事故の過失割合は、別冊判例タイムズ38号という本があり、この本を参考にして解決をはかっていきます。
本件は、信号のある交差点で、直進するバイクと対向右折する四輪車とが、いずれも青信号発進して衝突した事故です。この場合、さきほど述べた本の【175】図を参考にして考えていきますが、この図の基本過失割合はバイク15%、四輪車85%になります。
ただし、必ず基本割合で決まるというわけではなく、割合を増減するべき事情があるかどうかを検討することになります。

後遺障害14級9号の認定

被害者の腰椎横突起骨折のゆ合が比較的遅れたこともあったのと、くびの痛みや右手のしびれがきつく、続きました。

初期に腰椎のCTやMRIは実施され、頚椎のMRIは事故から5ヶ月弱ほどで実施されました。
結局、9ヶ月余りの通院期間があり(通院された総日数は198日でした。)、症状固定となり、後遺障害診断となりました。

弁護士が代理して申請した等級認定結果は、くびの痛みや右腕・手のしびれにつき、後遺障害14級9号が認定されました。

これで、被害者が受けた全損害額の主張ができることになりましたので、京都地方裁判所に裁判を提起することになりました。

 裁判

裁判でおもに争いになった点は、過失割合、被害者が男性の家事従事者としての休業損害が認められるかどうかと認められるとしてその額、後遺障害逸失利益などでした。

結局、平成31年3月に以下のとおりの判決が下りました。
※ 以降で記載する金額は、1万円未満切捨省略いたします。

(裁判所が判決で認めた金額、過失割合)
●治療費        104万円
●通院交通費       14万円
●文書料          1万円
●男性家事休業損害    97万円
●後遺障害逸失利益    64万円
●傷害慰謝料      149万円
●後遺障害慰謝料    110万円
●被害者の物損関係費用 132万円
●過失割合       被害者5%:相手方95%

上記のうち、人的損害(けがの損害)については、その総額から被害者の過失分5%を引き、そこから相手方任意保険会社からすでに支払を受けていた治療費を引き、その残額と、その残額に対する事故からの年利5%の遅延損害金の合計額から、後遺障害14級が認定されたことで裁判前に自賠責保険から支払を受けた75万円を引いた額が判決で認定された金額になりました。
これが 355万円 になりました。

物損については、上記損害額から被害者の過失分5%を引いた金額が判決で認定された金額になりまた。
これが 125万円 になりました。

判決で認められた弁護士費用は 49万円 でした。

結局、人的損害と物損とあわせて 530万円 と遅延損害金の支払を認める判決がくだされました。

※ 1万円未満を切捨省略している関係で1万円単位に誤差が出てきます。この点ご了承ください。

●男性家事休業損害…97万円
お母さんと二人暮らしの被害者は、もともと、ある資格をお持ちだったのですが、事故当時、お母さんの自営を手伝っておられ、市民税等が課税されていない所得状態でした。

しかし、お母さんが朝から晩まで仕事が忙しく、二人で炊事など家事の分担をされていました。
被害者は事故により家事労働に支障を来したことから家事労働の休業損害を請求しました。

こちらからは、基本の家事労働日額(賃金センサスという厚生労働省統計に基づいて計算すると1万0211円になりました)については、家事を分担していたことから、半額である5105円を主張しました。
家事休業の程度については、事故後の6ヶ月弱を100%の喪失、その後の4ヶ月弱を80%の喪失を主張し、家事労働の休業損害として137万円の請求をしました。

これに対し、相手方は、二人が一緒に住んでいる実態がない、家事労働をしていないと主張し、全面的に争ってきました。

こちらからは、2人が同居していることに関する資料、もともと被害者は一人暮らしをされていて自炊をしていたことや被害者とお母さんの1日のスケジュールに関する証拠などを提出しました。

判決では、被害者の家事休業損害の発生を認め、
額については、事故日から140日目(骨折が骨癒合したと見られる日です)までについては上記のとおりの日額5105円を100%、その後は通院日(総日数103日)につき5105円の50%分を認めました(97万円)。

男性の家事労働の休業損害については、多くの保険会社は認めたがらない傾向があります。
しかし、男性が家人のために家事労働を行っている状況なのであれば、その実態を裏付ける主張や証拠を提出していくことで休業損害が認められたというのが本事例です。
弁護士金田は、別件でも、男性の家事労働損害を認める示談解決をした経験があります。
男性が家事労働をしている実態を、具体的にどのように立証していくかについて、お困りの方は、当法律事務所の無料相談で細かくご説明いたします。

●後遺障害逸失利益…64万円
被害者は資格を持っていたのですが、事故時は市民税等が課税されていないほどの所得状態であったことから、基礎収入は300万円と認定されました。
この300万円に14級の労働能力喪失率5%(0.05)を掛け、これに捻挫打撲の14級の目安値である5年の労働能力喪失期間、つまり4.3295を掛けた計算の損害額(64万円)が認められました。

●傷害慰謝料…149万円
通院期間は9ヶ月余りです。こちらからの請求額全額が認定されました。

●後遺障害慰謝料…110万円
裁判になれば、特に事情がないかぎり14級は110万円を認定してもらえます。こちらの請求どおり認められました。

●過失割合  被害者5%:相手方95%
こちらからは、ドライブレコーダーの影像を証拠として提出しました。

判決では、相手方が対向車線交差点停止線付近にいた被害者バイクを見落とし、
青信号になり、対向車両が交差点に進入するよりも先に右折を完了しようとして交差点に進入した点が重視され、こちらの過失は5%にとどめる判決が下されました。

バイクと四輪車のいわゆる右直事故なら必ずバイク15%、四輪車85%になるというわけではありません。
本件は、ドライブレコーダーの映像がこちらの過失を5%にとどめることに大いに役に立ちました。
被害者側の過失がどうなるのかについては、こまかく検討しつくし、主張つくすのが弁護士のつとめであり、弁護士金田はとことんまで検討します。

控訴審

相手方は上記第一審判決に不服があり、大阪高等裁判所に控訴しました。
しかし、控訴の裁判でも、第一審の結果を特段変えるような進行は全くなく、こちらが最終で 580万円 の支払いを受ける和解が成立しました。

後遺障害14級が認定されたことで、裁判の前に自賠責保険から75万円の支払を受けていましたので、弁護士金田が受任後、被害者は、655万円 の支払いを受けることができました。