交通事故 脳挫傷 意識障害なし 高次脳機能障害後遺障害9級 嗅覚脱失12級 認定事例

(令和5年11月10日原稿作成)

 

高次脳機能障害(物忘れ、怒りっぽくなるなど)

 

交通事故に限ったことではありませんが、頭部を受傷した場合、物忘れをする、怒りっぽくなるなどの感情の変化がはげしくなる、注意力や集中力が低下する、作業を理解して適切に行えなくなる、などの状態となり生活に支障を生じることがあります。

このような状態になると、高次脳機能障害を生じたのではないか? という問題が出てきます。

 

高次脳機能障害が「生じるかもしれない」という予測をすることは可能か?

 

交通事故で頭部を受傷した場合、被害者のご家族の方は、事故から初期の段階では以下の点に気をつけておく必要があります。

 

●受傷直後から意識障害があったかどうか、あったとして意識清明になるまでどの程度の時間・期間を要したか

●頭部の内部に傷を生じたり、出血したりするような傷病名の確定診断が医師によりなされ、このような傷病名を示す画像(CT、MRI)上の異常所見が認められること

 

 

「言葉をかけたら開眼する」状態であったり、「今日の日時」・「今いる場所」・「目の前にいるのは誰か」という点について間違った回答をしたりするような状態は、意識障害があるものと考えていただいた方がいいです(正確には医師の先生の評価になりますが。)

※どのような傷病名が対象になるかは個々の法律相談にてご説明いたします。

※頭部のMRIですが、画像は事故直後だけでなく、3ヶ月以上経過してからも検査を受けていただいて異常所見の変化を医師の先生にご確認いただくことが重要です。

 

 

一定時間・期間意識障害があり(意識障害の程度にに応じて時間・期間は異なりますが)、CT、MRIで上記の異常所見が認められ、医師による確定診断がなされたら、高次脳機能障害の症状が現れるかもしれないことを想定しておくことはできると思います。

 

この場合、主治医からすぐにリハビリテーションの指示が出る場合もありますが、ご家族の方としては、交通事故前と後で、被害者の様子の違いをしっかりと観察しておき、メモをして記録しておくことが大切です。

 

 

意識障害がないのに高次脳機能障害の後遺障害が認定されることはあるのか?

 

以下に挙げるケースは、当法律事務所弁護士がご依頼を受けたケースです。

交通事故で頭部を受傷し、脳挫傷の画像所見があって確定診断がなされたものに、意識障害がなかったケースですが、自賠責保険の後遺障害で高次脳機能障害9級10号が認定されました。

 

 

本件の事故状況、治療経過

 

車の後部座席に乗車していた被害者(40代女性有職家事従事者)は、他車に衝突され、車外に放りだされて受傷し、病院に救急搬送されました。被害者はそのまま入院となりましたが、意識障害はありませんでした

 

画像上、脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血の所見があり、医師からこの旨の診断がなされました。

 

被害者は頭痛をはじめとする身体の痛みやしびれ、においがわからないことを訴え、退院後もこれらの症状に対し、通院をされていました。

 

当法律事務所弁護士が受任

 

ご紹介により、被害者はご家族の方とともに当法律事務所の無料相談にお越しになりました。

お越しになったのは事故から約1年あまり経過した時点でした。

 

弁護士金田は事故状況、症状、お仕事や日常の状況などをお聞きしました。

その時点で被害者とご家族は、被害者のにおいが全くわからないことで困っておられました。

 

ところが、すでに取り寄せておられた診断書を見せていただきますと、事故から3ヶ月半経過後の頭部MRI検査でも若干の脳挫傷があるとの記載がありました

 

これを見て、交通事故前後の被害者の日常の様子をお聞きしましたところ、言われてみれば事故後早い段階から、急に大声で怒り出したりするようになったり、もの忘れが多くなっているとのことでした。

復帰されたお仕事でも物忘れが目立っているとのことでした。

 

これをお聞きし、もしかすると、高次脳機能障害に見られる症状が出ているかもしれないということをお話をし、この点に関しても、通院先の病院で診ていただいた方がいいとお話をしました。

 

本件、弁護士金田がご依頼をお受けすることになりました。

 

 

脳神経外科での後遺障害診断書の作成

 

受任後にわかったことですが、病院に医療照会をかけたところ、意識障害は最初からなかったとのことでした。

 

その後、弁護士が救急隊出動時の被害者の意識障害の状態について問い合わせをしましたが、回答文書には意識清明と明記されており、意識障害がないという内容になっていました。

 

当法律事務所にお越しになるまで、被害者はもちろんご家族も、怒りっぽくなったことやもの忘れが出てきたことに気付いておられませんでした。おそらく、このような症状が交通事故と関係があるのではないかということ自体も認識されていなかったのです。

ですので、救急搬送先の病院での入院中も、怒りっぽいところや物忘れが見過ごされ、これらに対して何らの処置も施されずに1年が経過していました。

担当医の先生も、最初から意識障害がなかったので、この点の処置を除外されたのだと思いますし、ここまでの経過は致し方ありません。

 

弁護士金田は被害者からお預かりした画像をもとに、協力医(脳神経外科医)の先生にも相談をしましたところ、経過で撮ったMRIでわずかに脳挫傷の痕跡が認められるようだが、あくまでも初期に撮られたMRIとの比較でいえることであるとのご見解でした。

 

わずかでも画像所見が認められそうであり、かつ、高次脳機能障害特有の症状が見られ、これらが残っているのであれば、相手方任意保険会社や自賠責保険に対し主張していく必要があります。

 

日常生活状況について被害者のご家族からお聞きし、まとめたものを脳神経外科の診察にご持参いただきましたが、担当医の先生は、頭痛以外は最初から聞いていなかった症状であったとのこと、脳神経外科の治療としては終了しているとのことから、これ以上の治療継続には消極的なお考えでした。

診察は終了しました。

 

ただ、後遺障害診断書はご作成いただけるとのことであり、弁護士から病院に対し書式を送付することになり、後遺障害等級の申し立てに必要な3種類の書式(後遺障害診断書、頭部外傷後の意識障害についての所見、神経系統の障害に関する医学的意見)を、ご家族からお聞きした被害者の状態に関する連絡文書とともにお送りしました。

 

担当医の先生にご作成いただいた後遺障害関係資料が届きましたが、頭痛以外の交通事故後の被害者の日常の様子については、画像的にも変化が軽微であったことから、交通事故との因果関係については不明であり、判断は不可能である旨の一言が添えられていました。

 

物忘れ、怒りっぽいなどの症状は、弁護士が気づかなければ完全に見すごされ、後遺障害の判断材料にもなりません。たとえ気づいたとしても、遅ればせながらであっても担当医の先生に伝えなければ、後遺障害となるかどうかの入り口にも入れません。

担当医の先生が消極的な中(被害者に意識障害もなく、被害者も本人も物忘れなどに認識を持てなかったので無理もないことですが。)、弁護士としてできるアプローチはこれが限界でした。

 

 

整形外科、耳鼻咽喉科での後遺障害診断書の作成

 

被害者は上肢や下肢に痛みやしびれも残っており、同じ病院の整形外科にも通院されており、ここでも後遺障害診断書の作成をしていただきました。

これにはある意図がありました。

 

 

●整形外科でも後遺障害診断書の作成をお願いした意味

 

痛みやしびれについては局部に神経症状が残った後遺障害ということで14級や12級といった等級が認定される可能性があります。これ以外にも本件では整形外科で後遺障害診断書をご作成いただく意味がありました。

 

脳挫傷など頭部の損傷を伴うケガをした場合、精神的機能障害(高次脳機能障害)以外にも身体的機能障害(上肢、下肢の麻痺など)が生じるおそれがあります。被害者は入院中から手足の痛みやしびれがありましたが、麻痺(まひ)までには至っていなかったことから、これも脳神経外科ではあまり重要視されておらず、上肢下肢の症状は縦割り的に整形外科で診察されていた実情がありました。

 

整形外科にてこの上肢、下肢の症状に触れていただくことで、脳神経外科とは異なる診療科であっても、自賠責保険がこれらの症状は脳挫傷に由来するであろうと理解していただけないかと、うすい期待を持って、という意味でした。

 

整形外科の後遺障害診断書ではこのような上肢、下肢の症状を述べられていました。

 

 

●耳鼻咽喉科関係

嗅覚脱失についてはこの病院から転院となり(転院先に診療情報は提供されていました。)、開業医で通院が継続されていました。

非常にまれなケースですが、この開業医では、嗅覚障害の後遺障害等級認定判断に不可欠な検査といえるオルファクトメーターを施行されており、この検査結果では嗅覚脱失レベルの数値となっていました。

この嗅覚脱失な頭部外傷(脳挫傷)が原因であるという判断もされていました。このような判断を盛り込んだ後遺障害診断書が作成されました。もちろん、オルファクトメーターの検査結果(オルファクトグラム)も添付していただきました。

 

 

後遺障害等級認定結果…併合8級が認定されました

 

脳神経外科、整形外科、耳鼻咽喉科の各後遺障害診断書をはじめとした資料をそろえ、弁護士が代理して自賠責保険後遺障害等級認定の申し立てを行いました。

 

被害者の物忘れ、怒りっぽいなどの症状については、可能な限りの主張と立証をしていこうと思い、初期の頭部MRI像と経過時点の頭部MRIの画面をキャプチャーし、確認しやすいように資料化して提出しました。

画像的には最初の画像とあわせてやっとわかる程度のものでしたので、何とか気付いていただきたいという意味もありました。

 

結果は以下のとおりです。

●高次脳機能障害の残存により後遺障害9級10号

●嗅覚障害(脱失)により後遺障害12級相当

この9級と12級は併合扱いになり、重い方の9級を一つ繰り上げることになり、併合8級と認定されました。

 

■等級認定結果の理由には以下のとおりの記載がありました。

高次脳機能障害

頭痛、集中力低下、怒りっぽい、物忘れといった症状については、受傷当初には意識障害は認められていないものの、画像上脳挫傷が認められ、後の症状経過等を踏まえると交通事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残存しているものととらえられる。
その障害程度については、頭痛、集中力低下、怒りっぽい、物忘れに加えて整形外科の後遺障害診断書に上肢、下肢の痛みやしびれの記載があること等から神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるものとして後遺障害9級10号に該当する。

 

嗅覚障害

頭部外傷に起因するものと認められ、オルファクトメーターの検査結果より嗅覚脱失ととらえられ後遺障害12級相当と判断する。

 

 

脳挫傷を受傷した後の高次脳機能障害については、意識障害が見られずに認定されるのは厳しいかと思われましたが、わずかなMRI画像の所見の存在を考慮していただいたと考えていますし、また、整形外科で作成していただいた後遺障害診断書の症状も後遺障害9級10号認定のために有用となりました。

 

後遺障害等級判断までの活動は、本に書いてあることを見て動いたのではなく、弁護士が本件で被害者が置かれていた状況を把握したうえで、何が一番よりよい方法かを考え、そして、被害者と足なみをそろえてしたものです。

後遺障害が残り、将来の生活に不安のある被害者が、この等級認定結果により救われたことは事実です。

 

 

示談交渉により解決

 

その後、相手方側と示談交渉を行いました。

 

示談交渉の結果、最終で 2400万円 の支払を受ける合意ができました。

 

この2400万円以外にも後遺障害8級認定により自賠責保険から 819万円 の支払を受けましたし、これら以外にも示談交渉前にも別途720万円あまり支払がありました(医療機関への直接の支払も含みます)。

 

最終の示談交渉の際の後遺障害逸失利益という損害費目ですが、労働能力喪失率は45%、労働能力喪失期間は67歳までとする内容で合意ができました。

 

 

ひとこと

 

当法律事務所弁護士にご依頼をいただなければ、うまくいって後遺障害11級(頭痛等の症状につき後遺障害12級13号、嗅覚障害12級)、思わしくない結果ですと後遺障害12級どまりになっていたと考えられるケースです。

 

当法律事務所弁護士は、交通事故で頭部を受傷し高次脳機能障害が残存してしまったケースを数多く取り扱ってきており、現在も取扱中の案件がございます。

 

高次脳機能障害が問題になるケースでは、被害者のご家族の協力が欠かせません。ご家族からでもご遠慮なくお問い合わせをいただければと思います。