交通事故 死亡事故 事例をふまえた解決までの流れ

(令和5年7月6日原稿作成)

 

交通死亡事故の被害者のご家族の方には謹んでお悔やみ申し上げます。

大切なご家族を失い、色々な点でなかなか整理がつかず、時が経っている状態になりそうです。

しかし、交通事故では、加害者に対する損害賠償の問題があります。

以下の当法律事務所がご依頼をお受けした事例をご参考いただき、よろしければ当法律事務所にお問い合わせいただければと思います。

 

交通事故から約2週間後にお問い合わせをいただきました

 

被害者(70代男性)は、歩行中に四輪車に衝突され、病院に救急搬送されましたが、死亡が確認されました。

くわしい事故状況は省略いたしますが、明らかに被害者の過失はゼロのケースでした。

交通事故から2週間後、ご家族(ご遺族)から当法律事務所にお問い合わせいただきました。

事情をお聞きし、弁護士金田がご依頼を受けることになりました。

 

交通死亡事故で加害者側(保険会社)に請求できるのは誰か?

 ※以下、法律上の原則を述べます。

 

亡くなった被害者の相続人 が請求できることになります(ただし、後述のとおりの例外があります。)。

相続人は1人だけとは限りません。

亡くなった方の配偶者は必ず相続人になります。

亡くなった方に子がいれば、子 が相続人になります。

子が先に亡くなっていてもその子(=亡くなった方の孫)がいれば、その子(孫) が相続人になります(代襲相続:だいしゅうそうぞく)。

子がいなくて代襲相続もない場合、亡くなった方に父や母がいれば、父や母が相続人になります(祖父母の相続権についてはここでは省略いたします。)。

亡くなった方に、父母など前の代の方や子など後の代の方がいない場合、亡くなった方に兄弟姉妹がいればその兄弟姉妹が相続人になります(この場合、代襲は一代のみです。)。

 

 

●注意してください!

亡くなった方に、配偶者、子、父母(いずれが一方のみいる場合も含みます)がいる場合、父母に相続権はありません(子が相続放棄をした場合には相続権が生じます。)。

しかし、民法711条は、生命を奪われた被害者の父母の慰謝料請求を認めていますので、被害者に子がいる場合でも、被害者の父母は、加害者に慰謝料請求ができる点にご注意ください。

 

 

●取り寄せ戸籍に注意

 

交通死亡事故の損害賠償請求をする場合、被害者の出生から死亡までの戸籍を取り寄せる必要がありますが、被害者に父母がいる場合、加えて、父母が存命であることを示す戸籍も取り寄せる必要があります

 

 

加害者の刑事裁判で、被害者参加手続の代理をしました

 

※当法律事務所では、交通死亡事故事件に関し、民事の損害賠償請求をご依頼いただいた場合、加害者の刑事裁判で被害者参加制度の利用を希望され、弁護士にご依頼いただく場合、被害者参加制度に関する弁護士費用は 別途頂戴しません。

 

加害者には過失運転致死の刑事裁判が行われることになり、弁護士金田は、まず、被害者参加手続を代理することになりました。

 

具体的には、以下のことを行いました。

 

●刑事裁判期日(公判期日といいます)に出席しました(傍聴席よりも中にある席にすわります。)。

●被告人(加害者)に対する質問をしました。

●ご遺族の心情に関する手紙を読み上げました。

●事実関係や量刑関係に関する意見を述べました。

 

刑事裁判が終了し、民事の損害賠償請求を行いました。

 

 

加害者側の自賠責保険に対し、損害賠償請求をしました

次に、弁護士金田は、ご遺族と相談の結果、自賠責保険会社に損害賠償請求をすることになりました。

 

 

加害者側の保険会社が支払うことになる損害賠償のしくみとは?

※以下、加害者側に任意保険がかけられていることを前提としてお話をします。

※以下、自賠責保険会社や任意保険会社とは、加害者側のことをいいます。

 

 

●交通死亡事故に限った話ではありませんが、加害者側が支払うべきことになる損害賠償の総額は、自賠責保険が負担すべき分と任意保険会社が負担すべき分に分かれます。

 

●ただし、自賠責保険負担分=任意保険負担分となるケースも理屈上は考えられます。もっとも、自賠責保険負担分>任意保険負担分というケースはありません。

 

●加害者側が支払うべきことになる損害賠償の総額がいくらになるかの確定金額は、最後にならないとわかりません(ただし、受任した弁護士がおおよその見通しを立てることは可能です。)。

 

●交通死亡事故に関し、自賠責保険が支払ってくれる限度額は、死亡分は3000万円で、死亡に至るまでの傷害分が120万円になります(必ず限度額いっぱいまで支払われるわけではありません。)。

 

●加害者側自賠責保険が負担すべき分は、①被害者側が、任意保険会社への損害賠償請求をする前に請求をして支払を受けることも可能であり(これを「自賠法16条に基づく請求」といいます。)、②被害者側がいきなり任意保険会社に損害賠償請求をして、示談または裁判で 解決し、任意保険会社が支払をした後に、任意保険会社が自賠責保険会社に回収の請求をすることも可能です(これを「自賠法15条に基づく請求」といいます。)。

 

ただ、②の場合、示談や裁判が終わる前に、任意保険会社が、あらかじめ、自賠責保険会社に対し、自賠責保険会社がどれくらい支払ってくれるのかの見込みを立てることができます(これを「事前認定手続」といいます。)。

死亡事故の場合、事前認定手続をするには、あらかじめご遺族から任意保険会社に対し必要資料を渡しておく必要があります。

 

 

自賠責保険が交通死亡事故で賠償金を支払うルールとは?

 

交通死亡事故で、死亡分に関して自賠責保険は以下の費目の支払いをします。

※令和2年3月31日以前に発生した事故については、以下の金額や運用が異なる点があります。くわしくは当法律事務所にお越しいただいての無料相談でご説明いたします。

 

 

・葬儀費用 100万円です。

 

・逸失利益

被害者が生存していたならば得られたであろう収入分の損害という意味ですが、死亡以降に発生し得る被害者個人の生活費の支出も免れたという考えにより、生活費分の割合が引かれます(引かれる割合はケースにより異なってきます。)。

基礎年収×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数という計算式で算出されます。

年金の逸失利益については、「就労可能年数」のところが「平均余命までの年数」に代わります(年金の種類によっては逸失利益が認められないものもあります。)。

死亡被害者に被扶養者がいる場合といない場合とでは、生活費控除率の数字が変わってきます。死亡被害者に被扶養者がいた場合の方が金額が大きくなります。

何をもって「被扶養者」であると認定されるのかという問題もあります。

 

・死亡被害者本人の慰謝料400万円です。

 

・遺族の慰謝料…死亡被害者の父母、配偶者及び子が対象になり、1人の場合は550万円、2人の場合は650万円、3人以上の場合は750万円ですが、死亡被害者に被扶養者がいる場合はこれらの金額に200万円が加算されます

 

 

 

●お伝えしたいこと!

以上のような算定方法なので、自賠責保険に請求をしても、上限3000万円いっぱいが支払われるとは限りません。

また、自賠責保険に支払いを請求するには根拠となる資料を提出する必要がありますが、提出資料すべき資料が出せていなかったり、提出すべき資料を任意保険会社に渡せていなかった場合には、本来、支払いを受けられるべき金額が受けられないおそれがあります。

 

 

損害賠償の進め方

 

大きく以下の2つの流れがあります。

 

上記①のとおり、被害者側が、先に自賠責保険会社に請求をして支払を受け、追加請求すべき部分があれば、その後、任意保険会社に最終追加損害賠償請求をする流れと、②のとおり被害者側が任意保険会社に損害賠償請求をする(自賠責保険へは任意保険会社が請求する)流れです。

 

どちらの流れで進める方が被害者側にとって良いか? については弁護士も考えていかなければならないと思っています。

本件について、弁護士金田はご遺族からお預かりした資料を確認、検討し、損賠賠償額は自賠責保険の上限額を超えることが見込まれる見通しを立てました。

 

そのうえで、上記①のとおり、先に自賠責保険会社に請求をし、その後、上記②のとおり任意保険会社に最終追加請求をした方が、ご遺族の損害賠償問題上、利益になると考え、自賠責保険会社に請求する方針を立て、ご遺族もご了解され、進めることになりました。

 

どうしてこの流れがよりご遺族に利益になるのかは説明は省かせていただきます。

 

 

自賠責保険の請求の結果、死亡分3000万円が認められました

 

死亡に至るまでの傷害分(治療費、文書代等)が認められ(具体的な金額は省略します。)、死亡分は上限3000万円満額認められました。

 

本件ではこの3000万円上限いっぱいまで認定されたことは、後の任意保険会社との交渉においても、被害者側にとって、とても好影響を及ぼしたと考えています。

 

 

任意保険会社との示談交渉…追加で1160万円の支払いを受けました

 

任意保険会社に対しては、最終の追加請求ををし、結局、1160万円(1万円単位以下切り捨てております。)の支払を受ける合意ができ、示談が成立しました。

ご遺族は、合計 4160万円を超える支払い を受けました。

 

 

 

ひとこと

 

交通死亡事故の損害賠償問題は、複雑な面がいくつもあり、交通死亡事故の取り扱い経験が多い弁護士によらないと進めるのが難しいものであるといえます。

 

お困り、お悩みのご遺族の方は、当法律事務所にご相談ください。