距骨(きょこつ)骨折 後遺障害12級13号解決事例をふまえ弁護士が解説

(令和6年10月13日原稿作成)

 

距骨(きょこつ)とは

 

この骨の上には、脛骨(けいこつ)と 腓骨(ひこつ)があります。脛骨と腓骨と距骨で、足関節(そくかんせつ:足首の関節のことです)を構成しています。

距骨の下には踵骨(しょうこつ)というかかとの骨があります。

 

 

距骨骨折

 

当法律事務所がご依頼をお受けした被害者(30代女性会社員:以下「本件被害者」とよびます。)のケースを紹介します。

 

本件被害者は、歩行中に四輪車に足部(足首から足の指までの部分です。)をひかれ、転倒するという交通事故にあいました。

 

本件被害者は、事故後すぐに病院に救急搬送されました。

 

レントゲンやCTなど画像検査がされ、距骨骨折と診断されました。足関節内の骨折です。

 

医学文献を見ますと、この距骨の骨折が生じることはまれであるとされていますが、変形性関節症(OA)などの後遺症の発生が指摘されており、難治性の骨折である と言われています。

 

 

 

治療経過、症状経過

 

本件被害者の距骨骨折に関しては、最初は手術が選択されず、シーネで固定し、松葉杖を使用せざるを得ない状態でした。当初、入院はなく、通院リハビリテーションが施行されました。

 

本件被害者の患部は、強い痛みやしびれがありました。本件被害者はリハビリを継続しましたが、足関節の痛み、しびれは変わらず続き、仕事の休業も余儀なくされました。

 

 

また、足関節内には遊離体があると医師から指摘を受けました。つまり、関節の中に骨のかけらや軟骨がある状態になり(関節鼠ともいいます。)、遊離体は関節内を動いて痛みの原因となります。

交通事故から約1年後にこの関節内遊離体を摘出、除去する手術を行うことになりました。ただし、この除去手術をしても、患部の痛みやしびれは残存しました。

 

 

入院の際の個室代ですが、入院時期、病院では個室しか空き部屋がありませんでしたので、個室代を相手方任意保険会社が支払うことについて争いは出ませんでした。

 

 

距骨骨折で残る可能性のある後遺障害とは?

 

上でものべましたが、距骨は足関節を構成していますので、関節機能障害(関節の可動域制限)という後遺障害が残る可能性を意識しておく必要があります。

 

具体的には、以下の後遺障害を意識することになります。

●後遺障害10級11号(受傷側が他方と比べ、可動域が2分の1以下に制限された後遺障害のことです)

●後遺障害12級 7号 (受傷側が他方と比べ、可動域が4分の3以下に制限された後遺障害のことです)

 

 

可動域制限が基準条件に満たない場合でも、骨折部位に痛みやしびれが残った場合には以下の後遺障害を意識しておく必要があります。

●後遺障害12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

●後遺障害14級 9号(局部に神経症状を残すもの)

 

 

 

関節部分の骨折に関し後遺障害12級13号と14級9号の違いは何か?

 

当法律事務所弁護士の多数の経験から言いますと、足関節のような関節を骨折し、痛みやしびれが残った後遺障害等級の違いは、骨折後の関節面の不整・変形の有無で12級13号と14級9号を見極めていくというのが自賠責保険の傾向のようです。

 

骨折後の関節面の不整・変形の有無は、レントゲンやCT画像で見極めていくことになります。

 

 

 

当法律事務所弁護士の弁護活動

 

本件被害者は治療中に当法律事務所の無料相談におこしになりました。

 

関節内遊離体除去手術をしても距骨骨折をした足関節の痛み、しびれがきついということであり、事故から1年以上も経過していましたので、もう後遺障害のことをみすえていかなければならないという状況でした。

 

本件被害者が持参された休業に関する診断書には「距骨関節内骨折」と明記されており、関節内骨折であることがはっきり書かれていましたので、弁護士金田は足関節の可動域はどうなのですかと本件被害者に聞きました。本件被害者がご自分で受傷した側の足首を曲げ、他方同様まで曲がっていることを確認しました。

ですので、関節機能障害(可動域制限)の後遺障害の認定可能性はなくなりました。

 

 

そうすると、あとは痛みが残る後遺障害が認定されるかどうか、認定されるとして12級13号か? 14級9号か? ということになります。

 

当法律事務所がご依頼をお受けし、後遺障害等級手続を進めることになりました。

 

本件被害者にお聞きしますと、CTは受傷直後にしか撮っておらず、あとはレントゲンばかりだということでした。部位的にレントゲンで骨の状態をはっきり確認するのは難しいかと思いましたので、本件被害者に対し、主治医の先生とCT検査の実施について相談してみてくださいと伝えました。

主治医の先生もCTの撮影については了解されました。

 

 

交付をうけた画像CD-Rを弁護士金田が確認しますと、CT上、距骨の関節面が変形していることが弁護士レベルでもはっきりと確認できました。

そうしますと、痛みやしびれが残った後遺障害12級13号を目指して動くことになるのは言うまでもありません。

 

 

 

後遺障害診断書の記載

 

ほどなくして症状固定となり、後遺障害診断となりました。

 

主治医の先生は後遺障害診断書に以下の記載をされました。

★(受傷した足関節の)関節面の変形癒合を認める

★関節鏡で骨折部の軟骨欠損を一部認める

 

 

当法律事務所が代理して自賠責保険会社に対し、後遺障害等級の申し立てをしました。

 

 

後遺障害12級13号の認定

 

結果ですが、距骨関節内骨折後の足部・足関節の痛み、しびれ等の症状については、提出の画像上、距骨は骨癒合しているものの、関節面の変形癒合が認められ、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられることから局部に頑固な神経症状を残すものとして後遺障害12級13号が認定されました。

 

想定していたとおりの後遺障害等級が認定されたことになりました。

 

後遺障害12級が認定されたことで、自賠責保険会社から224万円の支払いを受けることができました。

 

 

 

距骨骨折が足関節にかかわることによる特徴

 

足関節は 荷重関節 です。

つまり、何も持たずに立った状態でも体重を受け止めることになる関節です。

骨折した後も関節面の変形癒合(=折れた骨はくっついているが、変形してくっついている状態のこと)があり(この変形状態は将来にわたり変わらないままです。)、普通に立っている状態でも体重がかけられていれば、痛みがずっと続くであろうことは容易に想像できます。

 

 

最初の損害賠償請求のときに、この点を、後遺障害逸失利益という損害費目の中でしっかりと主張していくことは、被害者救済のためには極めて重要です。

 

 

 

交通事故紛争処理センターでの審査で解決

 

後遺障害12級が認定された後、相手方任意保険会社に追加請求をしましたが、話がまとまらず、交通事故紛争処理センターにあっせんを申し立てました。

 

しかし、あっせん手続でもまとまらず、次のステージ(審査のステージ)にうつりました。

 

この審査のステージで、これまでに支払ずみの金額を除き 941万円(千円以下省略いたします。)を被害者に支払うのが相当であるという裁定が下り、本件被害者はこの結果に応じることにしましたので、これで解決になりました。

 

審査のステージで交通事故紛争処理センターが出した裁定は、被害者側が応じれば、保険会社側はこれに応じなければならないことになります。

 

 

 

■後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間について

痛みやしびれ(神経症状)が残った後遺障害12級のケースでは、労働能力喪失期間について、加害者側任意保険会社から10年(本件被害者は事故時30代でした。)以下を主張されることがほとんどです。

しかし、当法律事務所弁護士は、距骨骨折後の変形が将来にわたり続くこと、足関節が荷重部位であり仕事をしていない日常生活ですら荷重がかかり、痛みが軽減する状況にないことなどを理由に、67歳までの労働能力喪失を主張しました。

交通事故紛争処理センターの裁定では、距骨が体重や運動による負荷のかかる部位であること、距骨骨折が治療が難しい骨折であること、距骨関節内骨折では関節面の不適合で負荷時や運動時の接触圧の異常な偏在と上昇により、将来的には外傷性変形性足関節症が生じる可能性があるとされていること、本件被害者が事故後にかなりの減収があったこと等が指摘され、労働能力喪失期間はこれを限定すべき理由はないとのことで67歳までの労働能力喪失が認められました(労働能力喪失率は14%と認定されました。)。

 

 

 

 

ひとこと

 

本件被害者は、弁護士受任後、224万円941万円とを合わせ、1165万円 を獲得することができました。

 

距骨骨折に限らず、交通事故で負ったケガが治らず、後遺障害のことを考えていかなければならなくなった場合、損害賠償との関係で重要なポイントがいくつかあります。

 

これを見過ごしてしまうと、想定よりも低い後遺障害の認定にとどまったり、損害額が低くなってしまったりします。

 

後遺障害との関係で医学的知識を持っている弁護士、画像を確認して後遺障害等級の見通しを立てることができる弁護士に依頼することは重要です。