背骨骨折など 後遺障害11級978万円→弁護士受任後、異議申立で10級にアップし2654万円で解決

(令和2年11月23日原稿作成)

相手方保険会社から金額提示が出たら、後遺障害等級が妥当かも検討する!

 

後遺障害等級が認定されて、相手方保険会社から金額提示が出た場合、個々の損害費目の金額が妥当かどうかを確認することはもちろん大事です。
しかし、認定された等級が妥当なのかどうかも検討する必要があります。

なぜなら、さらに上の等級が認定されるべきであれば、少なくとも、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料といった損害費目の増額がさらに見込めるからです。

しかし、認定された後遺障害等級が妥当かどうかは、弁護士なら誰でも検討できるものではありません。
交通事故後遺障害案件を毎日のように取り扱っている弁護士から言わせてもらうと、交通事故後遺障害案件を毎日のように取り扱うほど精通していなければ、見落としが生じるおそれがあると言わざるをえません。
それくらい、この検討は難しいものです。

そして、あきらめない気力も必要になってきます。

 

以下の弁護士金田が取り扱ったケースは、普通なら見落とされる可能性が高かった事情を拾うことができ、顧問医の協力もあり、等級を一つ上げることができ、かつ、1676万円も増額解決できました。

 

当法律事務所の無料相談にお越しいただくまでの経緯

 

40代男性給与所得者の方が被害者でした。

被害者は自転車に乗り横断歩道で渡っていたところ、車に衝突されて飛ばされ、転倒しました。

被害者は病院に救急搬送され、肩甲骨骨折、2本の肋骨骨折が判明し、近くの病院に転院となりました。
被害者は、くびの痛みなどをずっと伝え続け、転院先の病院の画像検査で、やっと第7頚椎椎体骨折が認められました。

ところが、その後も1か月に1~2度の診察が入るだけという経過でした。

そうしているうちに、相手方任意保険会社から治療の終了に関する話があり、当法律事務所の無料相談にお越しになりました。

 

無料相談で、弁護士は、事故状況や通院状況などをお聞きするとともに、一部の画像CD-Rを確認させていただきました。
肋骨の骨折についてははっきりしていましたが、大きな変形はなさそうでしたし、肋骨骨折部分の痛みもかなり快方になっているということでした。

第7頚椎の骨折と肩甲骨骨折についても画像上確認できました。
自覚症状、骨折した肩の状態、通院状況、これまでの経過を確認し、近いうちに後遺障害診断となりそうであることを被害者に説明し、必要なことをお伝えしました。

今後もご不明な点があれば当法律事務所にご連絡いただいても構いませんとお伝えし、初回の相談は終了しました。
弁護士費用特約がなかったこともあり、ご依頼いただくかどうかについては慎重にお考えいただくことも弁護士からお伝えいたしました。

 

被害者から2回目の連絡

 

その後、被害者から当法律事務所に再び電話をいただきました。

お電話の内容は、後遺障害11級が認められ、相手の保険会社から978万円(これは千円単位を四捨五入した金額にしております。)の提案が出たが妥当かというものでした。

弁護士金田は、1回目の相談で聞き取りしていた内容から、後遺障害11級とは、第7頚椎の骨折の変形が認められたのだとすぐわかりました。肩甲骨を骨折した側の肩の関節可動域も良くなかったのですが、認定される可能性があるのは頚椎の骨折だと考えていました。

被害者には2回目の相談にお越しいただきました。

 

被害者の方の通院期間は6か月余り、のべ通院日数はわずか9日でした。

後遺障害は、第7頚椎骨折による変形が認められ、11級7号が認定されました。

 

相手方保険会社から送られてきた資料を見せていただきました。
後遺障害11級を前提としても、後遺障害逸失利益、後遺障害慰謝料といった損害費目の提示金額は、正直、低いものでした。

ここから先は被害者ご自身で行うには限界があるということもあり、当法律事務所がご依頼をお受けし、進めることになりました。

 

本件で、後遺障害11級の認定は妥当か?

 

弁護士金田は、最終の示談交渉は相手保険会社と進めていく前に、認定された等級が妥当なのかどうかを疑っていく必要があると感じました。
なぜ、そう感じたのかを、以下、言います。

 

1点目は、肩甲骨骨折に関連して、後遺障害診断書には肩関節の可動域制限の数値は等級が認定されるくらいのものが出ていましたが、本件の肩甲骨骨折と肩関節には関係がない旨の理由付けがあって後遺障害が否定されていたというものでした。
この点については、本当に肩関節に影響がないのかを確認していく必要があると弁護士金田は考えました。

2点目は、被害者は背中の痛みがありこれを病院でも伝えていた、ということでした。
さきほど述べた被害者の「2本の肋骨骨折」とは、(左右いずれか寄りについては省略させていただきますが)第9肋骨と第10肋骨の骨折で、しかも、画像を見ると、背骨(正確には胸椎という言葉が正しいのですがわかりやすくお伝えいたします。)に近い付近での骨折でした。

肋骨(ろっこつ)は、左右12本の骨があり、上から第1、第2と呼ばれます。肋骨は胸椎とくっついていて、内臓を保護し、囲むような形になっています。
胸椎も12個から成り立っています。
背中の痛みという自覚症状をお聞きし、肋骨骨折部分の近くの胸椎も骨折がないのか気になり、この点も確認していく必要がありそうでした。

いずれにしても、通院の経過を確認する必要があると思いましたので、通院された病院のカルテを取り寄せることにしました。

 

カルテの記載がきっかけに

 

弁護士が被害者からのご依頼によりカルテや画像を取り寄せたところ、救急搬送先の救急科でとられたCTで、背骨(第9胸椎でした)の骨折が認められるという画像診断がありました。

しかし、この第9胸椎の骨折は、転院先には伝わっておらず、転院先の病院もこれを認識されないままになっていました。
転院先病院ではCTはとられていたのですが、事故直後のもののみであり、背骨にターゲットをあてられたものではありませんでした。

取り寄せたカルテや画像については、当法律事務所の顧問医に相談しました。
すると、やはり、画像上、第9胸椎の骨折は認められるとのことでした(ただし、骨の後部は形が保たれているという見解でした。)。

弁護士金田は、すでに認められているくびの骨(第7頚椎)の骨折後の変形に加えて、背骨(第9胸椎)の骨折後の変形が認められるかもしれないと見通しを立てました。

そして、この背骨の骨折をわかってもらうためには、くどくても背中の痛みが続いていることをお伝えいただいたうえ、現時点でもいいので背骨の画像を撮影していただき、骨折後の変形が認められるかどうかを確認してもらうのが最もいい方法だと考えました。

そこで、被害者に、搬送先から転院した病院で、再度、画像検査のお願いをしていただきました。

ただ、背骨の骨折については、カルテ上、救急搬送された病院から転院先の病院へは、紹介状による引き継ぎの内容になっていないようでしたので、転院先の病院の先生に対する画像検査のお願いの仕方をきちんと考えていくべきだと思いましたので、
この点も事前に被害者の方と相談しました。

本件で実施していただく画像検査ですが、CTが必要になると思いましたので、被ばくの問題が大丈夫かどうか、CT検査の実施について医師の先生と相談していだくこともアドバイスをしました。

 

CT検査で背骨(第9胸椎)骨折が判明

 

CT検査を実施していただくことになり、その結果、背骨(第9胸椎)の骨折が認められました。すでに作成ずみの後遺障害診断書に何点か追記いただきました。

このCT画像と追記された後遺障害診断書を自賠責保険に提出し、後遺障害等級の異議申し立てをしました。

 

後遺障害等級異議申立の結果 → 併合10級が認定

 

画像上、本件事故外傷による明らかな第9胸椎骨折が認められ、「脊柱に変形を残すもの」として後遺障害11級7号に該当すると判断されました。

背中の痛みについては、この変形障害と通常派生する関係にある障害ととらえられ、11級7号に含めての評価となりました。

右肩の可動域制限については後遺障害に該当しないという結果は変わりませんでした。

 

すでに認定されている頚椎の骨折変形の11級7号と、今回認定された背骨の骨折変形の11級7号との関係ですが、同一系列の障害であるため、併合の方法を用いて処理されることになります。
つまり、11級が二つですと、重い方の等級(本件では11級になります)を一つ上げた等級をトータルの等級とすることになり、トータルで10級になります。

この10級が認定されたことにより、自賠責保険から 461万円 が支払われました。

 

交通事故紛争処理センターで、あっせん案がでて解決しました

 

※以下の金額は千円以下省略しています。

その後、相手方任意保険会社と最終の示談交渉を行いましたが、双方主張の金額に大きな開きがありました。

そこで、被害者の方のご意向をお聞きし、交通事故紛争処理センターに申し立てることになりました。

交通事故紛争処理センターでは、あっせん案が出され、最終支払額 2193万円 で合意に至りました。

おもな内訳は以下のとおりです。

休業損害        6万0000円
傷害慰謝料     123万0000円
後遺障害逸失利益 2291万0000円
後遺障害慰謝料   530万0000円

※過失割合は、交渉の当初から被害者側10%で争いはなく解決しました。

 

傷害慰謝料は、入院はなしで、通院実日数9日でした。
本件のような通院状況では、この損害費目は目減りを強いられるおそれもありましたが、通院期間190日にもとづく裁判基準の金額で解決できました。

後遺障害慰謝料は10級の裁判基準の金額で解決できました。

後遺障害逸失利益については、事故前年の源泉徴収票記載の金額が、24%分67歳まで喪失するという計算による金額が認められました。
脊柱の変形障害では、激しく争われることが多い損害費目です。こちらからは、痛み、脊柱の支持機能の支障がもたらす日常や仕事への影響を細かく主張し、また、近い将来職務上の不利益が発生することになったことをまとめて主張しました。
その結果、上記金額が認められました。

結局、弁護士受任後、後遺障害等級が一つアップしたうえ、461万円と2193万円の 合計2654万円 の支払を受けることができました。
もし、等級がアップしていなければ、はるかに低い金額での解決しかできなかったといえるケースです。
そして、尽くせる主張は全て尽くし、上記解決をすることができたケースです。