上腕骨近位端骨折 肩の可動域が1/2以下になり自賠責も労災も後遺障害10級認定

上腕骨近位端は肩の可動域が制限されるおそれがあるケガです!

上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)…肩付近の骨折です

この骨折は、バイクで転倒して生じることが多いです。

弁護士金田は、交通事故で、この上腕骨近位端を骨折したケースを何例も取り扱っており、受傷直後~治療終了~後遺障害等級手続~示談交渉までの手続についての経験値をかなり積んだものと自負しています。

その数多くの事例の中から以下の一例をご紹介いたします。

 

~55歳男性給与所得者が被害者のケース~

被害者は、通勤中、原付バイクに乗っていて道路を走行中、道路に接したコンビニ駐車場から、車が、被害者バイクの道路上に出てきそうになりました。
被害者はかなり接近した状態であり、バイクのクラクションを鳴らしながら車をよけようとしてハンドルを切りながら急ブレーキをかけたら、被害者はバイクもろとも路上に転倒して滑走し、受傷しました。

 

本件は、車両同士の接触がなかった事故でした

このような事故は、いわゆる「非接触事故」といいます。
非接触事故の特徴について、いくつか以下のとおり挙げておきます。

1、接触がないので、相手方の車両には損傷がないケースがほとんどであると思われます
ですので、もし、相手側の過失が100%とまではいえない場合、つまり、被害者側に少しなりとも過失が見込まれる場合でも、相手方車両に損傷がなければ、相手方に対する物損の支払は発生しないことになります。この場合、たとえば、過失が95対0とか、90対0といった感じの提案が出てくることがありますが、このゼロは、相手に対する賠償金の支払がないという意味です。

2、接触事故の場合より過失割合が争われるおそれが高くなります
接触事故の場合で過失割合が問題になるとき、別冊判例タイムズ38号という本を参考にして話合いをしていくことになります。しかし、この本には非接触の場合にどうなるかについては書かれていません。
ですので、過失割合に争いが生じ、なかなかまとまらないこともあります。

3、相手の運転行為と受傷との因果関係があるかどうかについてしっかり調査、検討しておく
上記2の過失割合よりもっと被害者にシビアな問題です。
相手の運転行為によって、被害者がケガをしたといえない場合、相手に責任が発生しないとみられてしまいます。ですので、相手の運転行為により、こちらがケガをしたことについての裏付けを、早期に、きちんととれるかが問題となります。
現場にスリップ痕などのあとかたが残っているのかどうか、目撃者がいたのかどうか、関係車両にドライブレコーダーがついていたのかどうか、近隣に防犯カメラがついていたのかどうかを早急に確認することなどがとても重要になってきます。

治療状況

被害者は病院に救急搬送され、レントゲンがとられ、右上腕骨近位端骨折と診断されました。

その後、すぐに自宅近所の病院に転院となり入院となりました。

患部の骨折が数カ所に及んでいたこともあり、手術が実施され、プレートが挿入され、10本以上のスクリューが体内に使用されました。

被害者は40日入院し、その後、この病院でリハビリ通院を継続することになりました。

 

●上腕骨近位端骨折の治療法、リハビリの重要性

 このケガは、骨折の状況や程度によって、手術が実施される場合もあれば、手術が実施されずに固定をしてしばらく安静にする方法(保存療法)もあります。

このケガは、肩の強い痛みが出ることはもちろん、肩関節の可動域の制限が発生します。少しでも回復に努めるために、きちんとリハビリ通院を頑張っていくことがとても重要です。

 

 治療費、休業補償、賞与減額分の損害

通勤中の事故であり、労災の適用があったので、被害者は治療費について労災に手続をされていました。治療費は労災保険から対応されることになりました。

肩の骨折という傷病のため、被害者は勤務先を長期休まなければならなくなりました。
休業損害については、労災に対し休業補償の請求をし、支給を受けました。

 

●労災の休業補償
労災の休業補償は、休業日額×認定された休業日数の6割分しか支給されません。ですので、相手方の責任が6割を超える場合、その超えた分は相手方に請求する必要がある点に注意が必要です。
一方、労災の休業補償には特別支給金という制度があります(労災から被災者に対する「お見舞い金」というような意味合いのものです。)。休業日額の2割分が支給されることになりますが、この特別支給金は、相手方との交渉とは関係なしに支給を受けられるものです(もらったからといって、最後の示談で既払金として差し引かれません。)。

【注意!】
勤務先から有給休暇が支給されている場合、労災から休業保障は支給されません。

通常の給与だけでなく、長期連続欠勤となったため、賞与が減額となりました。この賞与減額分について、被害者は、勤務先に書類を作成してもらい、相手方任意保険会社から支給を受けることになりました。

 

当法律事務所の無料相談

被害者は、通院リハビリを続けておられましたが、この時点でまだ職場復帰ができていなかったこともあり、もし治らなかった場合、どのように金銭的に補償(法的に正しくは、「賠償」と言いますが。)されるのかが心配で不安となり、事故から約2ヶ月半後、当法律事務所の無料相談にお越しになりました。

無料相談で、被害者は、過失割合のこと、後遺障害等級のこと、損害賠償のことが気になっておられましたので、弁護士からは今後の流れをご説明しました。

弁護士からは、事故状況や骨折部の画像がどのようになっているのかなどが気になりました。

弁護士費用特約を契約されていない方でしたが、症状固定直前にご依頼いただくことになり、それまで継続相談にお越しいただくことになりました。

 

過失割合

弁護士の無料相談にお越しになったときには、まだ過失割合の詰めた話ができていない状態であり、物損も未解決の状態でした。
継続相談の際、相手方任意保険会社から、相手90%、被害者10%の過失という提案があったとのことでした。事故状況を検討すると90対10は妥当かと思われました。
物損については先に合意されることになりました。

 

労災も自賠責も後遺障害10級が認定されました

事故から9カ月で症状固定となりました。

当事務所弁護士は症状固定直前にご依頼をお受けすることになりました。

骨折部位には結局プレートとスクリューは体内から抜かないことになりました。

直前に注意点を弁護士と確認したうえで、後遺障害診断を受けられました。

後遺障害診断書は労災用と自賠責用の2種類が作成されました。
いずれも、右肩関節(患側)の外転運動が、左(健側)の2分の1に満たない数字になっていました。

まずは、労災保険から後遺障害等級の申請をしていただき、右肩関節可動域の制限(2分の1以下の制限)で10級が認定されました。

その後、自賠責保険に後遺障害等級申請をし、こちらも後遺障害10級10号(右肩関節可動域が2分の1以下に制限された後遺障害です)が認定されました。

 

弁護士による示談交渉代理

※以下、いずれも千円未満の数字は省略しております。

こちらから相手方任意保険に対し908万円の追加請求をしました。

休業損害は追加分を
後遺障害逸失利益は事故前年の年収の27%分に平均余命の2分の1の数字で
傷害慰謝料は177万円で
後遺障害慰謝料は530万円で
それぞれ計算し、これをこちらの過失10%を考慮した金額で請求しました。

結果、900万円ジャストの支払を受ける合意ができました。
こちらからの最終請求額とほぼ同程度の金額での解決です。

被害者は、肩や腕を常時使う職業でしたが、事故による後遺障害が残ったために、勤務先を辞めなければならなくなり、収入が激減しましたので、この点もきちんと主張していきました。

弁護士受任後、上記900万円以外に自賠責保険から461万円の支払いを受けました。

それ以外に被害者は以下のとおりの支払を受けました。

・事故直後に相手方任意保険会社から仮で支払われた金額… 30万円
・最終示談前に支払われた賞与減額分         … 15万円
・労災からの休業補償                …140万円
・労災後遺障害10級認定による一時金        …260万円
・休業補償の特別支給金               … 46万円
・労災後遺障害10級認定による特別支給金      … 88万円

これらを全部合わせると、1940万円になります。

被害者が受けた損害に見合った支払いを受けたと評価できるケースです。