肩関節脱臼骨折後遺障害10級10号腕神経叢損傷後遺障害12級13号で併合9級が認定されたケース

(令和6年10月20日原稿作成)

 

交通事故受傷状況

被害者(40代女性)はバイクに乗り、信号のある十字路交差点を赤信号で停車後、青になって発進し、そのまま直進しようとしたら、左から四輪車が赤信号で直進進入してきました。被害者は衝突をさけるために急ブレーキをかけましたが、バイクもろもと転倒、滑走し、ケガをしました。

 

非接触事故、過失割合はどうなる

 

本件は被害者側青信号、相手方側赤信号であり、別冊凡例タイムズ38号の【160】図により、基本過失割合は被害者側ゼロです。

 

ただし、本件は、寸前で衝突を避けることができ、結局、相手方四輪が被害者バイクに接触しませんでした。この非接触事故がどうなるかが一応問題になります。

 

もっとも、相手方四輪は明らかに赤信号で十字路交差点に進入したうえ、被害者バイクの直進ラインにかかるところまで進行しており、被害者バイクの進路をさまたげた状態になっており、被害者が急ブレーキをかけるのもやむなしというケースでした。

 

したがって、被害者基本過失ゼロを変更する事情はないということになります。

 

加害者側任意保険会社もこちらの過失ゼロを最後まで争いませんでした。

 

 

 

救急搬送

 

被害者は病院に救急搬送され、画像検査の結果、以下のとおりと診断されました。

●右上腕骨大結節骨折

●肩関節脱臼
(転院先の病院では、上記2つを肩関節脱臼骨折として把握して治療が進められました。特に問題があることではありません。)

●右の肋骨を2本骨折しました

 

本来、入院するべきケガなのですが、ご家族の事情があって自宅に帰らざるを得ず、結局入院はなしということになりました。

 

 

■当事務所弁護士受任

事故直後から、ご紹介によりご相談をお受けし、当法律事務所がご依頼をお受けすることになりました。

 

 

 

 

神経伝導検査検査の実施により腕神経叢(わんしんけいそう)損傷の診断

 

被害者は、右肩から手にかけての痛み、しびれを生じ、肩関節の運動制限もありました(肩の可動域制限はかなりありました。)。救急搬送先の病院が遠方であったことから、近くの病院に転院することになりました。

 

 

転院先の病院では、初診月の翌月に、神経伝導検査が行われることになりました。

右上肢の痛みとしびれの症状があり、担当医の先生が神経の損傷をうたがわれたためだと思われます。

検査の結果、右の腋窩神経(えきか神経)の伝達が遅くなっていると指摘され、腕神経叢損傷の傷病名が追加されました。

 

 

右肩についてはMRI検査も実施されました。

 

 

その後も治療リハビリを続けても症状の改善にとぼしく、担当医の先生からは、経過で撮った画像上、折れた右肩の骨の一部に石灰化像が出てきたと指摘されました。肩の外転運動をするときにひっかかりが発生するおそれがあるとも言われたとのことでした。

 

 

結局、交通事故から約1年2ヶ月経過後に症状固定となりました。

 

 

 

 

 

後遺障害診断書の記載

 

整形外科担当医の先生は、後遺障害診断書にこと細かに記載されました。

 

■後遺障害診断書の記載

●他覚症状および検査結果欄

電気生理学検査で右腋窩神経の振幅は左に対し半減しており伝導速度も遅延あり、右筋皮神経は振幅では左とほぼ同じで伝導速度ではやや遅延あり

単純レントゲン像で右肩肩峰下に石灰化像の陰影あり大結節に不整像を認める(これらの異常については図を書いて示されていました。)

 

●肩関節可動域測定(以下は他動値です。)

※他動とは、検査をする人が関節を動かすことです。これに対し、自動とは本人自身が関節を動かすことです。後遺障害等級の審査では原則として他動の数値で判断していきます。

屈曲 右140度 左180度
伸展 右 30度 左 50度
外転 右 90度 左180度
内転 右  0度 左  0度

※内旋、外旋の値は省略いたします。

 

 

 

関節の可動域制限(関節機能障害)で後遺障害等級が認定されるには

 

まず、関節の可動域が制限されるような医学的原因がなければ、いくら数値が健側(受傷していない側)に比べて2分の1や4分の3に制限されていても、自賠責保険は後遺障害等級を認定してきません。

 

本件では右肩関節部分が脱臼骨折となりました。そして、後遺障害診断書によれば、上腕骨大結節に不整像があり、肩峰(けんぽう)下に石灰化像があるとのことです。上腕骨は肩関節を構成する部分であり、骨がきれいにくっついていなければ(不整)、肩を上げるときにひっかかりを生じて可動域制限が発生するおそれがあると考えることが可能です。

また、肩峰の下は、肩を上げるときに動きがある部分ですので、石灰化像のひっかかりで可動域制限が発生するおそれがあると考えることが可能になります。

ですので、本件では、右肩関節の可動域制限の医学的原因があると考えることができると思われます。

 

 

次に可動域の数値ですが、主要運動の数値(屈曲運動の数値又は外転運動と内転運動の合計値)のうちいずれか一つでも、患側(受傷側)が健側(受傷していない側)の4分の3以下に制限されてれば後遺障害12級(上肢の場合12級6号、下肢の場合12級7号)が、2分の1以下に制限されていれば後遺障害10級(上肢の場合10級10号、下肢の場合10級11号)の認定条件を満たすことになります。

本件では、右の外転・内転の合計値(90度)は、左のそれ(180度)に比べて2分の1以下に制限されていることになります(「以下」とは、その数字を含みます。)。
したがって、後遺障害10級10号の認定が見込まれるケースということになります。

 

当法律事務所は、その他の必要資料もそろえ、自賠責保険へ後遺障害等級認定の申し立てをしました。

 

 

 

 

後遺障害等級認定結果…併合9級

 

審査の結果は以下のとおりです。

 

■右肩関節脱臼骨折に伴う右肩関節の機能障害について

その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されていることから1上肢の3大関節中の1関節(=肩、ひじ、手首の関節のうちの一つという意味です。)の機能に著しい障害を残すものとして後遺障害10級10号に該当する

 

■「右腕神経叢損傷」との傷病名のもと、右肩・右肘・右手関節の痛み、右肩から右手にかけてのしびれの症状について

受傷から約1ヶ月半経過後のMRI画像上、腋窩神経部に輝度変化が窺われ、神経生理検査結果において、右腋窩神経の伝導速度が低下していること等をふまえると、本件事故による右腕神経叢損傷に起因して右上肢症状が残存したものと認められ、他覚的に神経系統の障害が証明されるものととらえられることから局部に頑固な神経症状を残すものとして後遺障害12級13号に該当する

 

 

 

後遺障害10級と12級とは「併合」という処理がされ、重い方の等級が一つ繰り上がります。ですので、9級になり、「併合9級」という呼び方になります。

担当整形外科医の先生が、当初から的確な検査をしていただいたことが、このような後遺障害認定につながったといえます。

 

この後遺障害9級が認定されたことにより、自賠責保険から 616万円 の支払いがありました。

 

 

 

 

 

最終示談で追加で2088万円の支払を受ける

 

最終は示談成立で終了しました。

追加で 2088万円 の支払を受けることができました。

上記616万円とあわせて、弁護士受任後 2704万円 を獲得することができました。

 

 

 

 

交通事故で骨折を受傷された方は弁護士金田に相談を

 

当法律事務所では、交通事故で骨折を受傷された方のご依頼をたくさん受けて来ており、後遺障害等級認定経験もたくさんあります。

 

当法律事務所ホームページの解決事例をご覧いただければ、たくさんの、異なる種類の後遺障害等級事案を取り扱ってきたことはおわかりいただけると存じます。

 

交通事故で骨折を受傷した被害者の方は、ぜひ、当法律事務所にご相談ください。