交通事故50代後半男性 脛骨高原骨折・半月板損傷 関節機能障害 後遺障害12級7号認定ケース 1216万円の賠償金獲得
(令和7年2月9日原稿作成)
脛骨高原骨折、脛骨近位端骨折、脛骨プラトー骨折
膝(ひざ)の関節面を骨折した場合、上記のような傷病名として確定診断をされることになります。
バイクや自転車に乗っていて交通事故に遭い、転倒したとき、ひざを打つことが多く、ひざの骨折をすることはよくあります。
当法律事務所でも、脛骨高原骨折を受傷した交通事故被害者から受任したケースは数多くありますし、現在でも数件受任中の事件があります。このような数多い取り扱い経験から、以下のとおりの弁護活動を行いました。
交通事故の発生、入通院の経過
バイクに乗っていた被害者は、車との交通事故にあいました。
非接触事故だったのですが、車の方に全面的に過失がある事故状況であり、加害者は刑事処分(略式罰金)を受けました。
本件では被害者の過失ゼロで物損も人損も解決できました。
この事故により被害者は転倒し、病院に救急搬送され、画像検査の結果、以下のとおりの診断を受けました。
●左脛骨高原骨折(けいこつこうげんこっせつ:ひざの関節の骨折です。)
●左外側半月板損傷(骨折した側のひざ半月板です。)
骨折の程度が大きかったので、そのまま入院し、手術が行われることになりました。
半月板も縫合手術が行われました。
骨折した骨がくっついていくことを促すために(骨癒合促進のために)、超音波骨折治療器も使用されることになりました。
被害者は3ヶ月間入院され、退院後は別の病院でリハビリテーションが実施されるとともに、入院先の病院で定期的に受診するという治療の流れになりました。
このような治療を続けるも症状が残り、治療終了段階にきました。
当法律事務所へのご連絡、弁護士受任
被害者は定期的に当事務所のホームページをご覧いただいていたとのことで、治療終了となりこれから後遺障害診断書となる段階になり、当事務所にお問い合わせをいただき、無料相談にお越しになりました。
当法律事務所弁護士が事故状況、治療経過をお聞きしたところ、以下のことがわかりました。
●左ひざから下に入っているプレートとボルトは抜かないことになったとのことです。
●ご相談を受けた前の月に左ひざのCT検査が行われ、左ひざ関節の可動域の測定も行われ、ご相談をお受けした月に、担当医の先生が異動になることもあり、後遺障害診断書を持っていく段階にあるということでした。
●左ひざは曲がりにくくなっており、伸展運動をしても膝はまっすぐまで伸ばすことができない状態となっているとのことでした。
→本来、膝の伸展運動(ひざをつま先の方向に向かって伸ばす運動のこと)は0度になりますが、この状態では-(マイナス)何度という状態になります。
●本件の物損問題はすでに合意ができ終了していました。
弁護士費用特約の適用があるとのこともあり、当法律事務所がご依頼をお受けすることになりました。
脛骨高原骨折の後遺障害診断作成の際に注意するべき点を被害者に伝える
次の動きは 後遺障害診断の最終診察 です。
お会いした際に 被害者から自覚症状を細かく聞き取りをし、メモにまとめ、診察の際にお伝えいただく ことをお願いしました。
あとは、脛骨高原骨折で特有の注意事項がいくつかあります ので、これを主治医の先生にご確認いただきたいとお伝えしました。
後遺障害診断の日、最後にレントゲン検査が行われるとのことでしたので、後遺障害診断書と一緒に画像CD-Rの交付を申し出ていただきたいとお伝えしました。
ご依頼をいただいた際、初期に撮影された画像のCD-Rをお持ちでしたので、これをお預かりし、弁護士が画像を確認しました。
以下は本件事故当日に撮られた右ひざ・右下肢のレントゲン画像です。
脛骨という長い骨がほぼ縦方向ななめにはっきりと折れていることがわかります。膝の関節面がはっきりと陥没していることもわかります。
※本件事故当日、右ひざ・右下肢のCTも撮影されていましたが、これを見るとなおはっきり骨折の状態がわかりました。
この骨折の状態ですと、ひざの関節面に何らかの変形が残りそうだという予測を立てることになります。そうすると、痛みが残った場合には、後遺障害12級13号を意識 していくことになりますし、
膝関節の可動域が制限されていますと、後遺障害10級11号や12級7号が認定される可能性 があることになります。
症状固定の前の月に撮影されたひざのCT画像
以下のとおりでした。一見してひざの関節面の骨が陥没、欠損している ことがわかります。
※実は、本件のひざの骨折部分にはくっついていないと思われる部分がありました。この場合、偽関節(ぎかんせつ)になっていないかどうかを確認する必要があります。偽関節ですと、後遺障害8級又は後遺障害7級が認定されることになります。
しかし、骨折した部分には骨癒合が得られている(くっついている)部分がありましたので、本件では偽関節の認定はなさそうという見通しを立てました。
後遺障害診断書の記載内容
以下の表の黒字部分…本件で実際に主治医の先生が記載された内容です。
以下の表の赤字部分…弁護士による説明です。
この後遺障害診断書の内容ですと、左膝関節が右膝関節の4分の3以下に制限されておりますし、 症状固定の前月に撮影されたCTを見ると左膝関節面に器質的損傷も認められる でしょうから、膝関節機能障害で12級7号が認定される可能性が高いケースといえます。
膝の痛み(=疼痛)についてはこの12級7号に含めての評価となると考えられます。
後遺障害等級認定結果…後遺障害12級7号
左膝関節の可動域が健側(右膝関節)に比べて4分の3以下に制限されていることから、1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すものとして後遺障害12級7号に該当する と判断されました。
※左下肢の短縮障害について
後遺障害診断書を見ると、左下肢は右下肢に比べて1.5センチメートル短縮した内容になっています。
この点、後遺障害等級認定結果では以下のとおり判断されました。
画像上、左脛骨の短縮は認められないものの、左膝関節の可動域に伸展制限が認められており(=ひざをつま先の方向に向かって伸ばす運動をしてもまっすぐの状態にならないこと)、これにより左下肢は健側(右下肢)と比較して「1センチメートル以上の短縮が生じたもの」と捉えられることから後遺障害13級8号に該当するものと認められるが、認定基準上、「1の後遺障害が観察の方法によっては、障害等級表上の2以上の等級に該当すると考えられる場合があるが、これは、その1の身体障害を複数の観点(複数の系列)で評価しているものにすぎないものであることから、この場合は、いずれか上位の等級をもって、当該障害の等級とする」とされている ことから、この短縮障害はより上位の等級である後遺障害12級7号に含めての評価 となりました。
※左膝の疼痛について
左膝関節機能障害と通常派生する関係にある後遺障害と捉えられることから、後遺障害12級7号に含めての評価となりました。
示談成立により解決
後遺障害12級が認定されたことで、自賠責保険から 224万円 の支払いを受けることができました。
被害者とご相談のうえ、今後は最終示談の方向に入ることになりました。
追加で加害者側任意保険会社に対し、1131万円(以下、1万円未満省略いたします。)の追加請求をし、結果、992万円 の支払いを受ける合意ができました。
以下、主な費目の金額を挙げます
●入院付添費…3万円
●休業損害…265万円(うち254万円は示談前に支払い済みでした。)
●入通院慰謝料(傷害慰謝料)…233万円
●後遺障害逸失利益675万円、後遺障害慰謝料280万円(うち、224万円は自賠責保険から支払い済みです。)
弁護士受任後、被害者は合計 1216万円 の賠償金を得ることができました。
ひとこと
骨折の後遺障害はとても難しい問題が多くあります。
弁護士が交通事故で骨折を受傷したケースを数多く取り扱っていなかったり、後遺障害等級の見通しを立てるための画像確認ができないと、思わぬ方向にいくおそれがあります。
交通事故で骨折を受傷された被害者の方は、できるだけ早い段階で、等法律事務所にお問い合わせをいただければと思います。
執筆者
