バイク事故で肩甲骨骨折 肩鎖関節脱臼 治療期間180日で通院計15日 後遺障害12級5号認定ケース
(令和6年10月20日原稿作成)
交通事故にあい、ケガをして症状が続いているときに心得ておきたいこと
●通院を面倒と思わずにきちんと通うようにしましょう。特に、医師から理学療法(リハビリテーション)の指示が出ている場合、リハビリテーションにはきちんと通うようにするべきです。
●自分の体のどの部位に痛みがあるのか、どんな痛みがあるのかについて、担当医の先生に正しく伝わっているのかどうかを確認しておいた方がいいです。
●骨折した場合、時が経過し、折れた骨の状態がどのような状態になっているのかについて、診察で担当医の先生に確認した方がいいです(もちろん、担当医の先生からご指摘いただくケースの方が多いとは思いますが。)。
以下は、被害者自身がうまく伝えることができなかったり、病院から言われたことが十分に理解できなかったりなどでコミュニケ-ションがうまくとれず、治療期間を通じて苦労されたケースですが、何とか後遺障害12級が認定されました。
経緯
被害者(50代女性)は、原付バイクに乗車中、四輪車から衝突を受け、転倒するという交通事故にあいました。
被害者は事故後すぐに病院に救急搬送され、レントゲン検査を受けたところ、左肩甲骨が骨折していると診断されました。
もちろん、交通事故で転倒して骨折したのです。
治療ですが、手術は行われないことになり、3ヶ月ほど固定をすることになりました。
ほどなくして理学療法(リハビリテーション)の指示が担当医の先生から出され、当初、リハビリをしていましたが、病院側と十分にコミュニケーションがとれず、リハビリテーションの回数が減り、通院が少なくなってしまいました。
■通院状況
以下のとおりでした。
事故月の通院日数(その月の中旬の事故でした)…3日
事故翌月の通院日数…7日
その翌月の通院日数…2日
その翌月の通院日数…1日
その翌月の通院日数…1日
その翌々月の通院日数…1日
以上のとおり、通院実日数は15日です。
通院期間は180日でした。
相手方任意保険会社から治療費は180日までしか支払われないと言われ、このような通院期間になったとのことでした。
当法律事務所の無料相談、受任
被害者の状況をご家族が心配され、当法律事務所のお問い合わせいただきました。
被害者はご家族と一緒に無料相談にお越しになりました。
弁護士金田は、事故状況、被害者が肩甲骨骨折を負ったこと、上記のとおりの通院状況、相手方任意保険会社が180日で治療費の支払いを打ち切ってきたことをお聞きしました。
そのほかに以下の事実関係があったことがわかりました。
●過失割合が解決していない。相手方任意保険会社からこちらの過失は4割あると言われて納得していない。人損はもちろん、物損も解決していないということです。
●左肩の痛みがずっと残っている 左腕も上がりにくい(左肩の可動域については、病院側が否定的な見解であったことが後にわかりました。)
弁護士費用特約がついているとのこともあり、当法律事務所がご依頼をお受けすることになりました。
方針
事故状況をお聞きしたところ、さすがにこちらの過失4割は大きすぎると合理的に考えられるケースでした。
過失割合に関してこちらと相手の主張には開きがあることになるので、いますぐ物損の話を進めていくのは難しく、ケガの損害と一緒に進めていかざるを得ないという見通しを立てました。
ケガについては、事故後の骨折と関係すると思われる症状が残っているので、後遺障害等級の申請を考えていくことになります。
もし、後遺障害等級が認定された場合、本件では、請求できる損害費目があと2つ増え、しかもそれら費目の金額ウエイトが大きくなります。
後遺障害の結果がでないと損害総額を算定できないので、最終示談前に後遺障害申請をするということになります。
しかし、骨折で手術もなく、保存療法で通院期間が180日と6ヶ月きっかりにとどまっており、のべ15日の通院しかない(症状からして本来もっと通院が必要だったケースです。)状況では、骨折の状態も大事に至っていないであろう、なので後遺障害等級に該当しないであろうという判断が下る可能性が高いかな… と考えられました。
被害者がたには、「後遺障害等級認定の見通しはかなり厳しいですが、申し立てをしないと等級が認定される確率は0%に確定してしまいますし、申し立てをして認定されなくても今の状況がマイナスになることはなさそうですので、前に進みましょうか?」と言わざるを得ない状況でした。
この時点での手持ちの資料では、後遺障害等級認定は、ほぼ絶望的な状況かと思っていました。
被害者がたには、後遺障害診断の診察予約を入れていただくことをお伝えし、当法律事務所は、相手方任意保険会社に受任通知をし、診断書・診療報酬明細書の送付を求めました。
診断書・診療報酬明細書に何か記載があればという思いでした。
診断書・診療報酬明細書の記載
相手方任意保険会社から取り寄せた診断書・診療報酬明細書を取り寄せたところ、検査所見に以下の記載がありました。
○年○月○日(←事故から約3ヶ月後の日です。)XP(レントゲン検査のことです)著変なし 75%程度の亜脱臼
この記載を見て、弁護士金田は、どの部分に亜脱臼があるのかどうかはこの記載だけからはわからないが、骨折した部位と関係があるかもしれないので、この点は担当医の先生に確認する必要があるか… と思いました。
後遺障害診断書の記載
被害者には通院先病院の診察予約を入れていただき、ご家族も一緒について行っていただくことになりました。
弁護士金田からは、以下のことをしました。
●左肩の痛みなどの自覚症状をきちんと診察でお伝えいただくことをアドバイスしました
●診断書・診療報酬明細書に記載されていた「75%程度の亜脱臼」のこと等について病院宛に連絡文書をお送りすることにしました
診察があり、肩の可動域の測定も実施された後、後遺障害診断書が発行されました。
【後遺障害診断書の記載】
●傷病名欄
左肩甲骨骨折
左肩鎖関節脱臼
●自覚症状
上肢挙上時の痛み
●他覚症状および検査結果欄
徒手筋力検査(MMT)…肩関節につき左に少し筋力低下がある数値になっていました。
肩関節の可動域制限なし
肩鎖関節亜脱臼残存
●肩関節可動域
外転につき、他動右180度 左130度という記載になっていました(その他の運動の数値については省略いたします。)。
亜脱臼とは、肩鎖関節であったことがわかりました。
肩鎖関節(けんさかんせつ)とは、鎖骨(さこつ)と肩甲骨との間にある関節のことです。
この後遺障害診断書をはじめとする資料一式を自賠責保険会社に提出し、後遺障害等級認定の申請を行いました。
結果…後遺障害12級5号が認定されました
左肩鎖関節脱臼後の左鎖骨の変形障害については、提出の画像から、裸体となったとき、変形が明らかにわかる程度のものと捉えられることから、「鎖骨に著しい変形を残すもの」として後遺障害12級5号に該当すると判断されました。
左肩の可動域制限については、後遺障害診断書に肩関節の可動域制限なしと記載されていること、画像から窺われる可動状況もふまえれば、後遺障害診断書の関節機能障害欄に記載されているような高度の可動域制限をきたす客観的な所見に乏しいとのことで、等級認定とはなりませんでした。
交通事故紛争処理センターで解決
後遺障害12級が認定され、被害者は最終示談に進むというご意向でしたので、最終示談に進みましたが、まとまりませんでした。
被害者と相談のうえ、交通事故紛争処理センターに申し立てることになりました。
結果、344万円(千円以下省略)の支払いを受けるあっせんが成立しました。
後遺障害12級が認定されたことによる自賠責保険からの224万円の支払いとあわせ、ケガの損害だけで、弁護士受任後568万円 を獲得できました。
過失割合については、結局、被害者15%、相手方85%で合意することになりました。物損もこれに基づいて処理できました。
ひとこと
最初の無料相談の段階では後遺障害等級が認定されるのは無理かな… と考えざるを得ないケースでした。
しかし、このような初期状況であっても、医学的所見があることがわかれば、後遺障害等級認定に進んでいくということはあり得ます。
あきらめないでがんばることはとても大事だといえるケースです。
ただし、もっと早く当法律事務所の無料相談にお越しいただいていれば、もっと何かできたことがあったと考えています。
特に交通事故の損害賠償や後遺障害の問題は、できるだけ早めに、くわしい弁護士にご相談いただくことがとても重要です。