腰部痛 自賠責非該当も裁判では後遺障害14級の和解で解決したケース
被害者
被害者は事故当時20代後半の男性でした。
交通事故発生状況
被害者は、知人の方が運転するバイクの後部座席に乗っていたところ(もちろん、二人乗りが可能なバイクです)、自家用車がそのバイクに衝突し、被害者はバイクもとろも転倒して負傷したという交通事故でした。
交通事故後、被害者は、病院に救急搬送されました。
被害者は後部に乗車していただけの事故ですので、損害賠償との関係では被害者の過失はゼロになります。
被害者の受傷状況、通院治療状況
被害者は、交通事故後、体の色々な部位に痛みが出て、腰にも痛みが出ました。
救急搬送先の病院でCTを撮影されたところ、仙骨骨折と診断されました。
結局、入院はなく、次の日から整形外科医院に通院されました。
この整形外科医院では、仙骨骨折とは言い難いというご見解でした。
この整形外科医院では、頚椎捻挫、腰椎捻挫、擦過創などの傷病名で診断されていました。
被害者には、くびの痛みや手のしびれもありました。この手のしびれも主治医の先生にうまく伝わっていなかったようで、医証上は途中から訴えられている旨の記載になっていました。
被害者はこの整形外科医院で通院を継続しました。
当法律事務所弁護士が受任しました
症状固定がまもなく近づいてくるという時期に被害者は当法律事務所の無料相談にお越しになりました。
弁護士は、事故状況、通院治療の状況などをお聞きしましたが、くびも腰もMRI検査はまだ受けておられませんでした。主治医の先生からはMRIのことは何も言われていなかったようです。
被害者には、くびや腰の痛み、手のしびれといった症状がありましたので、頚椎(けいつい)や腰椎(ようつい)の椎間板に異常があるかどうかを確認する必要があります。椎間板の状態を見るためにはMRIにより確認していく必要があります。
弁護士は、被害者に対し、すぐに主治医の先生にMRI検査の相談をされた方がよいとお伝えしました。結果、被害者は、すぐに主治医の先生にご相談され、他の病院でくびと腰のMRI検査を受けることになりました。
そして、当法律事務所弁護士がご依頼をお受けすることになりました。
後遺障害の申請
MRI検査のCD-Rを被害者からお預かりし、確認すると、くび(頚椎)についてはそれほど異常と思える所見は正直見当たりませんでした。ただ、腰(腰椎)については、ある部位が弁護士も今まで見たことのないような形状になっているように見えました(椎間板が後方に押しているような形状はありました)。
症状固定日の通院には弁護士も同行しました。
主治医の先生に腰の画像についてお聞きしましたが、外傷関係の所見には乏しいというご見解でした。
後遺障害の申請は、弁護士が代理して自賠責保険会社に提出しましたが、非該当の結果でした。
異議申立て
被害者には、くび、手、腰の症状が続くため、症状固定後も通院を継続されました。このように症状が継続していながらも、後遺障害の等級認定結果が非該当だったことに対しては不服を申し立てたいというのが被害者のご意向でした。
弁護士から見ても、このケースは少なくとも腰痛については後遺障害14級が認定されてもおかしくないと思いました。
そこで、後遺障害等級の異議申し立てをすることになりました。
被害者は症状固定後も通院を継続していたので、この点も主張して異議申し立てをしましたが、結果は初回同様に非該当でした。
「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」という医証に[初診時から終診までの推移]という欄があるのですが、その欄の[ 軽減 ]という文字に丸がされており、症状が軽くなっているので、将来的に回復が困難な障害であるとは認めがたいという判断理由でした。
●「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」という書面
自賠責保険損害調査事務所が、後遺障害等級の判断のために、必要に応じて各医療機関に対し、この書類を送付して回答を求めることがあります。
この書類には、自覚症状の推移について、頚部痛、腰部痛、上肢しびれ、下肢しびれといった項目があらかじめ記載されており、初診時にこれらの症状があったかなかったか、終診時(症状固定時)にこれらの症状があったかなかったかを書く欄があり、さらに、各症状があるとして、[初診時から終診までの推移]という欄があり、そこには、[ 消失 軽減 不変 増悪 ]という文字があり、いずれかに丸をするような形式になっています。
ここで、[ 軽減 ] に丸があれば、後遺障害等級が認定されない可能性が高まります(ただし、例外がないわけではありませんが)。
※ この書類と対になっているものとして、「神経学的所見の推移について」という書面もあるのですが、こちらは必要に応じて当法律事務所の相談でご説明させていただきます。
弁護士は、再び被害者と医院に同行し、主治医の先生に対し、この記載のことをお聞きしましたところ、初診時に比べたら治療を行っているので軽くなっているというのが正しい評価になるが、被害者の症状はまだ続いているので、今後もしばらくは続くものと考えられるとのことでした。
この主治医の先生のご意見をもとに再度異議申し立てをしましたが、結果は変わりませんでした。
訴訟(裁判提起)
被害者も弁護士も、このままではあきらめきれないとの気持ちでした。
そこで、裁判を提起することにしました。
裁判では、協力医の先生に意見書の作成を打診し、ご作成いただきました。
その意見書では、被害者の腰椎の形態に異常があり(これは事故前から存在した形態です。)、腰椎椎間板ヘルニアもあることで、腰痛が長期にわたり持続しているので、特に腰痛については後遺障害14級に相応する症状の残存があると考える旨述べられていました。
裁判は、結局、和解の方向になり、結果、裁判所から後遺障害14級を前提とするも、交通事故前から存在した被害者の腰椎の形態が症状に関係しているということで5%の素因減額をするという金額案(最終支払額 320万円)が出されました(金額は1万円以下省略しております。)。
主な費目は以下のとおりです。
・後遺障害逸失利益は、賃金センサスの平均収入額の3分の2の額が5年間5%喪失したという計算に基づく金額
・後遺障害慰謝料は110万円
・傷害慰謝料は症状固定日まで7ヶ月通院期間(この間90日余りの通院)で124万円
結局、この和解案で合意に至りました。
自賠責の判断であれば、後遺障害関係損害はゼロでしたが、被害者の方もあきらめずにがんばって、何とか上記解決に至りました。