手の親指の関節脱臼骨折 膝内側側副靱帯損傷 後遺障害9級 弁護士受任後3916万円獲得

(令和6年2月25日原稿作成)

 

はじめに

 

被害者(事故当時20代後半男性給与所得者)は125ccバイクに乗り、交差点を直進進行しようとしたところ、対向車線からトレーラーが信号無視をして右折し、被害者のバイクに衝突しました。

 

被害者は路上に転倒して病院に救急搬送されました。

10対0で被害者の過失ゼロの事故です。

 

手の親指の脱臼骨折、ひざ靭帯損傷の受傷

 

被害者は、交通事故により、手の親指(母指)の骨折、ひざの下の骨の開口骨折、ひざの靭帯(じんたい)の損傷、股関節付近の骨折などを受傷しました。

 

被害者は、救急搬送先の病院で、母指CM関節脱臼骨折、腓骨(ひこつ)開放骨折、骨盤骨折 膝内側側副靱帯損傷などの診断を受けました。

 

 

CM関節(手根中手関節)…母指(親指)の第1中手骨と大菱形骨との間にある関節のことです。

CM関節から親指先へはまだMP関節(指とてのひらとの境目の関節のことです。)とIP関節(親指先に一番近い関節のことです。)があります。

 

骨折した親指と腓骨は手術が行われました。

 

手の親指は、キルシュナーワイヤーで固定し、6週後に抜去されました。。

 

ひざの受傷については装具が処方され、装着することになりました。

 

その後、被害者はリハビリを続けるも、痛み、親指やひざの関節の可動域制限が残りました。

 

 

 

当法律事務所の無料相談

 

主治医の先生からもこれ以上は改善が見込めないということで後遺障害診断が行われ、後遺障害診断書が作成されました。

 

作成された後遺障害診断書の内容で大丈夫かどうかと不安になった被害者は当法律事務所に無料相談にお越しになりました。

 

相談後、弁護士金田がご依頼を受け、今後の手続をすすめることになりました。

 

 

後遺障害診断書の記載

 

■自覚症状(ここでは省略いたします。)

 

■他覚所見欄

ひざの関節MRI…内側側副靱帯に著明な腫脹、断裂あり

 

■関節可動域測定欄

 

ひざ 患側(受傷した側) 屈曲80度 伸展0度 健側(受傷していない側)屈曲125度 伸展0度

※屈曲とはひざをかかと方向に曲げる運動で、伸展とはひざをつま先方向に曲げる運動のことです。

 

母指(手の親指)IP関節 患側(受傷した側) 屈曲60度 伸展0度 健側(受傷していない側)屈曲70度 伸展70度 

※手の親指には「橈側外転」、「掌側外転」という運動もあり、本件でもこの測定がされていましたが、本件では直接後遺障害等級に影響しなかったので
ここでは省略いたします。
 
※屈曲とは親指の指紋のある方に曲げる運動のことで、伸展とは親指の爪がある方向に曲げる運動のことです。

 

 

 

本件は後遺障害診断書の何に注意するべきだったのか?

 

 

1、親指のIP関節の可動域制限について

 

IP関節の可動域は患側(合計60度)が健側(合計140度)の2分の1以下に制限されており、数字上は後遺障害10級7号の条件を満たします。

 

しかし、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会により決定された関節可動域の測定要領に記載されている手の母指IP関節伸展運動の参考可動域は10度になっています。ところが、被害者の健側(受傷していない側)の伸展運動は参考可動域角度を大幅に上回る数値になっており、これが自賠責保険により信用されるかどうかという心配がありました。

 

 

2、親指のIP関節の可動域制限について

 

脱臼骨折をしたCMという関節は、可動域制限が生じているIP関節よりも2つ手首側の関節になります。つまり、脱臼骨折と可動域制限の関係があるのかという心配点はありました。

 

 

3、ひざの関節について

 

リハビリ先の整形外科の自賠責様式診断書には、(患側の)ひざ屈曲運動が、「100度に制限されている」といった記載があったり、「105度可能」といった記載があったりしました。治療終了時期までに100度の可動域が得られている記載があり、この数値が採用されると、健側の可動域125度の4分の3は93.75度となり、患側の可動域は健側の4分の3以下に制限されていないので後遺障害非該当になります。

 

 

【これら気になった点に関し弁護士金田が行ったこと】

 

■1の点

被害者に聞いてみると、後遺障害診断時に実際に測定された可動域の数値が上記のとおりだということでした。

 

もともと、母指IP関節がやわらかく、伸展はとても曲がるとのことでした。

 

この点に関し、弁護士金田は、実際に、被害者の母指の 健側 IP関節の伸展運動を確認し、本当に70度の可動域が得られていることを確認しました。そこで、被害者の母指健側IP関節の伸展運動について、実際に角度計を用いて(当法律事務所にはステンレス製のゴニオメーターがあります。)70度の可動域が得られてている写真を撮影し、これを自賠責保険に提出しました。

 

 

■2の点

この点に関し、弁護士金田は協力医の先生に相談をしました。脱臼骨折した手の親指にはワイヤーのほか、シーネで固定されており、この固定に伴い関節が拘縮したものと考えられるとのご意見でした。

 

リハビリ先の整形外科の自賠責様式診断書には(患側の)手の母指の拘縮を認めたとの記載もありました。 

 

この点については、特に追加で何かを行うことはしませんでした。

 

 

■3の点

弁護士金田は被害者に、リハビリ先の整形外科では可動域はいつ測定されていたのかをお聞きしました。すると、被害者は、可動域はリハビリをした直後にしか測っていないとのことでした(後遺障害診断のときの測定も、リハビリ直後の測定でした。)。

 

リハビリ直後はリハビリの効果により一時的に関節可動域が改善しますが、一定期間が経過するとこの効果はなくなります。しかし、関節の可動域の数値とは、本来、リハビリの効果の及んでいない数値が後遺障害等級との関係で問題にされるべきと考えており、自賠責保険はこのような考え方に沿って運用されていることを弁護士金田は実際に経験しております。

 

そうすると、リハビリ直後に測定した数値は被害者の関節可動域を正確に評価されたものではないことになります。

 

この点に関し、後遺障害診断書を作成していただいたリハビリ先の医師の先生に、後遺障害診断書に、経過中の測定はリハビリ直後に行っている旨の追記をいただきました。

 

なお、リハビリ先の整形外科の自賠責様式診断書には患側のひざの拘縮が残存している旨の記載がありました。

 

 

 

【当法律事務所が工夫をしていること】

 

昨今、自賠責保険の後遺障害等級認定はかなり厳しくなっているのを肌で感じています。

 

当法律事務所では、自賠責保険がどういった点を厳しく審査しているのかの傾向を細かく分析し、等級の申請をする前にできることはすべてつくすようにしています。

 

ついでに申し上げますと、仮に裁判になったときでも、相手方からの反論主張を想定した動きを、当法律事務所では、この段階でもしております。

 

本件も、こんなところまで注意しなければならないのかと思われるかもしれませんが、交通事故でケガをした被害者が法律面から救われるには、ここまでしないとだめなのです。

 

 

 

 

後遺障害等級認定結果…後遺障害併合9級が認定されました

 

●手の母指IP関節の可動域制限(機能障害)…後遺障害10級7号が認定されました。

 

●膝内側側副靭帯損傷に伴う膝関節の可動域制限(機能障害)…後遺障害12級7号が認定されました。

 

上の2つの等級は併合処理といい、一番重い等級(10級)を一つ繰り上げることになり、併合9級という処理になります。

 

自賠責保険においても、上で述べたポイントをきちんと確認してもらい、判断を出してもらったものと考えています。

 

この認定により、自賠責保険から被害者に 616万円 の支払いがありました。

 

 

 

 

最終の示談交渉

 

相手保険会社と最終の示談交渉を行いました。

 

上記616万円のほかに、追加で 3300万円 の支払いをうける合意ができました。

 

 

■後遺障害逸失利益は、事故前年の年収をもとに、35%分の労働能力が67歳まで失われるという計算に基づく金額でした。

最大値の金額です。

■入通院慰謝料は270万円、後遺障害慰謝料は670万円でした。

 

 

 

ひとこと

 

重度後遺障害が残るケースでは、等級の申請をする前に、いろんな角度から確認しなければならないことがあります。

 

担当医の先生に後遺障害診断書を作成していただいたらそのまま提出するというかんたんなものではないというのが当法律事務所の意見です。

 

当法律事務所では、経験、自賠責保険の傾向もふまえ、後遺障害等級の申請前にできる努力は尽くします。

 

交通事故で重傷を負った被害者の方はごえんりょなく当事務所の無料相談におこしください。