80代女性 大腿骨頚部骨折 後遺障害加重6級 1201万円を獲得
交通事故、受傷
本件事故の被害者(80代女性家事従事者)は、歩行中、後退してきた自家用車に衝突され転倒するという交通事故にあいました。
この交通事故により、被害者は左大腿骨頚部骨折を受傷し、病院に救急搬送され、長期入院をすることになりました。
※大腿骨頚部(だいたいこつけいぶ)とは、股関節とひざとの間にある骨(大腿骨)のうち、股関節に近いはしの部分のことをいいます。
大腿骨頚部骨折の治療(大腿骨人工骨頭置換術の実施)
被害者の受傷状況はひどく、股関節には人工骨頭を入れ(挿入置換)なければならなくなり、その手術(大腿骨人工骨頭置換術)が行われました。
被害者は長期入院中もリハビリを行い、退院後もリハビリを継続しました。
既存障害
この交通事故以前に被害者の両膝には人工関節が入っていました。
当法律事務所の無料相談
当法律事務所へは、症状固定となり、病院の最終診察日が決まっていた段階でお問い合わせをいただき、弁護士の無料相談を利用されました。
交通事故から7ヶ月弱で症状固定となりました。
※最終診察日とは、症状固定日という意味で使用しております。症状固定日以降も被害者の受傷部位は医師の先生に診てもらう必要がありますので、症状固定日以降も通院を継続されています。
弁護士受任、病院同行
無料相談を経て、当法律事務所弁護士にご依頼いただくことになりました。
弁護士は、後遺障害等級認定の申し立て手続からたずさわることになりました。
大腿骨頚部骨折という受傷であり、なおかつ下肢にも関節の可動域に制限があり、いくつか自覚症状があったこともあり、弁護士は病院同行が必要と感じましたので、症状固定日に被害者の方と病院に同行をすることになりました。
主治医の先生に被害者の自覚症状をきちんとお伝えすることができるかどうかは意外と難しいことであり大切なことですので、まずこの点の確認をいたしました。
また、今回の事故が原因で股関節に人工骨頭を入れる手術をすることなったので、後遺障害診断書にどのような手術を実施したのかを記載していただけるのかどうかもお聞きしました。実施した手術については後遺障害診断書に記載していただきました。
そのほか、股関節の可動域のお話をお聞きしたり、下肢の外見上の症状がより大きな傷病につながっていないか等についても確認したりしました。
実施された手術を後遺障害診断書に記載していただくことの意味
大腿骨頚部骨折で股関節に人工骨頭を入れる手術をした場合、入れた側の股関節の可動域が十分にとれていても(健側の股関節の2分の1を超える可動域がとれているという意味でお伝えしております。)、「関節の機能に著しい障害を残すもの」として後遺障害10級11号の認定要件を満たすことになります。
ですので、交通事故により受傷し、大腿骨人工骨頭置換術が実施されたという事実はきちんと後遺障害診断書に記載していただくべきであると当法律事務所弁護士は考えています。
後遺障害等級認定結果
当法律事務所が自賠責保険会社宛てに後遺障害等級認定申請を行いました。
結果が出るまでの期間は通常考えているより長いものでした。
しかし、後遺障害併合6級(ただし既存障害9級の加重障害という評価です)が認定されました。
本件の後遺障害等級認定判断…同一系列障害、併合
既存障害9級の加重障害で併合6級と判断されるに至った経緯は以下のとおりです。
1、左股関節部分(左大腿骨頚部骨折)…8級7号が認定されました。
本件事故により左股関節に人工骨頭が挿入置換されていた点に加え、後遺障害診断書記載の股関節可動域が問題になります。股関節可動域測定値は以下のとおりです(以下の値は他動値です。自動値は省略いたします。)。
右 | 左 | |
屈曲 | 60度 | 50度 |
伸展 | 0度 | 0度 |
外転 | 30度 | 20度 |
内転 | 15度 | 15度 |
外旋 | 25度 | 20度 |
内旋 | 20度 | 15度 |
股関節に人工骨頭を入れた場合、入れた方の股関節の可動域がそうでない側(健側)に比べて2分の1以下に制限されているかどうかを見ていく必要があります。なぜなら、股関節に人工骨頭を入れることにより2分の1以下に制限されていれば後遺障害8級7号(関節の用を廃したもの)の認定要件を満たすことになりますが、人工骨頭を入れた側の股関節が健側の2分の1を超える可動域がとれていれば、後遺障害10級11号(関節の機能に著しい障害を残すもの)の認定要件を満たすにとどまるからです。
そうすると、本件では、人工骨頭を入れた側(左)を、右側の測定値と比べると、2分の1以下には制限されていません。
しかし、股関節の参考可動域角度は、以下のとおりとされています。
屈曲 | 125度 |
伸展 | 15度 |
外転 | 45度 |
内転 | 20度 |
外旋 | 45度 |
内旋 | 45度 |
すると、本件では受傷していない右側の運動、特に屈曲運動の可動域も参考可動域角度に比べて半分以下に制限されていることになります。
この点、被害者の右股関節の可動域が制限されている医学的原因が、左股関節や両ひざに人工関節を入れて筋力低下や廃用がおこったことによるものと捉えられ、左股関節の可動域制限は、参考可動域角度と比較することになりました。
結果、主要運動である左の屈曲・伸展の運動(合計値50度)が参考可動域角度(合計値140度)の2分の1以下に制限されていることになり、後遺障害8級7号が認定されました。
2、左ひざ関節部分…10級11号の既存障害があると判断されました。
※ 既存障害とは、かんたんにいいますと、交通事故前に既にあった障害のことです。
この交通事故以前に、被害者の左膝には人工関節が入っていましたので、この点で10級11号の既存障害があると判断されました(左ひざ関節の可動域は参考可動域角度の2分の1以下には制限されていませんでした。)。
3、上記1と2の評価…同一系列のために併合により7級
上記1左股関節と上記2左ひざ関節の各障害は、同一系列の障害になります。
同一系列の障害は 併合 という処理をして、この系列の等級評価をすることになります。
上記1は8級、上記2は10級ですので、併合処理により、重い方の8級が一つ繰り上がり、7級相当の評価になります。
4、右股関節部分(左大腿骨頚部骨折)…10級11号が認定されました。
右股関節については、交通事故前に障害があったわけではありませんが、交通事故により直接受傷したものでもありませんでした。
しかし、右股関節の可動域制限は、1で記載したとおり左股関節や両ひざに人工関節を入れて筋力低下や廃用がおこったことが医学的原因であり、左大腿骨頸部骨折後の廃用に伴うものと捉えられました。
そして、上記1のとおり、左股関節にも可動域制限があるため、右股関節においても参考可動域角度と比較することになり、右股関節屈曲・伸展運動が合計60度、参考可動域角度が合計140度となり、2分の1以下に制限されていることから後遺障害10級11号が認定されました。
5、右ひざ関節部分…10級11号の既存障害があると判断されました。
この交通事故以前に、被害者の右膝には人工関節が入っていましたので、この点で10級11号の既存障害があると判断されました(左ひざ関節の可動域は参考可動域角度の2分の1以下には制限されていませんでした。)。
6、上記1と2の評価…同一系列のために併合により9級
上記4右股関節と上記5右ひざ関節の各障害は、同一系列の障害になり、上記3と同様 併合 処理をして、この系列の等級評価をすることになります。
上記4も5も10級ですので、併合処理により、10級が一つ繰り上がり、9級相当の評価になります。
7、上記3の系列と上記6の系列の評価処理…併合により6級
上記3の系列(7級)と上記6の系列(9級)は併合処理をすることになります。つまり、7級と9級の併合は重い方である7級が一つ繰り上がり、併合6級の評価になります。
8、既存障害全体の評価…併合により9級
交通事故前の既存障害は、上記2と5のそれぞれ10級です。これらも併合処理することになり、10級が一つ繰り上がり、9級の評価になります。
9、結論
後遺障害併合6級(ただし既存障害9級の加重障害)ということになりました。
この後遺障害等級が認定されたことで、自賠責保険から501万円の支払いを受けました。
最終示談交渉
最終の示談交渉も当法律事務所弁護士が代理して行いました。
股関節に人工骨頭置換術が行われた場合、損害賠償問題で弁護士が気をつけなければならない点があるのですが、本件では被害者の年齢から問題になりそうにありませんでした。
示談交渉は、被害者側から金額を計算して請求することにし、追加で762万円(それまでに支払いを受けた金額を除いた金額です。)の請求をいたしました。
示談交渉の結果、治療費(すべて示談前に支払い済みです)やその他の示談前に支払いを受けた額を除き、700万円 の支払いを受ける合意ができました。
被害者は家族のために家事に従事している方でしたので、家事の休業損害や、家事の後遺障害逸失利益も問題になりました。
ただし、80代という年齢は、家事労働の年収や日額収入を低いめに見られる可能性があります(家事労働の収入は賃金センサスの統計に基づいた主張をすることになります。)。
しかし、本件は、左大腿骨頚部骨折を受傷し、人工骨頭が入れられるとともに、右股関節も影響を受けて後遺障害が残ったことにより、立っていること自体に支障が生じている状況でしたので、日常や家事への具体的な支障を説明しました。これに加えて、家事労働収入を考えるうえで非常に重要なご家族の状況に関する事実がありましたので、この点も説明することにしました。
結果、休業損害も後遺障害逸失利益も当方が主張する301万円という年収に基づく計算での合意ができました。
後遺障害逸失利益(労働能力喪失期間は平均余命の2分の1の年数を請求しました)、傷害慰謝料(治療期間7か月で212万円を請求しました。)、そして後遺障害慰謝料は当方から請求した金額どおりの合意ができました。
また、付添看護料についても、特に医師の先生による書面での指摘はありませんでしたが、一定金額の支払いを受けることができました。
弁護士がご依頼をお受けした後に支払いを受けた金額は、自賠責保険からの501万円を加え、1201万円 になりました。
当法律事務所弁護士は
交通事故で骨折を受傷した後遺障害案件をこれまで多数のご依頼をお受けし、多数解決してきました。この当法律事務所ホームページをごらんいただければ、たくさんの交通事故、骨折、後遺障害の事例が掲載されていることがおわかりいただけると思います。これらはすべて当法律事務所弁護士が解決してきたものです。
交通事故で骨折を受傷して苦しんでおられる被害者を少しでも救済するために当法律事務所弁護士が精一杯いろんな活動を行っていきたいと思います。
※以上の金額は1万円未満省略しております。
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