手首(橈骨遠位端)骨折 手関節機能障害12級6号 1598万円を獲得

(令和元年12月20日更新)

当事者・交通事故の発生

二輪車に乗っていた被害者(事故時30代男性、公務員)は、四輪車との衝突事故にあいました。 
被害者は病院に救急搬送されました。

 

受傷

この交通事故で、被害者は、右橈骨遠位端骨折や右膝内障などを受傷しました(頭部外傷もありました。)。

●橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)
ひじから手首まである長い骨のうち、手首付近の親指側の骨折をいいます。  
バイクで転倒したときに発生することが多いです。

症状…骨折部位の痛み、しびれや手首の関節の可動域制限が生じる可能性があります。

●橈骨遠位端骨折は、折れた骨がどう良化するかに注意する。

 手術をすることが多いケガですが、本件被害者は、手術をせずに保存療法となったようです。

骨折部分の痛み、しびれや手首の関節可動域は、折れた骨がどう良化するかにかかっています。
骨折した骨がちゃんとくっつくのかどうか、骨がくっついたとしてきちんとくっついているのかどうかが、後遺障害が残るかどうかのポイントになってきます。

【橈骨遠位端骨折で認定可能性のある後遺障害等級】
・骨の端の骨折部分が全くくっつかない状態(ゆ合不全や偽関節といいます)で、後遺障害12級8号

 ・骨折していない手首関節と比べて、2分の1以下に制限されていれば後遺障害10級10号、4分の3以下に制限されていれば後遺障害12級6号(ただし、そのような可動域制限があるといえるほど骨折部分の物理的損傷が認められる必要があります。)

 ・骨折部分の痛みが残ったら後遺障害14級9号

※痛みの一つ上のグレードで後遺障害12級13号がありますが、当法律事務所の多数の経験上、これが認定され得るケースは、上の可動域制限の後遺障害が認められるケースが多く、痛みの後遺障害は可動域制限の後遺障害等級に含めての評価となることが多いです。

 当法律事務所では、初回の相談の段階から上記の点に関し、細かいアドバイスをいたします。

 

当事務所弁護士による関与

ある程度治療が進んだ段階(具体的には事故後4か月目)で、当事務所の無料相談におこしになりました。
被害者は、今後のことがどうかるのかがわからず、ご不安な様子でした。

弁護士金田は、事故状況、どのようにして受傷したかをまずお聞きし、次に、治療経過、各症状を確認しました。
被害者には、骨折部分の痛み、右手首の可動域が十分でないことがわかりましたので、今後もこれらの症状が残るおそれがあり、最終の診察で後遺障害診断を受けることになると思われると被害者に伝えました。

被害者のこの事故には弁護士費用特約の適用があったこともあり、当事務所がご依頼をお受けしました。

ご依頼をお受けした後まもなく、主治医の先生(救急搬送された病院から近所の整形外科クリニックに転院されていました。)から治療の終わりを告げられ、結局、事故から6か月余りで症状固定となりました。

●症状固定直前の弁護士金田からのアドバイス…CT検査の実施

主治医から症状固定を言われたので、それまでに弁護士金田から被害者に対し、主治医にCT検査をお願いいただくようお伝えしました(弁護士面談に消極的な整形外科クリニックでしたので。)。

・CT検査をお願いした理由
受傷直後以降は、レントゲンしか撮影されていなかったことと、症状固定直前になって骨折部分の骨の様子がどうなっているのかの情報が全くなかったことが主な理由です。

骨折後の痛みや関節の可動域制限といった後遺障害は、骨折部分の骨の状態が良好にくっついているのかどうかが重要になります。骨の状態を見るには、画像を確認する必要があります。

 ・レントゲンではなくなぜCTなのか?
レントゲンで見ることができるのは、平面的な映像になります。確かに、レントゲンでも正面からだけでなく、横や後ろから撮影することもできますが、CTは、コンピューター処理をするため、3D立体像を360度から確認することができ、さらに、骨の表面だけでなく内部の状態も確認することができるからです。

 骨の状態を見るためのCT検査は、まだ骨のくっつきが完成していない時期や、骨がくっつくかどうかわからないといえるような時期にとっても正確な判断ができませんので、検査を実施していただく時期を考えていく必要があります。

 弁護士金田は、CT画像もCD-Rでお持ちいただければ内容を確認いたします。

 通院先整形外科クリニックにはCTがありませんでしたので、紹介状により他院でCT検査が実施されました。

 

後遺障害診断書の記載

症状固定となり後遺障害診断となりました。主治医の先生が作成された後遺障害診断書は以下のとおりでした。

傷病 名:右橈骨遠位端骨折(他の傷病は省略いたします。)

自覚症状:右手関節の鈍痛、可動域制限、右手の握力低下

他覚症状:CT橈骨遠位端 背側に骨折後の骨片あり

手関節:掌屈(右50度、左80度)背屈(右60度、左80度)

前 腕:回内、回外いずれも左右90度

※上記数値はいずれも他動値です。

今後の見通し:今後も右手関節の可動域制限が残存する見込み

CT検査によると、骨折部分には上記異常所見が見られるとのことでした。
当法律事務所が代理して、自賠責保険に後遺障害等級の申し立てを行いました。

 

後遺症(後遺障害)等級認定結果

橈骨遠位端骨折後の手関節機能障害(可動域の制限です)が残ったとして、後遺障害等級12級6号 が認定されました。 
膝の症状も神経症状14級が認定され、併合12級となりました。

最近の後遺障害等級の判断で、自賠責保険は、関節の可動域制限の後遺障害等級を非常に厳しく判断する傾向があります。
単に、可動域が2分の1や4分に3に制限されているだけでは認定せず、そのような可動域制限が生じているといえるだけ医学的所見があるかどうかを画像などを見て判断してきます。
この意味で、症状固定期直前にCTをとったことは重要な意味も持つものといえます。

 

示談交渉(損害賠償請求)の決裂

こちらからの請求と、相手任意保険会社の見解には少し隔たりがあり、示談はまとまりませんでした。

 

交通事故紛争処理センターの利用

示談交渉が決裂したので、被害者とご相談をし、交通事故紛争処理センターを利用することにしました。 
交通事故紛争処理センターでは、あっせん案が出て合意に至りました。

当方にも過失割合が多少認められたのですが、最終、1374万円(それまで支払い済みの金額を除いたものです。)の支払いを受ける合意ができました。

被害者請求による後遺障害等級認定申請により12級が認定されたことで、相手自賠責保険会社から 224万円 の支払いを受けていましたので、当事務所弁護士加入後 1598万円 の支払いを受けたことになります。

・後遺障害逸失利益…1479万円
労働能力喪失率は14%、労働能力喪失期間は67歳まで認定されました。
傷害慰謝料…124万円 
こちらから請求した金額全額認められました。 

後遺障害慰謝料…280万円
こちらから請求した金額全額認められました。

 

ひとこと

本件で、当事務所弁護士は、手関節機能障害のポイントとなる画像検査を意識して後遺障害等級認定申請にのぞみ、最終の損害賠償交渉でも、後遺障害逸失利益や傷害慰謝料の点でも、きめ細かい主張・立証を行いました。

交通事故の損害賠償問題を解決するには、弁護士も医学的知識を持って弁護活動にのぞむことが極めて大事です。医学的知識にくわしい弁護士かどうかは、初回の相談ではっきりとわかります。
弁護士選びはよくお考えいただくことが大切です。

 ※上記金額は千円未満省略しております。