腰椎横突起骨折 癒合不全(偽関節) 腰部痛 後遺障害12級13号が認定されたケース

(令和6年10月14日原稿作成)

 

腰椎横突起(ようついおうとっき)とは

 

脊椎(せきつい)は、くびの骨、胸の骨、腰の骨、仙骨、尾椎から構成されています。

このうち腰の骨は腰椎(ようつい)といい、5つの骨があります。

 

腰椎横突起とは、この5つの腰の骨一つ一つにつき、左右横に出っぱっている部分をいいます。

 

以下、当法律事務所がご依頼を受けたケースを紹介します。

 

 

 

交通事故状況、通院治療状況

 

被害者(40代女性:パートタイム労働者兼家事労働者)は、横断歩道を青信号に従い歩行していたら、曲がってきた四輪車にはねられる交通事故にあいました。

被害者はこの四輪車のボンネットにはね上げられて地面に落下しました。

 

 

■この交通事故の過失割合は?

被害者側に過失はありません。加害者の任意保険会社も被害者側に過失なしであることを当然として対応していました。

被害者は病院に救急搬送され、レントゲンとCTが撮られましたが、ここでは骨折の診断はされませんでした。被害者は腰の痛みなどを訴えていましたが、入院もなく、近くのクリニックに紹介状が出され、そこへ転院することになりました。

 

 

被害者は転院先のクリニックでも腰の痛みなどを訴え、クリニックで搬送先の病院から提供された画像を確認されたところ、第3腰椎横突起が骨折していたことがわかりました。

 

クリニックでは後に第2腰椎横突起、第4腰椎横突起にも骨折があることが判明しました。

 

 

 

●本件は交通事故で骨折を受傷したかどうか(因果関係)が争われるおそれがあったところ、結局、争われませんでした

 

本件では救急搬送先の病院では腰椎横突起骨折とは診断されておらず、転院先のクリニックで骨折が判明しました。

このような場合、骨折が交通事故によって生じたものかどうかという因果関係に争いが出てくるおそれがあります。

 

ただし、歩行中に車に衝突されてボンネットにはね上げられたうえ、地面に落下したという事故状況からして、体の骨のどこかに骨折があってもおかしくはないといえます。まず、このような高エネルギー外傷を受けた事故状況であったということは加害者側任意保険会社も理解していたようでした。

さらに、転院先のクリニックが骨折を確認したのが交通事故からわずか5日後であったこと救急搬送直後に撮った画像によって骨折を発見できたことで、骨折が交通事故によって生じたものであること(因果関係)について、無用な争いが生じなくてすみました。

 

 

クリニックでは腰部固定帯が処方され、被害者には投薬治療や理学療法が開始され、継続されました。しかし、被害者の腰部痛はずっと続きました。

 

 

 

当法律事務所受任

 

事故から約8ヶ月半ほど経過し、被害者は、主治医の先生から症状固定時期であると言われました。

また、主治医の先生から、腰椎横突起は偽関節(ぎかんせつ)になっている部分があると言われたとのことでした。

 

 

被害者は、後遺障害等級のことや、今後の示談のことがどのように動くのかを調べるため、色々なホームページを確認され、当法律事務所のホームページもご覧になり、お問い合わせをいただきました。

 

弁護士金田は、事故状況、自覚症状、治療経過、主治医の先生から指摘があったことをお聞きし、すぐに後遺障害手続にとりかかる必要があることをお伝えしました。

 

相談後、当法律事務所がご依頼をお受けすることになりました。

 

 

 

 

本件の重要なポイント ~後遺障害診断に入る直前の注意点~

 

腰椎横突起は偽関節(ぎかんせつ)になっている部分があるという主治医の先生ご指摘の意味について、弁護士金田は被害者に、

 

「おそらく、折れた横突起が、もとあった腰椎と全く結合していない状態になって遊離している部分があるのだと思います。そして、この部分は、固定帯で固定し、かつ、治療を続けても、結局、遊離した状態になったままなのではないかと思われます。このような状態がある場合にはきちんと自賠責保険に後遺障害等級の審査で確認してもらう必要があります。
そのためには画像が必要になりますが、レントゲンで完全に判明する保証がないので、すぐ主治医の先生と腰椎のCT検査の実施について相談してみてください。」

 

とお伝えしました。

 

主治医の先生はCT検査を施行されました。

 

骨が折れ、折れた部分が一部でもくっついていない状態があることを「偽関節(ぎかんせつ)」といいます。このような場合、自賠責保険の後遺障害等級で正当に判断していただく必要があります。そのためには画像検査が必要になりますが、CT検査が有用です。

 

後に被害者からお送りいただいた画像CD-Rで、この症状固定直前期に撮影された腰椎CT像を弁護士金田が確認しましたところ、第3腰椎の左横突起が偽関節の状態になっていました。

 

 

 

 

後遺障害診断書の記載

 

主治医の先生にご作成いただきました後遺障害診断書には以下の記載がありました。

★自覚症状…腰の疼痛(その他の部位については省略いたします。)

★他覚症状および検査結果欄…L3(第3腰椎のことです)は偽関節

 

 

当法律事務所が代理し、自賠責保険に対し後遺障害等級認定の申し立てをしました。

弁護士金田は、CT像で第3左腰椎横突起骨折がはっきりわかる部分をキャプチャーし、説明を加えて印刷したものも提出しておきました。

 

■大事なこと!

腰椎横突起が骨折後に偽関節の状態になっただけでは、自賠責保険の後遺障害等級は認定されません。そのような認定条件はないからです。

本件被害者は事故直後から腰の痛みに悩んでいました。腰の痛みの自覚症状欄にきちんと記載していただくことが重要になります。

腰の痛みの立証材料として腰椎横突起の偽関節を訴えていくことになります。

 

 

 

 

後遺障害等級認定結果…後遺障害12級13号の認定

 

後遺障害等級認定結果は、腰の痛みにつき後遺障害12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)が認定されました。

■認定理由

腰の痛みの症状については、提出の腰椎画像上、横突起骨折の癒合不全が認められ、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えられることから、局部に頑固な神経症状を残すものとして後遺障害12級13号に該当すると判断されました。

 

後遺障害12級が認定されたことで、自賠責保険から被害者に対し、224万円の支払いがありました。

 

 

 

 

 

最終の示談交渉

 

つぎに相手方任意保険会社と最終の示談交渉を行いました。

結果、追加で 819万円(千円以下省略いたします。)の支払を受ける合意ができ、示談が成立しました。

 

■休業損害

被害者は、交通事故後パートタイム労働が全くできずに離職を余儀なくされたほか、家族への家事労働への支障も生じていたので、143万円(千円以下省略いたします。)の休業損害を請求しましたところ、全額認定の話ができました。

 

 

 

 

ひとこと

 

弁護士受任後、被害者は 合計 1043万円 の支払を受けることができました。

 

もし、症状固定直前のCT検査がなければ腰椎横突起の偽関節を自賠責保険が認定しないおそれもあったケースです。

さらに、症状固定日までの通院総日数が70日に至っていなかったという事情があったので、腰椎横突起の偽関節を自賠責保険が認定しなければ、後遺障害非該当になる可能性もあったケースです。

当法律事務所が交通事故後遺障害等級のことに精通していたことで、できることを尽くしたうえで後遺障害等級の申し立てができ、結果、症状に見合った等級が認定されたというケースです。

腰椎横突起骨折というあまりなじみのないケガであっても、当法律事務所はご依頼をいただいた場合、できることを尽くします。