くび腰の痛み異議申立で後遺障害併合14級認定 請求額どおりの示談解決

被害者、事故状況、受傷

 
京都市にお住まいの給与所得者で、交通事故時40代男性の方が被害者でした。

被害者は、夜に信号のない横断歩道上を歩行していたところ、右折してきた四輪車にはねられ、転倒しました。

被害者は近くの病院に救急搬送されました。幸い、被害者は、頭部や脳に異常はなく、骨折や脱臼もありませんでしたが、くび、肩、腰、手首や膝の捻挫・打撲を受傷しました。

入院まではしなかったのですが、その後、自宅近くの病院に転院し、リハビリ通院を続けるとともに内服の投薬を受けました。

骨折や脱臼はなかったとはいえ、被害者の症状は重く、結局、勤務先を3ヶ月半ほど休業することになりました。

 

  • 当法律事務所弁護士が受任

 
交通事故から2ヶ月ほど経過した後、被害者は当法律事務所の無料相談にお越しになりました。

弁護士は、被害者から、事故状況や自覚症状について、細かくお聞きしました。
被害者は、交通事故でくび、腰、手首、ひざに痛みが出て、ずっと続いているということでした。

また、被害者からは通院先の病院名や治療状況などをお聞きしました。

事故発生から2週間以内に通院先の病院でくびと腰のMRI検査を受けたとのことでした。

当法律事務所弁護士は、治療中からご依頼をお受けすることになりました。

 

  • 弁護士がMRI画像を確認しました

当法律事務所弁護士がご依頼をお受けした時点で一番気になったのはMRI画像に異常がみられるかどうかでした。
ご依頼を受けた後、すぐに被害者の方に病院からMRI画像のCD-Rの交付を受けてもらい、弁護士がお預かりし、確認しました。

すると、くびについては、いくつか変性があったり、椎間板が後方に押していたりするところが見えました。
腰については、くびよりも症状が重そうな感じで、椎間板が後方に押しているところがあったほか、神経が細くなっている部分が見受けられました。

この画像を見て、弁護士は、被害者が訴えている症状は残る可能性が高いと見通しをたてました。

 

  • 治療の終了時期

 
ところが、相手方任意保険会社は、事故から3ヶ月ほど経過したときに医療照会をかけました。

 ● 医療照会とは

 交通事故被害者の治療費を支払う相手方任意保険会社が、被害者の入通院先の医療機関に対し、被害者の症状、治療状況、画像、検査所見、今後の治療の見通しなどについて文書や面談で問い合わせをすることをいいます。

相手方任意保険会社が治療費を負担する際に、被害者に対して同意書の交付を求めます。この同意書は、保険会社が入通院先の医療機関に対し医療照会することを被害者が同意するという意味のものです。

 
医療照会によると、主治医の先生の見解は、特に神経学的検査所見はないということでした。相手方任意保険会社は、これをもとに、事故から4ヶ月から5ヶ月くらいで症状固定であると言い、治療費の打ち切りを求めてきました。

しかし、被害者のくび、腰などの痛みは相変わらず続いていたこと、車にはねられるほどの事故であったこと、MRI画像上くびも腰も異常がうかがえたことから、弁護士はこれらの内容を伝え、症状固定とするにはまだ早いと主張しました。

結局、事故から6ヶ月経過した時点まで相手方任意保険会社が治療費の支払いを負担するということになりました。

 
● 症状固定後の通院治療

 本件の被害者も、ずっと症状が残っているために、症状固定後も自分の金銭負担で通院を継続され、内服の投薬を受けておられました。

交通事故で受傷した場合、加害者側は、原則として症状固定日まで治療費を負担することになりますが、症状が続く被害者は、症状固定後も自分で治療費を負担して通院を継続されることがよくあります。

このように、被害者が症状固定後も自分で金銭負担して、努力して、通院を継続されているという事実は、後遺障害等級が認定されたときの後遺障害逸失利益という損害額に影響してくる可能性があります。

最近、裁判でも、後遺障害逸失利益の検討をする際に、症状固定後に通院をしているのかどうかを気にして確認されることがあります

 

  • 後遺障害診断

 
症状固定となり、後遺障害診断には、症状や所見の確認をしたかったので弁護士は被害者と病院に同行しました。

ところが、できあがった後遺障害診断書を見ると、ほとんど記載がなく、あっても短い言葉で記載されているだけでした。

 

  • 後遺障害等級認定結果

 
後遺障害等級の申請は、弁護士が代理して自賠責保険会社に提出しました。

後遺障害等級申請の際、弁護士は、MRI画像所見のことや、経過で被害者にトリガーポイント注射が実施されていたことについて、文書にして提出しました。

しかし、結果は非該当でした。

 

 異議申立て

 
先ほど申し上げた被害者の症状はずっと続いていました。
この結果について被害者は不服があり、弁護士も本件被害者には後遺障害14級が認定されるべきケースだと考えましたので、ご相談の結果、異議申し立てをすることになりました。

ただ、異議申し立てをするといっても、新たな医学的資料の提出がなければ、結果が変更されることはまず期待できません。

弁護士は、後遺障害非該当と判断された理由から考えて、被害者の症状の経過と症状が一貫していることをきちんと説明して異議申し立てをしていく必要があると考え、その旨被害者にお伝えし、相談し、もう一度一緒に主治医の先生のところへ行くことにし、症状経過について照会文書の作成をお願いすることにしました。

しかし、主治医の先生は、事故後初期に比べて症状固定時は症状が軽くなっているというご見解をきっぱりと述べられました。よく聞くと、事故後の通院でリハビリや投薬治療を行っているのだから、初診時に比べて症状はましにはなっているはずだ、しかし、各痛みは今後も続くと思われるということでした。

この照会文書をもとに再度自賠責保険会社宛てに異議申し立てを行いました。

通院治療の経過で症状が軽くなっているという医師の先生の所見があれば、これは後遺障害非該当の可能性が高くなります。

しかし、弁護士は、異議申立書で、主治医の先生がおっしゃったとおり、リハビリや投薬の治療を受けたのだから初診時に比べたら軽くなっているが、現在でもかなりの痛みが続いているので、今後もこの痛みが続くものと考えられる旨の主張をしました。
弁護士は、被害者が症状固定日以降も自らの負担でリハビリと投薬治療を継続している旨も主張し、その証拠資料も提出しました。

 

  • 異議申立ての結果

 
主治医の先生のご見解が上記のとおりでしたので、弁護士は、見通しは厳しいかと思いました。
しかし、結果は、くびも腰も症状の一貫性が認められ、治療状況や症状経過なども勘案され、いずれも14級9号が認定され、併合14級となりました。

 

示談交渉

 
弁護士は、以下のとおりの内訳で、最終の追加請求を相手方任意保険会社に行いました(本件は、被害者の過失はゼロの事故でした。)。

交通費        4万円
文書代等       2万円
休業損害     144万円
傷害慰謝料    116万円
後遺障害逸失利益 136万円(事故前収入を5年間5%失ったという計算内容です)
後遺障害慰謝料  110万円
         

上記の合計は 512万円になりますが、上記金額は千円以下省略しておりますので、実際には総額514万になります。ここから、後遺障害14級認定による75万円を引き、439万円 の最終追加請求をしました。

結果は、当方の追加請求額どおりで示談合意ができ、解決しました。
これにより、本件は、当法律事務所弁護士加入後、514万 の支払いを受けることができました。

後遺障害14級認定レベルで500万円を超える解決はまれなケースといえます。

本件は、最初からいくつもの壁があり、とても難しいケースでしたが、被害者の方とともに最後まであきらめずに頑張って上記解決に至りました。