交通事故で保険会社から治療費の打ち切りの話があったら
(平成30年12月18日更新)
当法律事務所では、交通事故でケガをされた方の治療費の打ち切りの相談は非常に多いです。このような経験をふまえて、以下述べることは本当に深刻な問題と考えております。お早めに当法律事務所に相談してください。
治療費の打ち切りとは
交通事故で受傷した被害者が通院(入院後の通院も含みます)治療をする場合に相手方任意保険会社が治療費を通院先の医療機関に支払うことを、(任意)一括対応といいます。
ケガをさせた者が損害賠償として支払わなければならない治療費は、原則として症状固定時(かんたんには、治療を続けてもこれ以上改善の見込みがない状態に達した時期のことを言います。)までになります。
ケガが治らず症状が続く場合でも、いつかは症状固定時期がくることになり、そうするとその場合、ケガをさせた者(相手方任意保険会社)の治療費の支払いもいつかは終了時期がくることになります。
実際、交通事故でケガをして通院治療を続けているのにまだ症状が残っているところ、相手保険会社担当から治療費の支払いを打ち切る旨の連絡(治療費の打ち切り)が来ますが、このような場合はどうすればよいのでしょうか。
保険会社から治療費の打ち切りの話があったとき
結論からいえば
まだ治療の必要性があり打ち切りがまだ早いといえる場合には、少なくとも症状固定と考えられる時期まで治療費の支払いを求めて相手任意保険会社と話し合いをする必要があるといえますし(それでも相手任意保険会社が支払の対応をしない場合には別の対策を考える必要があります。)、もう症状固定時期であると考えられる場合には、後遺症(後遺障害)診断・等級認定申請の問題になります(ただし、症状固定後にも症状が残っている等のため自費で健康保険を使って通院される方はおられますし、症状固定後に自費で通院をしてはいけないというものではありません。)。
上でも述べたとおり、損害賠償の対象となる治療費は原則症状固定時までです。ですので、症状固定時期といえるのかどうか、まだ治療の必要性があるのかどうかがポイントになります。
この症状固定時期、治療継続の必要性というものは、医学的な判断・評価であるといえますので、そうすると、主治医の先生の見解を聞くことが大事といえ、
まずは主治医の先生に確認・相談することが大事であるといえます。
※ ただし、この時点ですでに相手任意保険会社がその医療機関に対し医療照会をし、その医療機関が回答書を相手任意保険会社に渡している場合もある点に注意する必要があります。
※ 交通事故後に実際にあった症状が、交通事故当初から主治医の先生に伝わっていないと、相手保険会社から早期打ち切りを求められる可能性もありますので、この点にも注意が必要です。
また、たとえば、以下のような点が重要といえます(一例としてあげておきます。)。
・どのような事故でどこをどう受傷したのか
・症状の内容がどのようなものか
・症状の程度や症状経過はどうなのか
・必要な検査が実施されているのか、実施されているとしてその所見がどうなのか
・事故後の症状が続いているとして後遺症(後遺障害)等級認定を判断するのに必要な期間通院されているかどうか
これらのことなどを考慮して、まだ治療継続の必要性があるのかどうか、もう症 固定時期に来ているといえるのかということになると思われます。
治療費打ち切りの相談は当法律事務所へ
ひとくちに治療費の打ち切りといっても、個々の具体的ケースによって被害者側が取るべき対応が変わってきます。
相手保険会社から打ち切りがやんわりと言われたケースと、いついつまでしか治療費を支払いませんと言われたケースでも対応が変わり得るものです。
治療費の打ち切りの話が出た場合には、急ぎで対応する必要がありますので、できるだけ早めにご連絡・相談いただければと思います。
たとえば、弁護士費用特約の適用がある場合、弁護士が代理してこのような治療費の問題を処理していくこともできます。
もちろん、弁護士費用特約の適用がない場合でも、相談は無料ですので、まず当法律事務所にお越しいただき、そこで、弁護士費用(当法律事務所は完全後払制です)
などをご説明し、ご依頼をいただくかどうかもご相談させていただきます。
治療費の打ち切り事案に関する当法律事務所の解決事例
以下、交通事故から約4ヶ月半後に相手方保険会社から治療費の打ち切りがあるも、その後も通院を継続し、後遺障害14級が認定され、弁護士受任後333万円の支払いを受けたケースをご紹介いたします。
● 被害者、交通事故状況
被害者:30代男性会社員
事故状況:すぐ前を走行していた四輪車が交差点を進行しようとしていたら赤信号となり停車したので、被害者も運転していた2トントラックを続いて停車させたところ、後方から4トンダンプカーが被害者のトラックに追突した。
● 受傷、治療
この追突により、被害者は、くび、腰、足に痛みを、腕に痛みやしびれを感じたために、事故当日救急で病院に通院され、頚椎捻挫、腰椎捻挫と診断されました。
被害者は、その2日後、自宅から近い病院に通院しました。その後も、この病院にてリハビリを行い、内服の投薬を受けました。
※ 被害者が通院されたのは京都市内にある病院です。医院ではなく病院ですが、頚椎捻挫・腰椎捻挫でもリハビリを実施されている病院であり、リハビリには牽引や電気治療のほか、マッサージ療法もプランとしてあるところです。
通院治療を続けても、被害者のくび、腰、足の痛みや腕の痛み・しびれの強さが相当あったので、事故から1ヶ月弱の時点で、通院先の病院にて頚椎のMRI検査が実施されました。
MRI画像については後に当法律事務所弁護士も確認させていただきましたが、 いくつかの部分に変性がうかがえました。
- ● 治療費の打ち切り 被害者は、その後も通院を継続しましたが、事故から3ヶ月になろうというときに相手方任意保険会社
から治療費の打ち切りを言われてきました。被害者はまだ痛みやしびれがあるのに、今治療費を打ち切られたら困ると言ったのですが、保険会社の
担当はあと1ヶ月余りほどしか治療費の支払いができないと言いました。このようなやりとりがあった後、被害者は当法律事務所の無料相談にお越しになりました。無料相談を経て、当法律事務所弁護士が代理することになりました。
弁護士が受任して、相手方任意保険会社と治療費の支払いについて話し合いをしたのですが、相手方任意保険会社はどうしてもこれ以上治療費の支払いができないという態度を変えず、結局治療費は事故から約4ヶ月半後までしか中途では支払われませんでした。
- このような状況のもとで、弁護士は被害者と相談し、腰のMRIについてはまだ実施されていなかっ
たので、(相手方任意保険会社にも連絡し)打ち切り前に通院先の病院で腰椎のMRI検査を実施して
もらうことになりました。 このMRI画像も弁護士が確認したところ、頚椎よりも大きな異常がうかがえました。
このMRI画像所見もふまえて、被害者としては症状がずっと続いているので治療費の打ち切り後も自
費でこの病院に通院することになりました。● 後遺障害診断
治療費の打ち切り後も被害者は通院を継続されましたが、結局症状が改善せず、交通事故から6ヶ月余
り後、後遺障害診断をすることになりました。
主治医の先生に後遺障害診断書をご作成いただき、弁護士が代理して、相手方自賠責保険会社に対し、
後遺障害等級認定の申し立てをしました。
● 後遺障害等級認定結果
くびの痛みや腕の痛みやしびれについて後遺障害14級9号が、
腰の痛みや足の痛みについて後遺障害14級9号が
それぞれ認定されました。
治療期間は6ヶ月余りで通院実日数は101日というケースでした。
後遺障害診断書の記載については、自覚症状はもれなく記載がされており、他覚症状欄はかんたんなMRI画像所見と人体図に痛みやしびれの記載のみで、障害内容の増悪・緩解の見通し欄は一進一退という記載がなされていました。
● 示談交渉
- ※ 以下の金額は千円以下省略しております。
- その後、被害者とのご相談により、弁護士が示談交渉を行いました。
後遺障害14級が認定され、自賠責保険から75万円の支払いを受けましたが、その部分とすでに支払い済みの治療費を除き、258万円の追加請求をすることになりました。打ち切り後の治療費については任意保険会社に対して請求することにしました。
示談は成立しました。
相手方任意保険会社からの回答は、こちらからの請求と千円単位で違いがあるのみで、ほぼこちらの請求全額での合意ができました。自賠責保険からの75万円の支払いもあわせて弁護士受任後333万円の支払いを受けることができました。
後遺障害逸失利益という費目は、被害者の源泉徴収票の年収が5年間で5%失われた計算により金額で、後遺障害慰謝料は110万円で合意ができました(うち75万円は自賠責保険からの支払いになります。)。
傷害慰謝料という費目は119万円で合意ができました。弁護士費用特約の適用がある方でしたので、弁護士報酬や実費は全額弁護士費用特約を契約されている保険会社から支払われ、相手方からの賠償金は全額被害者にお渡しすることができました。
● まとめ
本件は、打ち切り後の治療費の支払いについては被害者が自費で支払った後、最終的に相手方任意保険会社に請求し、結果、全額精算を受けることができたというケースでした。