40代男性 交通事故後の脳挫傷 治療中から受任 高次脳機能障害後遺障害5級 肩腱板損傷後遺障害12級 裁判の和解で解決した事例

(令和6年6月11日原稿作成)

 

交通事故・高次脳機能障害案件の経験の重要性

 

・高次脳機能障害が残ってしまう可能性があるケースは治療中から被害者側も色々と動く必要があります。

 

・交通事故で脳挫傷など頭部を受傷したケースで高次脳機能障害が残るおそれがあるかどうかについて、高次脳機能障害の取扱経験が豊富な弁護士であれば、治療中から想定できます。

 

つまり、高次脳機能障害が残るおそれがある案件は、正当な賠償金を得るために、できるだけ早い段階から、高次脳機能障害の取扱経験が豊富な弁護士に依頼をすることが重要になってきます。

 

金田総合法律事務所では、これまで交通事故で脳挫傷など頭部外傷を受傷された被害者に高次脳機能障害が残存した案件を多数取り扱ってきました。

 

現在でもご依頼をお受けしている進行中の高次脳機能障害案件があります。

 

ご依頼をお受けした高次脳機能障害案件ほとんどは、治療中にお受けしたものです。

 

治療中から必要なことを被害者側にアドバイスをし、きたるべき後遺障害等級の申請の際に万全の準備をしてのぞみます。

これは、法律事務所であれば、どこでもできるというものではありません。

 

以下は、当法律事務所が治療中からご依頼を受け、後遺障害等級認定の申し立てを代理で行い、高次脳機能障害が残り後遺障害5級が認定され(トータルの等級は併合4級になりました。)、 裁判の和解で解決した事例を挙げます。

 

 

事故状況、受傷内容

 

●画像検査で脳挫傷などが判明し、記憶障害に関してリハビリが実施されました。

 

40代男性の被害者(会社員)は、会社帰りの帰宅中、自転車に乗車していたところ、信号のない交差点で交差道路から来たバイクに衝突され、転倒し、負傷しました。

 

被害者は病院へ救急搬送され、画像検査を受け、脳挫傷、外傷性くも膜下血腫、急性硬膜外血腫、頭蓋骨骨折などの診断を受け、頭部は開頭手術(血腫の除去です。)をすることになり、1ヶ月あまりほど入院することになりました。

 

入院中、被害者には、記憶障害があったため、このリハビリテーションが行われおり、退院後も通院でリハビリテーションが行われました。

 

●肩腱板損傷(かたけんばんそんしょう)

 

被害者には肩に痛みや運動制限がありました。ただ、レントゲンやCTでは肩付近の骨折がなく、また、頭部のケガや記憶障害のリハビリに集中していたため、MRI検査の実施が遅れました。

 

事故から3ヶ月後に受けたMRIでは肩腱板損傷と診断されました。

 

※肩には骨だけでなく、腱板というやわらかい組織もありますが、このやわらかい組織はレントゲンやCTでは映らないので、MRI検査で確認する必要があります。

 

肩については当初の病院ではリハビリができないということだったので、紹介状が出され、違う病院の整形外科でリハビリをすることになりました。

 

紹介先の病院で診察、リハビリが開始されましたが、どうも肩の状態が思わしくないため、さらに別の病院(肩の専門医の先生がおられる病院です。)で入院して肩の手術が行われ、退院後、またもとの病院でリハビリが継続されました。

 

関節鏡でも肩腱板の不全断裂が確認されました。

 

●記憶障害については、紹介状により別の医療機関で見ていただくことになりました。高次脳機能障害を専門的に取り扱っておられる精神科医の先生に診ていただくことになりました。

 

●被害者には注意力・集中力の低下もあり、感情を爆発させてコントロールができないといった症状もありました。

 

 

当法律事務所の無料相談、弁護士受任後

 

被害者は今後、どのようにしていったらいいのかを不安に思われ、当法律事務所にお越しいただき、無料相談にお越しになり、弁護士金田が受任することになりました。

受任後、まず、受傷後の意識障害がどうだったのかを確認するため、被害者の同意を得て、定型の書式で搬送先の病院に問い合わせをしました。

 

返ってきた書類を見ると、JCS1けた、GCS13~14点の意識障害があるも、事故後3日で意識清明になった という記載内容でした。

 

※JCS1けた、GCS13~14点といったレベル意識障害については1週間以上続いていることが高次脳機能障害の後遺障害等級を判断する一応の目安とされています。 この意味では医学的書類上の意識障害の継続期間は短いということになります。

※ただし、書類には、意識回復後にも軽度短期記憶障害を認めるという内容の記載もありました。

 

次に、頭部の画像です。転院があったことから被害者はすでに画像のCD-Rをお持ちでした。

これを協力医の先生にもご確認いただきましたところ、MRI検査の中で1種類撮影できていないものがあるとのことでした。慢性期の出血病変の確認にすぐれている種類のMRI検査です。

 

この点、転院先の医師の先生も把握されており、その指示により画像検査が行われました。このMRI検査では、頭頂葉に点状出血が確認できました。

 

神経心理学的検査も行われました。

 

肩については可動域制限と痛みが残り、症状固定となり、後遺障害診断が行われました。

 

記憶障害、注意力・集中力の低下、感情がおされられえないといった症状も残り、その約半年後に後遺障害診断が行われました。

高次脳機能障害の後遺障害診断については2種類の書式を医師の先生に作成していただくことになりました。

 

弁護士金田は、被害者の奥様とお会いし、被害者の日常生活に関して聞き取りをし、日常生活状況報告書を作成していただきました。これは定型の書式があるのですが、別紙をつけて、さらにくわしく書いていただきました。

 

被害者は、結局、事故時に就いていた職業に戻ることはできず、症状固定直前に解雇となってしまいました。

 

後遺障害等級認定結果…併合4級(高次脳機能障害は5級)

 

当法律事務所が代理して、自賠責保険に対し、後遺障害等級認定の申し立てをしました。

結果は以下のとおりでした。

 

●高次脳機能障害…後遺障害5級2号が認定されました。

画像上脳挫傷痕が認められ、受傷当初から意識障害が継続して認められることやその後の症状経過を踏まえると、交通事故に起因する脳外傷による高次脳機能障害が残存しているものととらえられると判断されました。

 

※ 本件では意識障害の継続期間が短かったのですが、上記のとおりの判断が下りました。

 

高次脳機能障害の程度については神経心理学的検査で処理速度の低下、注意能力の障害が認められることや、記憶障害や易怒性の状態から、神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服すことができないものに該当すると判断されました。

 

●肩関節機能障害…後遺障害12級6号が認定されました。

受傷した肩の関節可動域が他方の肩の可動域の4分の3以下に制限されており、これが認定されました。

 

●前のひたいの手術痕が5センチメートル以上残った点…後遺障害9級16号が認定されました。

 

以上の3つの後遺障害は、併合処理といい、一番重い等級である5級を一つ繰り上げることになりますので、併合4級 という認定になりました。

 

 

後遺障害併合4級認定により自賠責保険から 1889万円 の支払いを受けることになりました。

 

 

示談の決裂、裁判の申し立て

 

後遺障害認定後、相手方任意保険会社との示談交渉に入りましたが、最終支払い金額の開きがあまりにも大きいため、示談は決裂し、裁判(訴訟)を申し立てることになりました。

 

裁判では相手方は、後遺障害の等級は自賠責保険が認定したほど高くないことや、過失割合を主に争ってきました。

 

裁判は和解となり、物損も含めて最終で 1420万円 の支払を受ける和解が成立しました。

 

 

この支払とは別に、被害者は、以下の支払いを受けました。

 

・高次脳機能障害が残ってことで障害厚生年金も受給が決定されており、2ヶ月に一度一定額の支給を受け続けることになりました。

 

・示談前に相手方任意保険会社から約80万円の内払いを受けました。

 

・労災保険から休業補償を総額300万円余り支給を受けました(これとは別に休業補償特別支給金も受領されております。)。

 

・労災保険でも後遺障害等級が認定され、定額特別支給金の支払いを受けたほか、障害年金が支給されることになりました(ただし、自賠責保険から後遺障害等級認定による賠償金の支給があったため、一定期間は支給が停止された状態になります。)。

 

 

ひとこと

 

交通事故で高次脳機能障害が残ったケースの損害賠償問題は、上記で述べたことからもおわかりと思いますが、進め方がとても複雑で難しいです。

 

特に、本件は、相手方が裁判でも徹底的に争ってきました。このような場合、高次脳機能障害案件をたくさん取り扱ってきた 被害者側弁護士によるサポートが不可欠であるといえます。