下肢偽関節が認められ非該当から後遺障害7級に 賠償金が87万円から3251万円にアップしたケース
後遺障害非該当が、弁護士受任後の異議申し立てで7級に!
以下は、弁護士金田が、もとは後遺障害非該当でご相談をお受けし、異議申し立てからご依頼をお受けした結果、後遺障害7級が認定され、賠償金もケタが2つ違う金額で解決した交通事故事件です。
後遺障害非該当から異議申し立てで7級が認定されるなんて信じられないと思われるかもしれません。
しかし、実際に弁護士金田が令和元年に事件のご依頼をお受けして令和2年に解決した事件です。
被害者はどんな事故にあったか
被害者(事故時58歳 男性 給与所得者)は、原付バイクに乗り、道路を直進走行中、左側の脇道に止まっていた四輪車が急にバックして道路上に出てきて被害者のバイクに衝突し、被害者はバイクもろとも転倒したという交通事故でした。
被害者は病院に救急搬送されました。
被害者のケガの程度
被害者は、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)という、ひざから下にあるあしの長い骨がありますが、それぞれの骨のひざに近い部分を骨折しました。
被害者は、救急搬送先で入院し、脛骨の手術をすることになりました。
入院は2ヶ月あまり続き、退院後も骨折部位に装具を常につけながらの通院となりました。
●装具について
被害者は、ひざに装具をつけることになりました。
装具は、ふとももからすねわたるもので、金属が入っているものです。
自賠責保険上、これを 硬性補装具 といいます。
被害者が負ったケガに関しては、この硬性補装具がいつも必要な状態かどうかで、認定される後遺障害等級が変わってきます。
当法律事務所無料相談前の状況
・被害者は結局症状が改善しなかったので、後遺障害等級の認定を受けましたが、後遺障害非該当でした。
・この非該当の結果をふまえ、相手方任意保険会社から示談金87万円の提示が出ました。
・被害者は弁護士費用特約のこともご存じありませんでした。
この相手方任意保険会社の提示金額が妥当かどうかを疑問に思われ、当法律事務所にお問い合わせいただき、無料相談にお越しいただくことになりました。
●後遺障害非該当の理由は以下のとおりでした。
提出のひざの画像上、骨折後の骨癒合(こつゆごう)は得られている。
※骨癒合(こつゆごう)が得られたとは、かんたんにいえば、折れた骨がくっついたということです。
装具がないと歩行が難しい、跛行(はこう:正常な歩行ができない状態をいいます。)、ひざの不安定感があるといった訴えも、画像所見から、明らかなひざの動揺性をうらづける客観的な医学的所見が認められない。
(骨折した側のあしの)くるぶし付近のしびれ、痛みなどについては、足首付近の受傷が認められていないので因果関係がない。
当法律事務所の無料相談
当法律事務所におこしいただいた被害者は、正常な歩行ができているとはいえない状況でした。
そして、起立していただいた状態でも骨折した側のひざが外反(がいはん:ひざがX脚になっている状態のことをいいます。)になっていました。
※ 健側のひざは正常な状態でした。
上記のほか、事故状況、骨折の部位、手術の内容、現在もひざに装具を装着していることなどをお聞きしました。
本件は、相手方保任意険会社から提示があった金額が妥当かどうかを検討する前に、後遺障害等級が非該当だったという結果に疑問を持ちました。
つまり、受傷したひざの外見の状態や歩行状態を見ると、後遺障害等級が認定されてもおかしくないと考えました。
しかし、骨折したひざのあたりには不安定感はあるも特に痛みはなく、骨折のない足首あたりに痛みやしびれが続いているとのことでした。
後遺障害等級の異議申し立てをするにも、具体的に何を求めていくのか難しいケースであったといえます。
被害者は、自動車保険はかけているとのことでしたが保険会社名をご存じなかったことと、弁護士費用特約のこともご存じありませんでしたので、これについてご確認いただくことになりました。
その後、被害者が契約されている自動車保険に弁護士費用特約がついていることがわかり、弁護士金田がご依頼をお受けし、異議申し立ての手続から行うことになりました。
お話をお聞きし、後遺障害等級が認定されるべきケースだと考えても、初回で後遺障害非該当となっているケースをひっくり返すことはかんたんではありません。
後遺障害の異議申し立てへ
●弁護士金田が考えたこと
骨折したひざあたりに痛みがなく、ひざ関節の可動域の制限もほぼありませんでした。
しかし、ひざには不安定感があり、外見上、ひざが外反していて、跛行(はこう)がある状態なので、骨折のほかにひざの靱帯(じんたい)が傷み、関節が動揺している可能性があると考えました。
足首あたりの痛みやしびれについては、骨折にともなって神経がいたんでいないかどうかを確認する必要があると考えました。
※ひざのあたりを通る神経には足の指までのびているものがあります。この神経がいたんでいたら、足首あたりの痛みやしびれに影響することはあり得るからです。
初回の等級判断では、骨が折れたところはくっついているとのことでしたが、本当にそうなのかを疑ってみました。
これについては、相手方任意保険会社から自賠責様式の診断書と診療報酬明細書を取り寄せ、特に診療報酬明細書をみました。
弁護士金田が見たかったのは、「どの時期にどんな画像がとられていたのか」です。
これを見て、(被害者の骨折後の状況を的確に把握するという点で)画像の撮影が一つ不足していると思いました。
上記のことを、主治医の先生にお聞きし、ご相談する必要を感じましたが、これらを全て被害者の方のみにお願いするのは難しいかと思いましたので、弁護士金田が被害者と病院に同行することになりました。
●病院へ同行
主治医の先生が大変ご多忙な先生でしたので、あらかじめお聞きしたいことをまとめ、ポイントをしぼり、短時間ですませるよう心がけました。
お話をお聞きすると、あしの神経の損傷はなさそうだとのことでしたので、この点に関しては、それ以上は追い求めませんでした。
ひざのCT撮影についてご相談させていただきました。被ばく量の問題もご考慮されたうえで、撮影をするという方向になりました。
ひざの不安定感については、ストレスレントゲン撮影(かんたんにいいますと、関節の動揺性を確認するための検査のことです)を実施していただくことになりました。
※ 本件の被害者の受傷状況や症状からして、ひざのMRI検査の撮影までは必要ないと考えました。実際にも実施はされていません。
上記のCTやストレスレントゲンの画像、被害者の受傷部位の写真などをそろえ、当法律事務所が代理して後遺障害異議申立てを行いました。
異議申立ての結果→後遺障害7級が認定
脛骨と腓骨の骨折に関して、今回提出した画像も含めて再度検討された結果、脛骨に癒合不全(ゆごうふぜん)を残し、常に硬性補装具を必要とするものと捉えられることから、「1下肢に偽関節(ぎかんせつ)を残し、著しい運動障害を残すもの」として、後遺障害7級10号が認定されました。
※ 膝の不安定性は、脛骨の癒合不全に伴い残ったものと捉えられ、上記の後遺障害7級10号に含めての評価になりました。
足首あたりの痛みやしびれについては、上記の骨折部位や態様などをふまえて、治療状況、症状経過などが考慮され、14級9号が認定されました。
後遺障害7級10号と14級9号を併合処理すると、併合7級になります。
なぜ後遺障害7級が認定されたのか?
偽関節(ぎかんせつ)とは、労災保険や自賠責保険では、癒合不全(ゆごうふぜん)を残すものと説明されています。
わかりやすくいいますと、労災保険や自賠責保険では、骨折した箇所が、骨折後にくっついている部分が全くないこと(=骨折部分の骨の連続性が完全に破綻した状態のこと)を、癒合不全、偽関節ととらえているようです(これは医学上の「偽関節」の定義とは異なりますのでご注意ください。)。
上記の労災保険や自賠責保険の「偽関節」の定義を、杓子定規にあてはめるべきではないと思われるケースも現実にありますが、この点はここではおいておきます。
問題は、この偽関節が残ったのかどうかをレントゲン検査だけでわかるとは言い切れないという点です。
CT画像は、ターゲットをあてた部位の断面を数ミリ単位で作成することができ、骨の状態を立体的に確認することができます。
本件では、骨折の手術直後の時期にCT検査がおこなわれていましたが、それ以降行われた画像検査はレントゲン検査のみでした。
弁護士金田は術後のレントゲン検査では被害者の骨折部位の状態が十分確認できていなかったのではないかと考え、病院同行の際にCT検査の実施を相談しました。
結果、病院同行時に行われたCT画像で、折れた脛骨が、労災保険・自賠責保険が定義する「偽関節」の状態になっていることがわかりました。
治療がほどこされたけれども、結局、骨がくっつかなかったのです。
初回は非該当になったが異議申し立てでなぜ後遺障害7級が認定されたのかといいますと、(あくまで私見ですが)初回の後遺障害の判断では、折れた骨がくっついているかどうかを的確に判断するための画像が不足していたからと思います。
最終示談成立
最終の示談交渉も弁護士金田が代理して行いました。
相手方に対し、最終2294万円の請求をしました。
後遺障害逸失利益という損害については、事故前年の年収を基礎に平均余命の2分の1の期間労働能力が56%失われるという前提で計算しました。
結果、最終で 2200万円 の支払を受ける合意ができ、示談が成立しました。
この2200万円以外に後遺障害7級が認定され、自賠責保険から 1051万円 の支払を受けていましたので、弁護士加入後 3251万円 を獲得したことになります(これら以外に、治療終了までに休業損害154万円や治療費などの既払額がありました。)。
冒頭でも申し上げましたが、最初の保険会社提示額からケタ2つ違う解決になりました。
もし、必要な画像撮影が不足していたという気づきがなければ、被害者にとってはとても不当な結果で終わっていたと思われます。
当法律事務所では、後遺障害問題を解決するに必要な医学的知識をつきつめ、より細かく調べて、交通事故被害者救済にがんばっていきます。