バイクの交通事故 足関節脱臼骨折 可動域制限後遺障害12級7号認定 交通事故紛争処理センターであっせん解決した事例

(令和6年6月18日原稿作成)

 

足関節とは足首の関節のことです

 

 本件は交通事故により足首の関節を脱臼骨折し、後遺障害が認定され、示談がまとまらず、交通事故紛争処理センターにあっせんを申し立て、解決した事例です。

 

交通事故の状況

 

125ccバイクに乗っていた被害者(30代男性会社員)は、信号のある十字路交差点を青信号で直進しようとしたら、対向車線から右折してきた四輪車に衝突されるという交通事故にあいました。

被害者は衝突により転倒し、負傷しました。

 

本件の過失割合はどうなるか?

 

●過失割合とはどうやって決めるか

 

・決め方…事故の当事者(損害保険会社の各担当、依頼を受けていれば弁護士が窓口になる場合も含みます。)が話合いをし、合意ができればその割合で、片方でも拒否してとことんまでいけは、裁判所または交通事故紛争処理センター によって決定されることになります。

 

・何をよりどころにして決めるか…別冊判例タイムズ38号という本があり、この本に基づいて決めていくことになります。ただし、この本にのっていない事故類型もあります。 本件では、別冊判例タイムズ38号の【175】図という図にストレートに該当するケースでした。この図によりますと、基本過失割合は、バイクが15%、四輪車が85%になります。

ただし、この基本割合を修正するべき事情があるかどうかを検討する必要があります。

 

・過失割合をもっとくわしく検討するために…ドライブレコーダーを検討することが考えられます。ただし、バイクにドライブレコーダーを搭載しているケースはまれですので、四輪車側にドライブレコーダーが搭載されていれば、 相手方に対し提供を求め、入手できたら検討していきます。

 

本件では、相手方からドライブレコーダーの提供を受けました。確認したところ、バイクが15%、四輪車が85%を修正するような事情は見当たりませんでした。

 

●物損

物損の交渉は被害者の治療中に進めることになり、こちらのバイクが15%、相手四輪車が85%で解決ができました。

 

 

ケガの状況

 

被害者は救急搬送先の病院で、足関節脱臼骨折と診断され(ほかにも骨折した部位はありましたが、ここでは省略いたします。)、最初は40日あまりの間入院することになりました。

 

足関節には手術が行われました。 退院後、被害者はリハビリにはげむことになりました。

 

 

当法律事務所弁護士受任後

 

被害者の方からは、入院中から当事務所に連絡をいただきました。

 

必要なことはお電話で全てお話をし、退院されたらご来所いただくことにし、退院後すぐにご依頼をお受けすることになりました。

 

被害者は、足首の骨折のため仕事ができませんでした。休業損害と通院交通費については、弁護士が代理し、毎月、相手方任意保険会社に請求し、その都度内払い(=最終の示談交渉前に、損害額の一部支払を受けることです。)を 受けました。

 

また、被害者は休業により賞与も減額されて支給となったため、この分についても相手方に請求し、内払いを受けました。

 

被害者はリハビリを続けるも、受傷した足首の痛みや足首関節(足関節)の可動域が制限される状態が続きました。

 

 

症状固定・後遺障害診断書の記載

 

被害者の方には、最後の診察で足関節のCTをとってもらうかどうかについて、医師の先生とご相談した方がいいとお話をしていました。

 

CT検査は行われることになりました。

 

骨折した足首には手術が行われたのですが、体内に残った骨片は全部取り切れず、残ってしまっていました。

 

医師の先生に作成してしていただいた後遺障害診断書の記載記載は以下のとおりです。

●自覚症状欄

(受傷した側の)足関節足部の疼痛としびれ感

●他覚所見欄

X線 抜釘術後 内果の骨折線は癒合した 内外側にある裂離骨片は癒合せず残存している

●足関節可動域数値欄

底屈 患側(受傷側)45度、健側50度  

背屈 患側(受傷側)0度、健側10度

※患側は合計45度、健側は合計60度になり、患側が健側の4分の3以下の数字になっていますので、数字上は、可動域制限の後遺障害(12級7号)の条件を満たすことになります。

●傷害内容の増悪・緩解の見通しの欄

足関節内骨折後であり、将来、足関節症へと進展し、悪化する可能性があります

 

 

後遺障害診断書以外にも画像を預かり、弁護士金田がCT像を確認したところ、受傷した足関節の内側(脛骨という骨になります)に亀裂があり、関節内で変形が生じているようでしたので、この部分をキャプチャー 処理し、印刷して、自賠責保険に対し特に確認をしてほしい旨の文書を作成し、これも提出しました。

 

 

 

後遺障害等級認定の見込み

 

後遺障害等級認定の見込み 受傷した側の足関節の可動域が4分の3以下に制限されていましたので、後遺障害12級7号の数字上の条件は満たしています。

 

しかし、それだけでなく、そのような可動域制限が生じる医学的原因がはっきりしていることを自賠責保険は求めてきます。

もっとも、本件は、上記のとおり、裂離骨片の存在や関節内の亀裂、変形がありますので、 これで後遺障害12級7号が認定されるだろうという見込みを弁護士金田は持ちました。

 

当法律事務所が代理し、自賠責保険に対し、後遺障害等級認定申請をしました。

 

 

後遺障害等級認定結果

 

見込みどおり、足関節の可動域制限で後遺障害12級7号が認定されました。

 

足関節足部の痛みやしびれについては、この後遺障害12級7号に含めての評価となりました。

 

後遺障害12級が認定されたことにより、自賠責保険会社から 224万円 の支払いを受けることができました。

 

 

最終の示談

 

※以下の金額は千円以下省略しております。

 

その後、相手方任意保険会社に対し、追加最終請求をしました。追加で約1300万円の請求をしました。

 

しかし、相手方任意保険会社は787万円の提案しかしてきませんでした。

 

お互いの主張がかけ離れており、これ以上示談交渉を続けてもまとまる見込みがありませんでした。

 

被害者の相談のうえ、示談交渉をあきらめ,交通事故紛争処理センターにあっせんを申し立てることになりました。

 

 

交通事故紛争処理センターのあっせんが成立しました

 

第1回の交通事故紛争処理センターへの出頭期日前に、被害者側からは必要な証拠は全て提出し、その証拠に基づいた主張内容も出し尽くしました。

 

相手から予想されるであろう反論も想定したうえで、初回から出し尽くしていきました。

 

相手方からは、特に反論の資料が出て来ず、2回目の出頭期日にセンターから最終支払額1151万円のあっせん案が出てきました。

これを双方が承諾し、あっせんが成立しました。

 

この1151万円と自賠責保険から後遺障害12級が認定されたことで支払を受けた224万円以外に、以下の支払も相手方任意保険会社から受けております。

・交通費37万円

・休業損害総額456万円

 

つまり、弁護士受任後合計 1868万円 の支払を受けることができました。

 

 

ひとこと

 

本件は最終示談が決裂しましたが、交通事故紛争処理センターで早期解決ができました。

 

相手方任意保険会社からの回答内容を見たとき、これは示談でまとまらない内容だと考えましたので、被害者と相談のうえ、示談での解決を早々にあきらめこともよかったと思います。

 

示談が決裂した場合、裁判(訴訟)手続にうつるか、交通事故紛争処理センター手続にうつるかのどちらかになると当事務所では考えております。

 

裁判、交通事故紛争処理センター、それぞれ、メリット、デメリットがあります。 ケースに応じて最も適切な手続を選ぶことが重要だと思っております。