TFCC損傷後遺障害12級13号 高裁和解 合計1424万円の支払を受けた案件
(令和4年4月10日原稿作成)
TFCC(三角繊維軟骨複合体)とは
手首のうち小指側の部分にあるやわらかい組織(繊維軟骨や、じんたい)のことをいいます。
自転車やバイクに乗って交通事故にあって転倒した際に手を地面に打ったときなどで、このTFCCを損傷することがあります。
TFCCを損傷すると、手首の小指側の痛みやしびれ、不安定感といった症状が出る可能性があります。場合によっては、手首の関節の可動域が制限されることもあります。
本件の被害者(30代男性会社員)も、自転車に乗って四輪車との衝突事故で転倒した際に手を地面についてTFCCを損傷を受傷しました。
TFCC損傷については手外科の専門医の先生がおられる病院へ
TFCCという言葉を知っている方はほとんどいないと思います。
ですので、交通事故で手をついたりして手首の小指側が痛んだり、不安定感があったりしておかしいと思ったら、すぐに病院で受診し医師の先生に伝える 必要があります。
交通事故直後に救急搬送された場合には、搬送先の病院できちんと症状を伝える必要があります。
救急搬送されなかった場合には、症状があればすぐに医療機関に行き、整形外科で受診 するべきです。
個人的な意見になりますが、まずは、開業医の整形外科よりも病院、それも手外科の専門医の先生がおられる病院を受診された方がいいと思います。
理由は、TFCC損傷の場合はできるだけ早くMRI検査を実施していただく必要があり、また、症状がひどければ手術をする必要がありますが、MRI検査の実施と手術の実施に対応できる医療機関は病院になるから です。
そして、手外科の専門医の先生がおられる病院では、より的確な治療を受けることが期待できます。
●病院で受診されたら
まずは レントゲン又はCT検査で、手首付近を骨折していないかを確認 されると思います。
レントゲンやCT検査の結果、手首付近に骨折がなくてもまだ安心できません。なぜなら、やわらかい組織で構成されているTFCCの病変は、レントゲンやCTでは映りません。
TFCCが損傷をしているかどうかを確認するためにはMRI検査を実施していただく必要があります。
このMRI検査は事故後できるだけ早く実施していただく必要があります。事故により受傷したかどうかについても確認していただく必要があるためです。
※当法律事務所が現在ご依頼を受けて活動している案件の中には、MRI画像上TFCC損傷ははっきりしませんでしたが、手術が行われることになり、関節鏡でTFCCが部分断裂しているのを確認されたというケースもあります。
TFCC損傷を受傷した場合、手術をするか、保存療法(手術をしない治療法です。)で治療するかが選択されます。
本件被害者は事故当日に病院に通院し、手首の痛みなどを訴え、事故から約1ヶ月余り経過後に手首のMRI検査が実施され、画像上TFCC損傷が確認されました。
手首には装具(金属の棒が2本入っており、手首をはさむ形で固定するものでした)が装着され、結局、手術はせずに保存療法のでの治療となりました。
事故から約7ヶ月後、再度、手首のMRI検査が実施され、事故から8ヶ月弱で後遺障害診断がされました。
その後、当法律事務所にご相談に来られ、受任することになり、まずは後遺障害等級の申請を代理して行うことになりました。
後遺障害等級認定結果…後遺障害12級13号の認定
手首の関節に痛みが残ったなどの症状に関し、MRI画像などから交通事故受傷によるTFCC損傷が認められ、局部に頑固な神経症状を残すものとして後遺障害12級13号が認定されました。
その後、相手方保険会社と示談交渉を行いましたが、決裂し、裁判手続で解決を求める方向になりました。
裁判の第一審(地方裁判所)判決
※以下の金額は1万円未満省略しております。
人損及び物損をあわせて被害者が 730万円 の支払を受ける内容の判決が下されました。
●後遺障害逸失利益…交通事故当時の被害者の年収の14%を10年間喪失した計算での金額でした。
●傷害慰謝料…こちらからの請求どおり134万円が認定されました。
入院はなく、通院も延べ12日しかありませんでしたが(通院期間は8ヶ月弱です。)、金属棒入りの装具をつけ続けていた事実を主張していきました。
●後遺障害慰謝料…こちらからの請求どおり280万円が認定されました。
過失割合は、被害者側に25%となるという判断をされました。
この第一審(地方裁判所)判決は、交通事故裁判例雑誌に掲載されているようですが、以下の控訴審(高等裁判所)判決の内容は交通事故裁判例雑誌に掲載されていませんので、ここで申し上げます。
控訴審(高等裁判所)では1200万円の支払いを受ける内容で和解成立
※以下の金額は1万円未満省略しております。
第一審判決の内容ですが、被害者は、過失割合と後遺障害逸失利益の中の特に労働能力喪失期間に不服があり、ご相談のうえ、高等裁判所に控訴することになりました。
控訴審(高等裁判所)では最初から和解の話になり、結局、被害者が1200万円の支払を受ける内容で和解が成立しました。
上記のとおり第一審での支払認定金額は730万円であり、これに対する高等裁判所での和解成立時点の遅延損害金は730万円のうち661万円の年利5%分2.5年分と730万円のうち69万円のうち年利5%の3.5年分の遅延損害金の合計額でした。
和解の細かいやりとりについてお伝えすることは控えますが、第一審(地方裁判所)からは、はるかに増額した金額で解決できました。
1200万円に加え、後遺障害12級が認定されたことで示談交渉前に自賠責保険から224万円の支払を受けており、当法律事務所受任後、被害者は1424万円の支払を受けることができました。