【解説!】自転車事故の過失割合、自転車と自動車との事故で必要な対応

(令和6年8月22日原稿作成)

 

1 自転車と道路交通法

 

(1)道路交通法上、自転車は「軽車両」になります。

道路交通法第2条1項11号には「軽車両」とは何かが書かれており、そこに「自転車」とはっきり書かれています。

ですので、自転車は、道路交通法上、「軽車両」ということになります。

 

そして、道路交通法第2条1項8号には、「車両」とは何かが書かれており、そこに、「自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう」と書かれています。

これにより、自転車も「車両」というこことになります。

 

ただし、自転車を押して歩いている者は、道路交通法第2条3項2号により、「歩行者」とすることになります。

 

(2)自転車は道路交通法を守る必要があります。

上でのべたとおり、自転車は「車両」ですので、車両として道路交通法を守って運転する必要があります。

 

 

(3) 信号機、横断歩道、走行方法などに関する自転車の基本的交通ルールについて

 

以下、いくつか挙げます。

※ 道路交通法上の「普通自転車」にあてはまらない自転車(大きさが大きなもの等)などについては以下のルールが適用されないものがあります。

 

●歩道と車両の区別のある道路では車道を通行しなければならない(ただし、自転車道があれば、自転車道を通行しなければならない)

ただし、以下の場合には例外的に自転車の歩道通行が認められているが、この場合でも、自転車は、歩道の中央から車道よりの部分を徐行しなければならず(自転車通行指定部分がある場合、その部分を徐行しなければならない)、歩行者の通行をさまたげることになるときには一時停止しなければならない

・道路標識などにより、自転車が通行できる歩道とされているとき

・高齢者、児童、幼児等が自転車運転者であるとき

・車道または交通の状況に照らして自転車の通行の安全を確保するために歩道の通行がやむを得ないと認められるとき

 

●路側帯(ろそくたい)については、いちじるしく歩行者の通行をさまたげることとなる場合などをのぞいて、道路の左側部分にもうけられた路側帯を通行することができる

道路では、左側を通行しなければならない(車両通行帯のない道路では、道路の左側端を通行しなければならず、車両通行帯のある道路では原則として一番左の車両通行帯を通行しなければならない)

●自転車が道路を通行するとき、信号機にしたがわなければならず、横断歩道を横断する場合や歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示のある場合には歩行者用信号にしたがわなければならない

●自転車が道路を横断する場合、自転車横断帯がある場所の付近では、その自転車横断帯を通って横断しなければならない

●自転車は道路標識などにより認められている場合をのぞき、他の自転車と並進してはいけない

●自転車はみだりにその進路を変更してはならない

●自転車が踏み切りを通過しようとするときは、踏切の直前で停止し、安全を確認しなければならない

●自転車が左折するとき、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、できる限り道路の左側に沿って徐行しなければならない

●自転車が右折するとき、あらかじめできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿って徐行しなければならない(=二段階右折をしなければならない)

 

 

2 自転車事故に注意 ~自転車安全利用五則とは~

 

以下の5つです。

(1)車道が原則、左側通行、歩道は例外、歩行者を優先
(2)交差点では信号と一時停止を守り、安全確認を
(3)夜間はライト点灯
(4)飲酒運転は禁止
(5)ヘルメットを着用

 

 

 

3 自転車対自動車(四輪車)の交通事故の過失割合

 

自転車に乗っていて自動車に衝突される交通事故にあったとき、自転車などの物の破損に関する損害賠償と、ケガに関する損害賠償の問題が発生します。

 

この損害賠償額は、自転車側に過失はなかったのか、あったのか(過失相殺をすべきかどうか)、あったとしてどれくらいの割合になるのか(過失割合)によって、変わってきます。

 

ケガの損害が何百万、何千万、億単位になるケースもあり、この場合、過失が1割増えるか減るかで損害額も大きく変わってきます。

 

自転車側に過失がないのか、あるのか、あるとしてその割合はどれくらいかということについては、まずは別冊判例タイムズ38号という資料にもとづいて考えていくことになります。しかし、この資料は各保険会社や弁護士が持っているものなので、被害者としては弁護士の無料相談を利用するのが得策といえます。

 

当法律事務所で実際に取り扱った事例を以下少し紹介いたします。

 

 

●事例1

信号のない交差点で、狭い道路から交差する広い道路へ右折しようとした四輪車が、左から右へ歩道上を直進しようとした自転車(自転車は右側通行していました。)に衝突した事故です。

 

自転車が走行していた道路には歩道がありましたが、この歩道は自転車通行不可の規制がありました。

 

当法律事務所は自転車に乗っていた被害者から、物とけがの損害賠償問題をお受けしましたところ、話がまとまらず、裁判を申し立てることになりました。

 

このケースは別冊判例タイムズ38号【271】図という図をもとに考えていくケースになりますが、この図は基本過失割合が自転車10%、四輪車90%となります。しかし、自転車側が、自転車通行不可の歩道を走行していたことなどが、過失を増算される要素となるのかどうかが問題になりました。

 

自転車側からは、この【271】図は自転車の右側通行を自転車側の過失を増やす要素としていないことや、事故時の交通状況から自転車がやむを得ず歩道を走行したことなどを主張し、結果、基本割合どおり自転車10%、四輪車90%の割合を前提として金額で和解が成立しました。

 

 

 

●事例2

コンビニの駐車場から歩道を横断して道路へ進入し、左折しようとした四輪車が、左から右に歩道上(自転車通行可です。)を直進しようとした自転車に衝突した事故です。

 

当法律事務所は自転車に乗っていた被害者から、物とけがの損害賠償問題をお受けしましたところ、これについても話が全くまとまらず、結局、裁判を申し立てることになりました。

 

このケースは別冊判例タイムズ38号【299】図という図をもとに考えていくケースになりますが、この図は基本過失割合が自転車10%、四輪車90%となります。

 

しかし、自転車側からは、裁判でいくつかの反論主張を行いました。結果、判決では、自転車通行可能な歩道を横断して国道に左折進入するにあたり、衝突地点まで自転車の存在に気づいていなかったことが考慮され、自転車側の過失を5%にとどめました。この判決は確定しました。

 

 

●事例3

自転車が交差点を青信号にしたがい横断歩道上を横断走行していたところ、自転車の前方から左折してきた四輪車に衝突された事故です。

 

このケースは別冊判例タイムズ38号【297】図という図をもとに考えていくケースになりますが、この図は基本過失割合が自転車10%、四輪車90%となります。

 

当法律事務所は自転車に乗っていた被害者から、けがの損害賠償問題をお受けしました。

 

本件は、自転車が横断歩道上を走行していたことやその他の事情を主張し、自転車の基本過失割合10%の修正を主張し、被害者である自転車側に過失なしという前提で、交通事故紛争処理センターでのあっせんが成立しました。

 

 

 

 

4 自転車事故にあったときにすぐに取るべき行動

 

 

●警察に、現場に来てもらう

なぜ警察に来てもらう必要があるのかは以下のとおり。

まずは、交通事故にあったことを証明してもらうためです。

また、事故状況を第三者の立場である警察が、事故状況をくわしく調査し、ドライブレコーダーや防犯カメラを確認すれば、より正確な事故状況がわかるからです。

 

車の運転者又は現場のそばにいた方が警察に連絡するケースが多いと思いますが、被害者自身も警察には必ず来てもらわなければならないことを意識しておきましょう。

 

 

 

●加害者の連絡先を聞き、加害者がかけている任意保険会社から被害者に連絡をもらうように加害者に伝える

交通事故にあいケガをした場合、事故後すぐに病院に救急搬送される場合には加害者に聞くことはできませんが、救急搬送がない場合でもすぐに医療機関に行く必要があります。

 

加害者側任意保険会社と治療費を支払ってもらう話をする必要があるため、まず加害者に、任意保険会社に連絡してもらう必要があります。

 

 

●ケガをしたらすぐに医療機関を受診する

救急搬送されていない場合でも、ケガをしたらすぐに医療機関(病院、医院、クリニック)に受診をする必要があります。

初診で痛みやしびれなどおかしいところがあれば、もらさず全て伝える必要があります。

※医療機関で診断書が発行され、担当警察に診断書を提出し、人身の届け出をすると、警察が各当事者から事情を聞き、実況見分などの捜査をすることになります。この場合、事故現場付近に防犯カメラがあれば、早めに警察に対し、できるだけ早めに防犯カメラの確認捜査をして欲しい旨伝えておいた方がいいです。

 

 

 

●被害者側がかけている自動車保険や自転車保険があれば、この保険会社にも事故にあったことを連絡しておく

自動車保険…被害者ご自身が自動車保険もかけている場合、同居の家族が自動車保険をかけている場合、婚歴のない被害者の別居の親が自動車保険をかけている場合などのケースを想定しております。

保険会社に連絡をしておく理由は以下のとおりです。

・弁護士費用特約がついている可能性がある

・見舞金名目の保険金が支払われる場合がある

・被害者側にも過失が見込まれる場合で相手の車両が損傷したときに、保険対応(対物対応)をしてくれる契約になっているかどうかを確認する必要がある

 

 

 

 

●火災保険会社などへの確認

自動車保険や自転車保険がない場合などに、火災保険に、以下の点を確認してください。

弁護士費用特約がついているか

被害者側にも過失が見込まれる場合で相手の車両が損傷したときに、保険対応(対物対応)をしてくれる契約になっているかどうか

 

 

●被害者のご家族が動かなければならないケースも多いです

自転車は、交通事故により衝突を受けると転倒しやすく、転倒の際、体を車は地面に直接打ち付けることになるため、入院を要する重傷を負うおそれが比較的高いといえます。

このような場合、本人が病院から動けない状態になり、ご家族の手助けが必要になる場合が少なくありません。

また、自転車は子供も乗ることができます。子供が交通事故にあえば、親の手助けが必要になります。

このような場合、ご家族が動かなければならなくなる可能性がありますので、この点にもご注意が必要です。

 

 

 

 

5 けがの損害が発生してしまったら(慰謝料、休業損害、後遺障害の損害などの請求の流れなど)

 

交通事故でけがをし、入院しなければならなくなったり、通院を続けなければならなくなれば、相手に請求すべき損害額が増えていくことになります。

以下、いくつかの損害費目についてのべます。

 

●入院中の雑費

領収証不要で日額1500円×入院日数の計算による金額の支払いを受ける運用になります(あくまで被害者の過失ゼロでのお話です。)。
※この点、加害者側任意保険会社は日額1100円の提示しかしてこないケースが非常に多いですのでご注意ください。

 

 

●休業損害

事故によるけがのために仕事ができない状態になり、収入が減った場合には休業損害が発生します。

会社勤めの被害者(給与所得者)であれば、毎月ごと等事前又は示談時にまとめて、勤務先に休業損害証明書(定型の書式があります)を作成してもらい、加害者側保険会社に送付し請求します。

自営業者の場合は複雑であり、細かい検討が必要になります。

家事労働者の場合も休業損害は請求できます。

 

 

●慰謝料

基本的には入通院の日数と期間を考慮して金額を出していき、示談交渉時に加害者側任意保険会社に請求していくことになります。

「入通院の日数と期間」を検討材料にすることから、症状固定日(=医学的にみてこれ異常治療を続けても改善の見込みがない状態に達したと評価できる時期)がこないと金額の計算ができません。

 

 

 

●後遺障害等級が認定された場合の損害

後遺障害逸失利益と後遺障害慰謝料という損害費目が問題になります。

後遺障害慰謝料とは、1級から14級までの後遺障害等級ごとに一応の目安となる金額があります。

後遺障害逸失利益は、基礎収入(年収)×労働能力喪失率×労働能力喪失期間で計算して出します。

上記のほかに、介護が必要になる後遺障害が残った場合には、症状固定日以降付き添いに要することになる費用(将来介護費用)が問題となります。

 

 

 

●損害賠償手続(請求の流れ)

 

後遺障害が残らない場合、治療終了時(正確には治療終了月の診断書・診療報酬明細書が入手できたときというべきかもしれませんが。)に損害の計算ができる状態になります。請求できる全損害の計算をし、加害者側任意保険会社に請求します。

加害者側任意保険会社から回答があり、金額的に応じられるものであれば、示談成立にとなり、事件が終了になります。金額的に応じられないが、まだ示談交渉で解決できる余地があるのであればさらに示談交渉が続くことになりますし、話し合いの余地がないような回答なら裁判などの機関に申し立てて解決を求めることになります。

被害者側に弁護士がついていなければ、損害の計算をすることは難しいので、加害者側任意保険会社が損害を計算し、被害者に金額提示をしてくることになりますが、この金額は裁判基準に比べて低いかもしれないことにご注意ください。

まず弁護士の無料相談を利用されることをおすすめします。

 

後遺障害等級が認定された場合(裁判で後遺障害等級をもとめて申し立てることもありますが。)、※給与所得者の休業損害や入院中の雑費などは最終の示談交渉前に支払い(内払いといいます)を求め、支払いがなされる場合がありますが、(慰謝料、後遺障害関係損害などを中心に)最終示談時に請求することになります(自賠責保険への被害者請求で後遺障害等級が認定された場合には最終示談前に自賠責負担分の支払いがなされます。)。

請求の流れはほぼ上記と同じですが、加害者側任意保険会社から金額提示がされる場合、裁判基準に比べて低いことが多いので、ご注意ください。

まず弁護士の無料相談を利用されることをおすすめします。

 

 

 

 

6 けがの損害は治療中が大事です

 

自転車事故でのけがは重傷となりやすく、この場合、重い後遺障害が認定される可能性があります。

後遺障害の認定に必要なのは、症状や状態に見合った医学的な所見があるかどうかになります。

つまり、必要な検査が適切な時期にされているかが重要になります。

重傷事案では、治療中から弁護士によるサポートを受けて進めていく必要性がより高いです。

 

 

 

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