交通事故 高次脳機能障害 自賠責保険後遺障害5級、7級、9級の違いは? ~当事務所弁護士の経験から~
(令和7年2月20日原稿作成)
交通事故で頭部を受傷(脳外傷を受傷)した被害者のご家族の方へ
1 被害者に以下の様子はないでしょうか(ただし、以下は一例です。)。 |
交通事故前の様子と比べてみてください。
・もの忘れがある
・怒りっぽくなった、気分がすぐ変わる
・集中力や注意力の低下(長続きしないことも含めて)
・疲れやすくなった
・ぼーっとすることが多くなった
・今までできていたが、できなくなったことがある
・ご家族が言ったことを理解していないことがある
・話そうと思うことが言葉に出しづらい
・何度も同じ質問をする
・同じことを何度も話す
・指示なしでは行動できない(ことがある)、言われないとしなくなった
・行きあたりばったりの行動になっている
・うまくいかないときに修正できない
・作業中にミスが多い
・一つのことをすると他のことができなくなった
・お金をあるだけつかってしまう
・幼くなった、甘えることが多くなった
2 被害者には少なくとも事故直後に以下のような意識障害はあるでしょうか(以下、かんたんに述べております。) |
・日付、自分がいる場所、名前、生年月日などが一つでも言えない状態となっている
・呼びかけられたり、刺激を与えられたりしても目を覚まさない(手足を動かすことができるケースはあります。)
3 被害者の頭部のCTやMRI検査により、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、びまん性軸索損傷などの診断を医師から受けているでしょうか。 |
※上記に該当する場合、被害者は期間の長短はともかくとして、事故後病院に救急搬送され、入院となるでしょう。
※上記該当する場合、多くの場合、医療機関で被害者に神経心理検査が実際されているものと思われます。
高次脳機能障害が問題になります
被害者の事故後の様子について、
上記1の事項に少しでも心当たりがあり、(意識障害については、どの程度・どのくらいの期間続いていたかについての基準はあるのですが)
上記2及び3にも該当する場合、
被害者としては、 高次脳機能障害の後遺障害 のことを考えていかなければなりません。
自賠責保険における高次脳機能障害の後遺障害等級について
交通事故により脳外傷を受傷し、これにより高次脳機能障害が残ったと自賠責保険が判断したら、自賠責保険は、次に、この残った高次脳機能障害の程度を検討 していきます。
高次脳機能障害に関して、自賠責保険は以下のとおりの等級を定めています。
重い等級から順に、1級、2級、3級、5級、7級、9級とあります。
自賠責保険高次脳機能障害の後遺障害5級、7級、9級の違い?
上記各等級のうち、
・被害者の 常時介護が必要となる 高次脳機能障害の後遺障害1級
・被害者の 随時介護が必要となる 後遺障害2級
・被害者が 労務に服することができない という後遺障害3級
についてはここでは省略させていただきます。
上記各等級のうち、黄緑色の部分、すなわち、後遺障害5級、7級、9級の違いについて、以下、当事務所弁護士が受任した経験についてのべます(以下の9つの事例は実際に高次脳機能障害で後遺障害5級、7級又は9級が認定されたケースであり、全て弁護士金田が受任しました。)。
なお、労災保険にも後遺障害認定制度[障害(補償)給付といいます。]があり、認定基準もありますが、ここでは自賠責保険が実際に認定したケースを申し上げることにいたします。
当事務所が受任した自賠責保険高次脳機能障害5級認定事例
■事例1
事故時80代男性(収入は年金のみ)
傷病名:急性硬膜下血腫
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時GCSは15点満点中13点で、事故から1日で意識清明になったという記載でした。
※ただし、弁護士が後に入手した診療録によれは、事故から1週間以上経過した後もJCSがⅠ-2(見当識障害ありという意味です。日付や場所に誤答がありました。) という記載になっていましたので、これらを主張していきました。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
身の回りの動作について…トイレ・入浴動作がほとんどできない(大部分介助)、更衣はときどき介助の状態、屋内移動は手すりが必要(屋外は車いす移動の状態:事故前は屋内外ともふつうにに歩行ができていました。)、食事は自立
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケールという知能テストです):30点満点中27点
MMSE(知能テストです):30点満点中29点
認知・情緒・行動障害の欄で、複数項目において、問題行動が重度・頻回という内容になっている 家族に対し怒りっぽくなり暴言を吐いたりする、周囲との意思疎通がうまくいかない、コミュニケーション能力の低下・易怒性の亢進により他者との口論の頻度が増加
後遺障害診断書から引用されていた部分
尿閉がある旨、足関節機能障害が残っている旨の記載あり
※本件は、特に、精神症状(高次脳機能障害)だけでなく身体的な機能障害もあわせて総合評価され、高次脳機能障害の後遺障害5級が認定されたケースです。
■事例2
事故時40代男性(事故時会社員)
傷病名:脳挫傷、頭蓋骨骨折、外傷性くも膜下血腫、急性硬膜外血腫、びまん性軸索損傷
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時GCSは15点満点中14点、JCSはⅠ-3で、事故から約3日後に意識清明になったという記載でした(ただし、意識回復後も軽度短期記憶障害を認める旨の記載がありました。)。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
WAIS-Ⅲ(知能検査です。)で低下項目あり
CAT(注意機能の検査です。)で注意能力が障害されている
易怒性のため、家族が時にこわい思いをするほどとなっている
今後、就労に向けた支援を要するが、就労に際しては、後遺症に対する合理的配慮や、十分な職種の選択を要し、就ける職種は病前に比べ限定される
被害者の妻が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
言動がひどくなり、罵声を浴びせ、物にあたったりすることがしょっちゅうある
物忘れがとても多い
※被害者は、この交通事故による高次脳機能障害の症状が続いたため、事故時に就いていた仕事は結局できなくなり、治療中に解雇となりました。
■事例3
事故時10代男性(高校生)
傷病名:脳挫傷、外傷性くも膜下出血、びまん性軸索損傷
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時GCSは15点満点中10点、JCSは100で、事故から約1ヶ月後に意識清明になったという記載でした。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
被害者の親が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
この交通事故による受傷のため卒業が遅れた
数ヶ月前にアルバイトを始めた
前日に言われたことを忘れている
集中力の低下や注意力の低下がある
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
発動性は低い(自分では何もしようとはせず、他人にいわれないとできないような状態のことです。)
日常生活全般に声かけを要する、
予定管理や金銭管理が困難で返済の見込みもなくお金を借りてしまう、お金をある分使ってしまう
※神経心理検査結果のことにもふれられていました。
WAIS-Ⅳ(知能検査です。)で低い結果が出ていました
WMS-R(記憶検査です。)で記憶力低下の結果が出ていました。
リバーミード行動記憶検査でも記憶力低下の結果が出ていました。
※事故後にアルバイトを始めたのですが、後遺障害申請時にはそのアルバイトを休みがちになっていました(勤務シフトも被害者自身で調整・管理できない状態です。)。
当事務所が受任した自賠責保険高次脳機能障害7級認定事例
■事例4
事故時10代女性(事故時高校生)
傷病名:脳挫傷(両側前頭葉に脳挫傷痕が残存したケースです)、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、後頭骨骨折
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時GCSは15点満点中13点、JCSはⅡ-10で、事故から約8日後に意識清明になったという記載でした。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
感情の起伏が激しくなり、薬を飲んでいないと気分の落ち込みが激しい
てんかん発作がある
被害者の親が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
事故後、集中力、注意力の低下が気になる
事故前に比べて些細なことで怒りっぽくなった
※HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケールという知能テストです)・MMSE(知能テストです)ともに30点で満点でした。
■事例5
事故時40代男性(事故時契約社員)
傷病名:脳挫傷(脳挫傷痕の残存と脳室拡大が認められたケースです)
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
被害者の親が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
受傷後の日常活動における能力低下がある
怒ったりイライラしたりする頻度(週に1回以上はありました)
友人に対してもすぐに感情的になって腹が立っりする(事故前はこのようなことはなかった)
就労はしたが指示された内容を1度で認識でいずに同じミスを何度も繰り返してしまい、注意され、それに感情的に反応してしまい、結局仕事が続きできず、何度も転職を余儀なくされている
※事故後務めていた仕事を辞めることになり、後遺障害申請時は無職だったケースです
■事例6
事故時30代男性(給与所得者)
傷病名:脳挫傷(広範囲に脳挫傷痕が残り、脳萎縮の進行も認められたケースです)、頭蓋骨骨折、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時GCSは15点満点中10点、JCSは3で、事故から約53日後に意識清明になったという記載でした。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
てんかん発作の治療として抗てんかん薬の投与が認められる
就労状況において受傷前と同一の仕事内容は遂行できない
被害者の親が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
物忘れがある
むきになったりイライラすることが多くなった
失語がある
※最初にご担当になった脳神経外科医の先生のチームがとても充実した治療とフォローをされたおかげて被害者の症状がかなり良くなったケースです。 事故前の仕事に復帰することができましたが、事故前の準管理者的な立場の業務ができなくなってしまったというケースです。
当事務所が受任した自賠責保険高次脳機能障害9級認定事例
■事例7
事故時20代男性(給与所得者)
傷病名:急性硬膜外血腫、脳挫傷(脳挫傷痕が残存したケースです)、前頭骨骨折
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時GCSは15点満点中13点、JCSは10で、事故から約4日後に意識清明になったという記載でした。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケールという知能テストです)は30点で満点
認知・情緒・行動障害が社会生活・日常生活に与える影響に関して以下の記載がある
・以前のことが思い出せないことがある
・忘れっぽくなっている
・疲れやすい、
・とっさの判断ができない
・複数作業を同時に行えない
・事故前より作業の処理速度が落ちた
・落ち着きがなくなった
被害者の親が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
物をどこに置いたか忘れることが多く、さがすことがよくある
※ 被害者は、事故時に就いていた勤務先に復帰することはできたのですが、復帰後配置転換となりました。
■事例8
事故時40代男性(給与所得者)
傷病名:脳挫傷、びまん性軸索損傷
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
初診時JCSは2で、事故から約8日後に意識清明になったという記載でした。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
認知・情緒・行動障害が認められ、それらの症状が社会生活・日常生活に与える影響については、注意障害からくる短期記憶障害、処理速度の低下、疲れやすさ、意欲低下、易怒性が中心で、忘れ物やケアレスミスが増えているといった記載がある
被害者の妻が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
日常生活の能力程度や問題行動の頻度において受傷前後の変化が認められる
※ 被害者は、事故時に就いていた勤務先に復帰することはでき、事故前の業務に就いているも支障が生じているというケースです。
■事例9
事故時40代女性(給与所得者)
傷病名:脳挫傷(症状固定時期直前に実施された頭部MRI画像でわずかに脳挫傷の痕跡が認められるケースでした。)、 急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血
●「頭部外傷後の意識障害についての所見」という医証に記載のあった意識障害の程度
事故後、意識障害はありませんでした(当事務所弁護士が調査しても意識障害があるような記載は見当たりませんでした。)。
●後遺障害等級認定結果で触れられていた部分
神経系統の障害に関する医学的意見(主治医の先生の医学的意見書のことです)という資料から引用されていた部分
現在も頭痛が続くという訴えがあり、集中力の低下、物忘れ、易怒性などの症状の訴えあり
被害者の家族が作成した日常生活状況報告書という資料から引用されていた部分
息子の学校に提出する書類の期限を忘れる
買い物をメモしてスーパーに言ってもメモを持って行ったこと自体を忘れ、何を買ったらいいか思い出せず、違う物を買ってしまう
仕事で上司に指示されたことを忘れていることがある
※被害者は、事故時に就いていた勤務先に復帰することはでき、事故前の業務に就いているも支障が生じているというケースです。
全国の被害者のご家族の方からのお問い合わせをお待ちしております
交通事故で脳に外傷を受け、高次脳機能障害が残ったケースの後遺障害等級問題や損害賠償問題にはたいへん専門的で、難しい問題がたくさんあります。
交通事故・高次脳機能障害の取り扱い経験がたくさんある弁護士に頼ることは、ほかのケガに比べてなお一層必要であると感じています。
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