交通事故の示談書とは?書き方やいつ届くのか弁護士が解説!
交通事故の示談とは?示談書とは?
交通事故で物が壊れたり、ケガをしたとき、被害者は加害者側からお金を支払ってもらうことで解決することになります(民法第417条)。
この支払ってもらうお金の額ですが、まずは加害者側と話をして決めていきます(加害者側が話し合いにすら応じない場合には裁判などを申し立てることになります。)。
話がまとまらない場合には、裁判又は交通事故紛争処理センターなどの機関で解決を求めていきます。
交通事故の被害者がこうむった損害(物の損害やケガの損害)の賠償金額について、加害者側と話し合うことを示談(示談交渉ともいいます。)といいます。
示談で話がまとまったら、被害者側からすればちゃんとお金を払ってもらえるように、加害者側からすれば後になって話をひっくり返されることがないようにしないといけません。
示談で話がまとまり、そこで取り決めた賠償金の支払いを確かなものにするため、他方、これで話を終了させて後に再び争われることのないようにするために作成するのが示談書です。
示談書と免責証書(承諾書)は同じもの?
多くの交通事故加害者は任意保険に加入しています。この場合、任意保険会社担当が窓口になります。
保険会社が窓口になっている場合、示談がまとまったら、通常は、免責証書というタイトルの文書(承諾書というタイトルにしている保険会社もありますが、効力は同じです。)が被害者側に送られてきます。
※ただし、タクシー会社が加害側になり、社内渉外担当が窓口になる場合や、保険会社が窓口になっていてもどちらもに物損があり、過失が10対0にならない場合には示談書を作成することも多いです。
示談書は、被害者側、加害者側ともに署名、捺印することになりますが、免責証書は被害者側だけ署名捺印することになる(複写式になっています。)という違いがありますが、効力は同じです。
交通事故の示談書はいつ届く?
加害者側保険会社が免責証書(承諾書)を送ることになる場合
示談の話がまとまってから被害者側に免責証書(承諾書)が送られてきます。
ですので、示談の話がまとまらないうちに送られる書類ではありません。
しかし、ご注意いただきたいことがあります。示談の話がまとまっていないのに加害者側の保険会社が被害者あてに、損害明細と一緒に免責証書を送りつけてくるケースもあります。
このような場合、金額・内容が妥当なものかどうか必ず確認、検討するようにしましょう。間違っても内容を見ずに署名、捺印し、返送してはいけません。
※停車中に後方から追突被害を受けた事故などでの物損では(明らかに被害者の過失がゼロのケースです。)、免責証書の発行が省略されるケースもあります。
免責証書は、おおむね話がまとまってから数日後から1週間程度で被害者のもとに届きます。これ以上遅れているときは、加害者側の保険会社に事情を確認した方がいいでしょう。
示談書の場合は被害者側、加害者側いずれもが署名・捺印する必要があります。被害者側、加害者側のどちらか示談書を作成するのかという問題が出てくると思います。
示談書の内容を確認する
■加害者側保険会社が免責証書(承諾書)が送られてきたら
まずその書いてある内容を確認してください。
免責証書にある内容はおおむね以下のとおりです。
加害者側の住所、名前、車両登録番号、加害者が加入している保険会社名
被害者側の住所、名前、車両に乗っていたら車両の登録番号(登録番号が省略されているケースもあります。)
事故発生日時、場所、事故状況(事故状況は省略されている場合もあります。)
日付記入欄、被害者の署名捺印欄
最終支払金額、示談前に支払済みの金額(又は支払い済みである旨の文言)
最終支払額を受領したら、両者お互いに債権債務はなく、被害者はそれ以上の請求をしない旨の文言(清算条項といいます。)
被害者の口座情報の記入欄
※保険会社によっては(担当者にもよりますが)、最終支払額の内訳明細書が同封されているケースもあります。
最終支払金額が示談で合意した内容どおりになっているかはきちんと確認してください。なぜなら、署名捺印した後で金額がまちがっていたことがわかっても、あともどりできなくなってしまうからです。
当事者や事故の情報が交通事故証明書どおりになっているかも確認しておく必要があります。
免責証書の内容に問題がないということであれば、日付の記入や、署名、捺印をして加害者側保険会社に郵送します(返信用封筒がついていると思います。)。
■ご注意していただきたいこと
人身損害で、示談当時に予測できなかった不測の再手術や後遺症が後に発生した場合、この損害については示談書にしばられずに損害賠償が認められる可能性があります(この旨判断した最高裁判所の判例があります。)。
示談当時に予測できなかった不測の後遺障害とは、たとえば、交通事故で頭部を受傷し、脳挫傷となり高次脳機能障害が残ったが、示談後に「てんかん」の症状が出てきた場合などが挙げられます。
このような場合には、示談書に、次のような文言を入れておくと、加害者側から後の話合いをすること自体をむげに断られるおそれが低くなるかと思われます。
【ただし、将来、乙(=被害者のことです)に、本件事故を原因とし、現時点では予想できなかった不測の後遺障害がその後発生し、後遺障害等級●級(=実際に認定された等級を入れます。)を超える後遺障害が自賠法施行令により新たに認定された場合は、それに関する損害賠償請求権を留保し、別途協議する。】(※後遺障害の等級が認定されていないケースでこのような文言を入れることは少ないと思いますが、気になる方は当事務所にお問い合わせください。)
※交通事故でケガをし、示談時に予測できなかった不測の後遺症が後に発生した場合、この点につき、まずは自賠責保険に後遺障害等級の判断を求めていくことになりますが(このような場合には示談成立からかなり期間がたっていると思われますので、事情により消滅時効の問題がでてくる可能性はあります。)、「自賠法施行令により新たに認定された場合」という意味の文言が示談書にもりこまれていないと、自賠責保険が後遺障害等級判断の手続を進めてくれないおそれがあるようです。
■示談書の書き方の例
交通事故で物損被害を受けたものの、加害者側車両も車両損害があり、被害者側の過失がゼロにならないケースなどでは、示談がまとまった場合、双方が署名、捺印する形式の示談書を作る必要があります。以下、被害者が原付バイクで10%、加害者が車で過失90%の場合の示談書を参考にお見せいたします。
※以下はあくまで示談書のイメージを持っていただくためのものであり、車両所有者が別にあったり、被害者がバイクではなかったり、事故状況、過失割合、代車の返還の取り決めの必要があったり等事情が変われば内容の変更が必要になり、このまま使用できるものではありません。くわしくは当事務所にご相談いただく必要があることを申し上げておきます。
物的損害に関する示談書 (本件事故の表示) 当事者:甲 住 所 京都市… 氏 名 ■■■
当事者:乙 住 所 京都市… 氏 名 □□□
事故発生日時 令和●年●月●日午前●時●分頃 事故発生場所 京都市●区●町●番地先 甲車両:普通乗用自動車(車両ナンバーを記載します) 乙車両:自家用原動機付自転車(車両ナンバーを記載します) 事故状況:上記日時場所において甲運転・所有の甲車両と乙運転・所有の乙車両とが衝突した。
(示談の内容) 1、甲は、乙に対し、本件事故による物的損害に関する一切の損害賠償金として、既払金のほか、金●万●円(内訳:…の合計●万●円を、甲の責任割合である90%で乗じた金額)の支払義務があることを認め、この●万●円を、本示談書作成日から●日以内に、下記口座に振り込む方法により支払う(振込手数料は甲の負担とする。)。 記 ●銀行 ●支店 普通預金 口座番号●● 口座名義:●●(カタカナで記入します)
2、乙は、甲に対し、本件事故による物的損害に関する一切の損害賠償金として、既払金のほか、金●万●円(内訳:…の合計●万●円を、乙の責任割合である10%で乗じた金額)の支払義務があることを認め、この●万●円を、本示談書作成日から●日以内に、下記口座に振り込む方法により支払う(振込手数料は乙の負担とする。)。 記 ●銀行 ●支店 普通預金 口座番号●● 口座名義:●●(カタカナで記入します)
3、第1項の損害賠償金と第2項の損害賠償金は相殺しない。 (※本件は、それぞれの支払義務者がその支払金額全額支払うというクロス払いの条項です。相殺後残債務が残る方だけが支払う内容はその旨の条項に直す必要があります。)
4、甲及び乙は、本示談をもって本件事故の物的損害に関する一切の紛争を解決したものとし、甲乙間には、本示談書に定めるほか本件事故の物的損害に関し何らの債権債務がないこと、今後裁判上又は裁判外において一切の請求・異議の申立てをしないことを相互に確認する。
本件事故について、上記のとおり示談が成立したので、その証として本書2通を作成し、甲及び乙が各1通を保管する
令和 年 月 日
甲:住 所 氏 名 印
乙:住 所 氏 名 印 |
示談書を送った後、賠償金が支払われるのはいつ頃か?
加害者側保険会社から送られてきた免責証書(承諾書)の内容に問題がなく、署名、捺印して返送した後、被害者が指定した口座に着金があるのはおおよそ2週間~3週間程度くらいでしょう(1週間程度で振り込まれる場合もありますし、金額が大きいときなどには着金が遅れることもあります。)。
最後に
このように、示談書の手続もかんたんなものではなく、注意をはたらかせていないと不利益を受けるおそれがあると思っておいた方がいいでしょう。
示談の段階から弁護士の無料相談を受けていただくのが望ましいといえます。