むちうちで病院への通院と交通事故後遺障害
(令和7年1月24日原稿作成)
むちうちで病院(医療機関)へ通院しなければならない理由
※ むちうち について、ここではくびに関してだけでなく、腰に関しても含んだ意味で述べています。
●まずは…
交通事故にあい、くびの痛み(そのほか、頭痛、肩の痛み、腕や手の痛み・しびれ、手の感覚が過敏となったりにぶくなったりといった症状もあり得ます。)や腰の痛み(そのほか、太もも、ふくらはぎ、足の甲、足指、足のうらの痛み・しびれ、足の感覚が過敏となったりにぶくなったりといった症状もあり得ます。)が発生した場合、被害者としては、まず、事故前の症状がない状態にできるだけ戻りたいと思うはずです。
事故前の症状がない状態への回復へと向かうには、病院(医療機関)に通院し、内服薬などの投薬やリハビリテーションなどの治療を受ける必要があるというのがまず第一の理由です。
●もう一つの理由は…
以下のとおりです。
症状がなくなればそこで治療は終了となりますが、治療を続けても症状が残ってしまった場合には、民法という法律の考え方からすれば、その分を交通事故加害者との間での金銭賠償で解決するよう努めていくことになります。
これは、 自賠責保険の後遺障害等級認定 という問題になりますが、この後遺障害等級の審査の際に病院(医療機関)への通院に関しても審査対象となるため、病院(医療機関)に通院しなければならないということになります。
※後遺障害で一番したのランクである14級が認定された場合とされない場合とでは、加害者側からの支払いが見込まれる損害賠償額が大きく変わってくる(例外ケースもないわけではありませんが。)と申し上げれば、後遺障害等級の問題が重要であり、ひいては病院(医療機関)への通院が重要である ということがおわかりいただけると思います。
交通事故でむちうちを受傷したら病院へ通院を!
交通事故でくびや腰などが痛くなった場合、医師国家試験に合格して医師免許を取得した医師が医業を行う施設に通院してください。
つまり、病院、医院、診療所、クリニック に通院してください。
※当法律事務所では、交通事故で受傷され、整骨院、接骨院、鍼灸院、整体などに通院されている方のご相談はお断りしております。
では、むちうちではどのような種類の医療機関に通院するべきなのでしょうか。
むちうちで、リハビリテーションをする必要がないほどの症状のケースはここでは省略させていただきますが、投薬が必要でリハビリテーションが必要なほどの症状であれば、リハビリテーションができる医療機関に通院する必要があります。
病院ではむちうちのリハビリテーションを実施しないところが多いと思われます。そうすると、開業医の医療機関、つまり、医院、診療所、クリニックに通院をするということになります。
最初、救急で病院に通院した場合でも、そこでリハビリテーションが行われなければ、すぐに医院、診療所、クリニックへの通院へ換えていった方がいいでしょう。
通院する診療科は、整形外科の医院、診療所、クリニックになります。
外科、脳神経外科でもリハビリテーションを行っているの医院、診療所、クリニックはありますが、交通事故による受傷に関することや症状が残ってしまった場合の後遺障害のことについてご理解をいただけないケースもあります。
●今通院している医療機関について気になる、地域の医院、診療所、クリニックのことがわからないという方
交通事故のけがの取り扱い経験が多い弁護士に相談されるとクリアになるかもしれません。
初診遅れをしないこと!
くびの痛みや腰の痛みなど症状を感じたら、すぐに通院をしてください。
事故当日又は(当日やむを得ない事情があるのであれば)翌日には通院に行かなければならないとお考えください。
初診が遅れれば遅れるほど、その症状が事故で受けた衝撃とは関係がない(=因果関係の否定)と判断されるおそれが高まります。
もし、初診遅れを理由に任意保険会社が治療費の支払いを拒むと、次は自賠責保険会社に治療費を請求するという方法があります。
しかし、自賠責保険でも初診遅れで支払不能と判断された場合、あとは裁判で主張するしか方法がなくなりますが(自賠責保険・共済紛争処理機構への不服申立という手段もあるにはありますが。)、これもとても険しい見通しであると言わざるを得ません。
結果、治療費の支払いが否定されると、全て被害者負担という結論になります。
症状は初診で全て伝えること!
くびの痛み、腰の痛みなど、症状がある部分は、初診で全て医師の先生に伝えていただく必要があります。
もし、初診以降に初めて痛みを感じた部位があれば、その日に医師の診察を受け、「本日、どこどこの部位に痛みを感じっました、しびれを感じました」旨訴えてください。
●なぜこのようなことを言うのか?
以下は当事務所の取り扱い事例です。
1 交通事故で腰椎捻挫を受傷したものの、腰の痛みの訴えが事故から11日後であったケースで、自賠責保険・共済紛争処理機構は、「腰痛は本件事故による受傷から遅発的に発現した」と認定し、後遺障害非該当との判断を下しました。
この件、自賠責保険・共済紛争処理機構はくびの痛みについては後遺障害14級9号を認定しました。
この被害者の方の腰椎のMRIは、頚椎のMRIよりも椎間板膨隆の程度が大きかったケースでしたので、訴えが早期に伝えられていれば、腰についても後遺障害14級9号が認定されていたと考えられるケースです(しかし、もし認定されていたとしても併合14級となり、トータルの等級が上がるわけではありません。もっとも、損害賠償請求で全く無意味とはいえません。)。
2 交通事故で腰椎捻挫を受傷したものの、腰の痛みと足趾(=そくし:あしのゆびのことです。)の治療が事故から16日後であったケースで(要するに訴えが遅れたケースです。)、後遺障害等級異議申立手続で、自賠責保険は、後遺障害非該当との判断を下しました。
この件、自賠責保険は異議申立において、くびの痛みについては後遺障害14級9号を認定しました。
この被害者の方の腰椎のMRIも、頚椎のMRIよりも椎間板膨隆の程度が目立って大きかったケースでしたので、訴えが早期に伝えられていれば、腰についても後遺障害14級9号が認定されていたと考えられるケースです。
このように、訴えが遅れた場合、本来認定されるべきであった後遺障害等級が認定されないという不利益を受ける おそれがあります。
症状を初診のうちに全て伝えることは、とても、とても重要なことで、軽く考えないでいただきたいことがらです。
むちうちで症状が続く場合の通院期間、通院日数について
●通院期間(治療期間)
むちうちで症状が続いた場合、最終的には後遺障害等級の申し立てを視野に入れていくことになります。
後遺障害等級の審査では、少なくとも6ヶ月間の通院がないと後遺障害等級は認定されない結果になることを覚悟しておいた方がいいと思われます。
当法律事務所ではかなり昔に取り扱ったケースですが、6ヶ月に少し足りない通院期間(治療期間)でむちうちの後遺障害等級が認定されたケースもあるにはありましが、むちうちで症状が続く場合に後遺障害等級申立を視野に入れる場合、基本的には少なくとも6ヶ月の通院期間は必要であると考えてください。
●通院日数、状況、頻度
むちうちで症状が続いた場合、上でも述べたとおり、最終的には後遺障害等級の申し立てを視野に入れていくことになります。
後遺障害等級の審査で通院日数、状況、頻度がどのように考慮されているのかは正直に言ってわかりませんし、これを明らかにする方法もないと思っています。
当法律事務所でも、むちうちの後遺障害等級案件を数多く取り扱ってきましたところ、この経験をもとにして、「この程度の通院日数、状況、頻度では後遺障害14級の認定はされないだろう。」という見通しをたてることはできます。ですので、具体的には、実際に被害にあわれた方とのご相談においてお話をさせていただきます。
ただし、以下の点にはご注意ください。
●事故から3ヶ月ほど(特に事故をした月)の通院日数が少ないケースは、むちうちの後遺障害等級審査ではマイナスととらえられやすい傾向があると感じています。
●通院治療の中断が30日に及んだ場合、その後に通院しても、その通院治療が事故によるものであることを自賠責保険が否定してくるおそれが高まります。
症状が続く場合には医師の先生とMRI検査を相談する
交通事故でくびや腰を受傷すると、初診で必ずといっていいほどくびや腰のレントゲン検査が行われます。レントゲン検査は、まず骨折がないかどうかを確認するために行われます。
もし、頚椎、胸椎、腰椎の圧迫骨折が疑われる場合には、追加でCTやMRI検査も行われるケースもあり得ますが、骨折がないとの診断になれば、頚椎捻挫や腰椎捻挫などといった診断がなされることが多いでしょう。
その後も痛みやしびれが続いた場合、骨そのものには異常がなくても、神経や、骨と骨の間にある骨よりも軟らかい組織(椎間板といいます。)に、痛みやしびれを説明し得るような所見があるかどうかを確認する必要 があります。
神経や椎間板(ついかんばん)は、レントゲンやCTでははっきりと写りません。これを確認するためにはMRI検査を受ける必要が出てきます。
●なぜMRI検査が必要なのか
・痛みやしびれが続くのであれば、自分の体の椎間板や神経の状態がどのようになっているかを医師の先生に把握しておいていただくことが自分の健康状態を知っておくうえで大切だといえるからです。
・交通事故によりむちうちとなり痛みやしびれが残った場合、自賠責保険の後遺障害等級の申立を視野に入れていくことになりますが、症状がある部位に関係するMRI画像所見はこの等級審査の考慮対象になるからです
(というか、かなり重要視されている傾向があると感じています。)。
なので、痛みやあいびれが続く場合には、主治医の先生にMRI検査のことをご相談された方がいいかと思います。
●MRI検査はどこで実施されるのか
・リハビリ通院先が病院で、この病院にMRI機器があれば、主治医の先生が実施するというご判断をされれば日程調整のうえ、その病院で実施されることになると思います。
・ただし、ほとんどの開業医医院ではMRI機器がおいてありませんので(MRI機器がある開業医医院も最近見かけてきましたが。)、そのようなところでは、医院の主治医の先生が実施するというご判断をされれば、機器のある病院(又は画像診断を専門とするクリニック)へ紹介状を出され、その病院に通院し、検査を受けることになります。
※初診で症状を確認された後、必要と判断されれはすぐにMRIを外注される整形外科医院もあります。
※非常に強烈なくびや腰の痛み、上肢や下肢のしびれがあるケースでは、できるだけ早いタイミングでMRI検査のご相談をしていただいた方がいいと考えています。このような場合、最終的に症状が残る公算が高く、後遺障害12級(13号)
という等級を意識しながら進めていく必要があるからです(なぜ早く撮らなければならないのかはここでは省略いたします。)。
当事務所での受任経験上、最近の後遺障害等級判断において、どうもMRI検査結果内容がかなり重要視されているのではないかという印象を持っています(これ以上のくわしいことは実際にご相談にお越しいただいたときにお話をいたします。)。
当法律事務所では、相談時にMRI画像CD-Rをご持参いただければ、弁護士が画像を確認し、MRIの面からの後遺障害等級の見通しも立てていきます。
むちうちで痛みやしびれがあればできるだけお早めに弁護士に相談を!
交通事故で、ねんざ、打撲と言われ、くびが痛い、腰がいたい、手足がしびれるなどといった症状が発生した場合、事故の衝撃の程度という要素もとても重要なのですが、これらの症状が続いた場合、最終的には後遺障害のことも考えていく必要があります。
後遺障害のことを考えていくには、病院への通院もふくめて注意するべき事項がたくさんありますが、弁護士の無料相談にお越しになった段階で、すでに取り返しのつかない経過になっているケースが少なくありません。
むちうちで痛みやしびれを感じたら、すぐに弁護士の無料相談を受けていただくことをおすすめいたします(その弁護士に依頼するかどうかはともかくとして。)。
お困りの方は、ぜひ、金田総合法律事務所にご相談ください。