交通事故慰謝料の早見表|計算方法や相場よりも増額解決したケースなど弁護士が解説!

交通事故の慰謝料とは?

 

交通事故によって死亡や負傷した被害者がこうむった精神的苦痛のことをいいます(死亡や重度後遺障害の場合には近親者固有の慰謝料についても検討していくことになります。)。

この精神的苦痛をお金に評価して損害賠償のやりとりをしてくことになります。

 

交通事故で請求できる人身損害の種類:慰謝料の重要性

 

主なものは以下のとおりです(装具・器具購入費、家屋改造費なども問題となるケースがあります。)。

■治療費

■入院雑費(入院がなければ請求できません)

■通院交通費

■付添看護費(治療終了までの入院や通院に関するものや、症状固定後の将来介護費用など)

■文書代

■葬儀費用(死亡事故の場合に問題となります。)

■休業損害(賃金労働分、家事労働分)

■傷害慰謝料(入通院慰謝料)

■後遺障害逸失利益(後遺障害等級が認定された場合に請求できる費目です。)

■死亡逸失利益(死亡事故の場合に問題となります。)

■後遺障害慰謝料(原則、後遺障害等級が認定された場合に請求できる費目です。)

■死亡慰謝料(死亡事故の場合に問題となります。)

■近親者慰謝料(死亡や重度後遺障害の場合に検討していくことになります。)

 

上記のうち、赤字の部分が慰謝料の損害費目になります。

 

死亡事故や重度後遺障害事故のケースでは、将来介護費用、休業損害、後遺障害逸失利益、死亡逸失利益といった損害費目が極めて高額になり、この場合、損害総額(被害者側にも過失がある場合にはその過失分が引かれることになります。)に占める慰謝料の金額的な割合は低くなりますが、慰謝料の損害費目は、通常、全体の損害を合計した総額に占める割合が大きくなるといえます。

 

このため、交通事故で人身被害を受けた被害者が救済されるには、慰謝料が正当に評価されることが重要になります。

 

 

しかし、示談交渉で、加害者側任意保険会社は、慰謝料を低めの金額で提案してくることがほとんどという実情があります。

 

ですので、正当な慰謝料を得るためには弁護士の力が必要になってくるものといえます。

 

 

 

以下、慰謝料の種類、相場、計算方法、早見表を示します。

 

傷害慰謝料(入通院慰謝料)

 

交通事故により被害者が肉体的、精神的に体を傷つけられたことにより苦痛を生じますが、損害賠償実務では、入院や通院をすることで被害者の身体的な自由が奪われることの苦痛という点をとらえて考えています。

さらに、入院中や通院中の医療機関での治療行為や検査により被害者が苦痛やわずらわしさも感じることも考慮にしていると考えられます。

ですので、交通事故の慰謝料とは、まず、入院や通院の日数・期間によって金額を考えていくというのが基本的なスタンスとなります。

 

●自賠責保険が慰謝料を支払う基準

 

実治療日数の2倍と治療期間とを比べて短い方に4300円を乗じて金額を出します。

具体的には、通院期間120日の間に、入院はなく、45日通院した場合は、45日×2(90日)と120日との比較になり、短い方の90日が採用され、これに4300円を乗じた38万7000円が自賠責保険の慰謝料額になります。

 

※(以下、かんたんな説明にとどめますが)ただし、自賠責保険には、診断書に中止などの記載があれば7日加算をされるというルールがあります。

※余談になりますが、被害者側が加入している任意保険の人身傷害保険から慰謝料が支払われるケースでも、この自賠責基準にのっとって支給している保険会社が多いです。

 

 

●加害者側任意保険会社が提示する慰謝料基準

 

各任意保険会社は、以下の裁判基準よりは低い金額で提示してくることがほとんどです。

中には、上記の自賠責保険と同じ程度の金額しか提示してこないケースもあります。

 

 

●裁判基準

 

以下の2つの資料に記載されている表に当てはめて慰謝料額を出していきます。いずれの資料にもとづくかについてはお越しいただいてのご相談で説明いたします。

 

日弁連交通事故相談センター東京支部発行「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(「赤本」、「赤い本」と呼びます。)

■「赤い本」によれば以下のとおりの記載があります(以下の事項以外にも説明されている点がありますが、ここでは省略いたします。)。

・むちうち症で他覚所見がない場合や軽い打撲・軽い挫創の場合に別表Ⅱを使用すると記載されています(ただし、「むちうち症で他覚所見がない場合」とはどのような場合なのか、「軽い打撲・軽い挫創」とはどのような場合なのかについてはかんたんに判断できない場合もありますので慎重に検討するべきです。)。

・通院が長期にわたる場合、症状、治療内容、通院頻度を踏まえて実際の通院期間より短い期間を目安とすることもある(詳細はここでは省略いたします。)と記載されています。

 

例をあげます。入院なしで通院期間210日(7ヶ月:ただし、特段、通院期間を短くするべき事情はないものとします。)の場合、別表Ⅰですと124万円、別表Ⅱですと97万円という金額になります。

入院2ヶ月かつ通院10ヶ月(ただし、特段、通院期間を短くするべき事情はないものとします。)ですと、別表Ⅰによると203万円という金額になります(入院が2ヶ月も必要な負傷をした場合には別表Ⅱを使うべきではないことは明らかです。)。

 

 

大阪弁護士会交通事故委員会発行「交通事故損害賠償額算定のしおり」(「緑の本」、「緑本」と呼びます。)

■「緑の本」によれば以下のとおりの記載があります(以下の事項以外にも説明されている点がありますが、ここでは省略いたします。)。

・上記の「重傷」については、重度の意識障害が相当期間継続した場合、骨折または臓器損傷の程度が重大であるか多発した場合等、社会通念上、負傷の程度が著しい場合をいうと記載されています。

・軽度の神経症状(むちうち症で他覚所見のない場合、軽度の打撲・挫創の場合等の入通院慰謝料は、通常の慰謝料の3分の2程度とすると記載されています(ただし、「むちうち症で他覚所見がない場合」とはどのような場合なのか、「軽度打撲・挫創」とはどのような場合なのかについてはかんたんに判断できない場合もありますので慎重に検討するべきです。)。

・受傷や治療の内容・程度等にてらして通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合は、実際の通院期間と実通院日数を3.5倍した日数とを比較して、少ないほうの日数を基礎として通院期間を計算すると記載されています。

 

例をあげます。入院なしで通院期間150日(5ヶ月:ただし、特段、通院期間を短くするべき事情はないものとします。)の場合は108万円となり、もし上記の「軽度の神経症状」に該当した場合は72万円(108万円×)ほどが目安の金額になります。

入院2ヶ月かつ通院10ヶ月(ただし、特段、通院期間を短くするべき事情はないものとします。)ですと、別表Ⅰによると210万円という金額になります(入院が2ヶ月も必要な負傷をした場合には「軽度の神経症状」にとどまらないと思われますので3分の2減額をすべきでないということになると思われます。)

 

 

交通事故で負傷し、症状があるならば、面倒くさがらずにきちんと通院をすることが大事になってきます。

ご注意いただきたいのは骨折をしてギプス固定をして自宅で安静にしている期間は入院期間と認められることがあると「赤い本」や「緑の本」に記載されていることです。入院期間と認められないにしても、通院がないもののギプス固定をして自宅安静をしている期間は慰謝料額に関する有益な主張となる可能性があります。したがって、ギプス固定をしていた期間をきちんとメモしておかれた方がいいと思います。

 

 

後遺障害慰謝料

 

治要を続けても改善が見込めなくなり、生涯症状が残る状態が続くことの精神的苦痛を賠償の対象とするという費目です。

 

基本的な考えは、後遺障害等級ごとに目安となる金額自体はあります。

 

目安については以下の表のとおりです。

表のうち自賠責とは、自賠責保険の基準であり、「赤い本」、「緑の本」というのが裁判基準になります。

自賠責の欄には金額が2つ書いてありますが、[  ]は令和2年4月1日以降に発生する事故が適用されます。

この表を見ると、自賠責保険の基準が低いことがわかります。

加害者側任意保険会社が慰謝料を支払う基準ですが、各任意保険会社は、以下の裁判基準よりは低い金額で提示してくることが多いです。

なお、重度後遺障害のケースでは、近親者にも、本人分とは別に、固有の慰謝料が認められる場合があります(くわしくは当法律事務所の無料相談でご説明いたします。)。

 

 

 

死亡慰謝料

 

生命を失ったこと自体について認められる精神的損害のことです。

 

自賠責保険の運用

 

※以下の該当部分の合計額を慰謝料額とされることになります。
※以下は令和2年4月1日以降に発生する交通事故についての内容になります。

 

・死亡した被害者本人の慰謝料は400万円
・被害者に、配偶者、子(養子、認知した子及び胎児を含みます。)、父母(養父、養母も含みます。)が何人存命しているかどうかによることになり、1人であれば550万円、2人であれば650万円、3人以上は750万円となりますが、死亡した被害者に被扶養者がいる場合にはこれらの金額に200万円が加算されます。

 

たとえば、交通事故の被害にあい死亡した被害者に、被扶養者の妻と2人の子がいた場合、400万円+750万円+(被扶養者加算分)200万円=1350万円が自賠責保険で認められる死亡慰謝料の額になります。

 

 

裁判基準について

 

●「赤い本」に記載されている目安は以下のとおりです。

※「赤い本」によると、以下は、民法第711条所定の者(被害者の父母、配偶者、子)とそれに準ずる者の分も含まれているとの記載があります。

一家の支柱にあたる者が死亡した場合 2800万円
母親、配偶者にあたる者が死亡した場合 2500万円
その他(「赤い本」には独身男女、子供、幼児と記載されています。) 2000万円~2500万円

 

●「緑の本」では以下の額を基準とし、この基準額は被害者本人分及び近親者分を含んだものであると記載されています。

家の支柱にあたる者が死亡した場合 2800万円
その他 2000万円~2500万円

 

このように、死亡慰謝料では本人分だけでなく近親者の慰謝料も問題になります。しかも、父母は被害者の相続権がなくても慰謝料の対象になります。

 

 

 

慰謝料の増額が考慮されることはあるのか?

 

加害者に、無免許運転、ひき逃げ、酒酔い等の事情があったり、加害者が著しく不誠実な態度をとっている場合に、慰謝料の増額が考慮される可能性があります。

 

 

 

慰謝料はいつ受け取れるか?

 

各慰謝料の種類ごとに説明いたします。

 

●傷害慰謝料(入通院慰謝料)

 

入院や通院の日数と期間をもとに損害額を出していくことになりますので、入院や通院が終了しないと正確な損害額を出せません。

 

ですので、治ゆ又は症状固定となった時点で正確な損害額を出すことが可能になります。

 

正確な損害額を出すことが可能となれば、加害者側任意保険会社と示談交渉が可能になります。

 

示談交渉で加害者側任意保険会社と金額の合意ができれば示談が成立し、免責証書という書類のやりとりをした後、2週間前後~3週間程度で被害者に支払われます。

 

被害者または加害者側任意保険会社のうちいずれか一方が金額に納得がいかないということで合意を拒めば示談は成立しません。

 

そうすると、交通事故紛争処理センター(民事調停という手段もあるのですが、決裂で終了するおそれがあるため、基本的にはおすすめしません。)または裁判といったステージで解決を求めることになります。そうすると、慰謝料の支払がさらに遅れます。

 

 

後遺障害等級の問題が残っている被害者の方は、納得できる後遺障害等級が認定されていないうちに、傷害慰謝料(入通院慰謝料)を先に示談交渉をすること自体は可能です(「傷害部分の示談交渉を先行させる」などと言いますが。)。

しかし、当法律事務所では納得のいく後遺障害等級結果が出ていないのに傷害慰謝料(入通院慰謝料)の示談交渉を先行させることは基本的にはおすすめしておりません。

なぜなら、後遺障害等級が認定されなかった、又は、まだ未確定の場合に、加害者側任意保険会社から、「後遺障害等級が認定されていないのだから、傷害慰謝料(入通院慰謝料)の額はこれだけしか提示できない。」という反論を受けるおそれがあり、妥当な傷害慰謝料(入通院慰謝料)を得られないおそれがあるからです。

 

 

 

●後遺障害慰謝料

 

後遺障害等級が認められて問題となる慰謝料です。

 

(ここでは労災の後遺障害等級の問題の説明は省略させていただきますが)自賠責保険の後遺障害等級の申請で後遺障害等級が認定され、等級の異議申し立てや裁判で上位等級を求める意向がなければ、加害者側任意保険会社との示談交渉が可能になります。

 

なぜなら、加害者側任意保険会社は自賠責保険で後遺障害等級が認定されていないと後遺障害慰謝料の支払いは拒むからです(そうすると、被害者側も納得しないので、合意できないからです。)。

 

後遺障害慰謝料以外の費目等や金額の合意ができれば示談が成立し、免責証書という書類のやりとりをした後、2週間前後~3週間程度で被害者に支払われます。

 

被害者または加害者側任意保険会社のうちいずれか一方が金額に納得がいかないということで合意を拒めば示談は成立しません。

 

そうすると、交通事故紛争処理センターまたは裁判といったステージで解決を求めることになります。そうすると、慰謝料の支払がさらに遅れます。

 

 

 

●死亡慰謝料

請求できるのは亡くなった被害者の相続人になります。

ただし、亡くなった被害者に子がいる場合の父母などのように、相続人ではない方に慰謝料請求権が認められる場合等がありますので、個々のケースごとにご注意いただく必要があります。

 

加害者側の任意保険会社とは、早くても、亡くなった方の葬儀などが落ち着いてから示談交渉を行うことになるかと思います。

 

ただし、加害者が刑事裁判かけられた場合、遺族がまず被害者参加制度を利用して刑事問題にかかわりたいというケースもあります。

 

示談で合意できれば傷害慰謝料は後遺障害慰謝料と同じ流れで進みますが、金額が高額になる傾向があり、被害者側に支払いがあるまでの期間は少し長くなることもあり得ます。

 

 

 

 

弁護士金田が相場よりも増額解決したケース

 

 

弁護士金田が代理をした交通事故損害賠償請求訴訟の判決で、慰謝料に関してあげた実績を、以下紹介いたします。

 

傷害(入通院)慰謝料に関する判決の実績

左足骨折等を受傷され、入院1ヶ月半、通院期間10ヶ月、通院実日数55日という治療状況の事案でした。

通院が長期になり、かつ、不規則な場合、通院期間と実通院日数×3.5とを比較して少ない方に基づき通院期間を計算するという運用があり得ます。この運用にしたがうと、通院期間10ヶ月と通院55日の場合には6ヶ月半弱と評価され、通院10か月の場合よりも慰謝料額が減ることになります。実際、加害者側からはこのような主張がありました。

しかし、当事務所の弁護士は、主治医の先生の指示に基づく治療方針、被害者の方の症状経過などに着目し、これらをていねいに主張しました。

判決で、傷害慰謝料は、入院1ヶ月半・通院10ヶ月間を前提した計算に基づく金額(196万円)が認定されました。

  • 後遺障害(後遺症)慰謝料に関する判決の実績

 

■ケース1

肩鎖関節脱臼後の鎖骨変形(疼痛も含む)12級及び正面視の複視10級で後遺症併合9級が認定されていた事案でした。

大阪の裁判基準では、9級の後遺症慰謝料は、670万円という基準があります(ちなみに、本件判決で認定された労働能力喪失率は35%で、通常の9級相当のものでした。)。

しかし、当事務所弁護士は、後遺障害の内容、程度など、ことこまかな事情を強く訴えました。
結果、判決では、後遺障害(後遺症)慰謝料750万円が認定されました。 通常の9級の基準よりも80万円多く認定されたことになります。

 

■ケース2

加害者車両が被害者車両に追突し、その後、加害者車両が後続車両に追突された事故(このような事故を、「順次追突事故」または「順突事故」といいます。)であったにもかかわらず、加害者は「玉突き事故」であるという主張を続けました。

※加害者の主張…加害者車両の後続車両が加害者車両に追突し、その追突された勢いで加害者車両が被害者車両に追突したというものです。この場合、後続車両が加害者車両と被害者車両に全責任を負うことになり、加害者車両も責任ゼロ、被害者車両も責任ゼロになります。

被害者のくびの痛み等が残った点につき、自賠責保険は後遺障害14級を認定していたケースであり、裁判を提起しました。

後遺障害14級の後遺障害慰謝料は上記の表のとおり、本来は110万円ですが、本件の判決では、125万円を認めました。

判決理由には、加害者は、この交通事故が自分の過失によって生じたものであることを訴訟前に認識していたにもかかわらず、ことさらにこれが後続車による玉突き事故であるとの主張を続けたために、この紛争の解決に時間を要したことや、
被害者に刑事手続対応等における負担を与えたこと等の事情を考慮して125万円とするのが相当であると判断されました。

 

 

 

■ケース3

裁判で左右の肩関節の可動域制限(機能障害)が残ったとして後遺障害併合11級(左右いずれも後遺障害12級が認定されたことによる併合処理です。)が認定されました。後遺障害11級の目安となる後遺障害慰謝料額は、赤い本で420万円、緑の本で400万円ですが、このケースでは、この訴訟の審理終結時まで被害者が両肩関節の不具合や痛みで苦しんでいることを考慮され、後遺障害慰謝料としては450万円と認めるのが相当であると判断されました。

自動車保険ジャーナル2124号87ページ以降にも経緯された事例です。

こちらをクリックしてごらんください。

 

 

慰謝料は、必ず上記裁判基準の目安(相場)の金額で決まるとは限らず、ケースによっては裁判で相場よりも増額して解決できる場合があり得ることを申し上げておきます。

 

交通事故で受傷し、傷害慰謝料や後遺障害(後遺症)慰謝料について、少しでも疑問や不明な点をお持ちの方は、ぜひ、当事務所の無料相談におこしください。